2020年7月10日(金)、午後1時45分より千代田区霞が関の外務省会見室にて、茂木敏充外務大臣の定例会見が開かれた。大臣よりの報告はなく、参加記者との質疑応答のみが行われた。
IWJ記者は中国による「香港国家安全維持法」施行に関し、これにより在香港邦人、日本の企業やメディアの活動が規制を受ける可能性はないか、在香港邦人の自由と安全は保証されているのかどうかを聞いた。
これに対して茂木敏充外務大臣は、以下のように答えた。
「香港はわが国にとって緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーであり、一国二制度のもと自由で開かれた体制が維持され、民主的安定的に発展していくことが必要である、これがわが国の一貫した立場である。
現時点で今般の法律に関連して日本企業や在留邦人に何らかの被害が起きたという報告は受けておりませんが、現在約2万6千人の在留邦人、そして1400社の企業が活動しており、一国二制度の将来というものはわが国にとっても極めて重要だと考えています。
こうした観点から今般の法律をめぐる今後の影響をしっかり注視するとともに、香港における日本国民、日本企業の活動や権利がこれまでと同様、尊重、保護されるよう中国政府に対して引き続き求めていく」
また、IWJは重ねて「習近平国家主席の国賓来日について中止要請が出されるなどしているが、今後の日中外交の展開をどう考えるか」と質問した。
茂木外務大臣は、「そのことに関してはこれまでもお答えしている。今まで通りの考えだ」とのみ答えた。
「これまで通り」とは、例えば7月7日に開かれた会見において茂木大臣が、「習主席の国賓訪日については、何度か申し上げてきているが、今、具体的な日程調整をする段階にはない。これが日本政府の立場である。中国との間には、様々な懸案があるが、政府としては、引き続き首脳会談等ハイレベルの機会を活用して、主張すべきはしっかりと主張して懸案を解決し、また、中国側の前向きな対応を強く求めていく。これが基本的な方針である」と回答したことなどを指すと思われる。
そのほか海外メディア記者より、7月8日にEU議会本会議がEU加盟国の国籍者と日本人の結婚が破綻した場合、日本人の親が子どもを連れ去ることなどを禁止する措置を講じるよう日本政府に要請する決議案を採択した件について、茂木大臣の認識について、質問があった。
EUは日本人による連れ去り行為が相当数あるとし、この決議にいたったという。この質問をした記者も、日本は国際社会から子どもの人権上、問題を抱えている国だと批判されていると指摘した。
茂木大臣は、「その決議採択は承知しているが、『ハーグ条約』(国境を越えて連れ去られた子どもの扱いを定めた条約。日本も締結国である)の対象となる事案とならない事案で分けて考える必要がある。日本は国際条約上適切に対処してきている」と答えた。
また、茂木大臣は新型コロナ感染症の水際対策や今後の人の往来の回復について記者とやりとりするなかで、「現在東京で1日200人以上の感染者があったと報じられており、私はこれが多い少ないと評する立場にはないが、今の日本の感染状況は落ち着いている、アンダーコントロールであるというのが一般的な国際社会の見方だ」とも述べた。詳しくは取材動画をご覧いただきたい。