2020年9月18日(金)、予定の午前11時から少し遅れて、東京都千代田区外務省会見室にて、菅内閣発足後、はじめての茂木敏充外務大臣の定例記者会見が開催された。
冒頭の茂木大臣からの発言は、「新内閣が発足してから最初の記者会見ということになります。この場においては、引き続き、よろしくお願いします」という簡単なあいさつで終わり、残りの時間は、各社記者と大臣の質疑応答が行われた。
質問の内容は、「安全保障関連法と日本の安全保障政策の現状」、「新政権の外交の取組方針」、「ファイブアイズ(UKUSA協定)への日本の参加可能性」、そして「日中関係、延期になっている習近平主席の国賓訪日」と多岐にわたった。IWJからは以下のとおり、「菅首相の就任後初めての記者会見の内容」について茂木大臣の認識を質した。
IWJ記者「先日の菅首相の就任後初めての会見の内容について、茂木大臣の認識をお聞かせいただきたく、ご質問差し上げます。菅首相は、就任後初めての記者会見において、『国民のために働く内閣をスタートさせ、しっかりとした成果を挙げて、国民の期待に応えたい』と述べられました。
これについて、国民に選ばれた政治家が国民のために仕事をするというのは当然のことであると思うんですけども、これが意味するのは、少なくとも前内閣において、国民のために仕事ができていなかったという認識を反映したものであるのでしょうか?ご意見をお聞かせ下さい」
これに対し、茂木大臣より以下のとおりの回答があった。長くなるが、その全文を掲載するので、是非お読みいただきたい。
茂木大臣「あの、まったくそんなことは無いと思います。(IWJ記者に対し)下がってください。質問終わったんで、ちゃんと答えますから下がってください。(外務大臣会見では、記者は自席から開場前方のマイクまで移動して質問し、質問が終わると自席に帰らなければならない)
まったくそんなことは無いと思います。安倍政権もそうでありましたし、菅政権においてもですね、国民のために働く。そして、日本がまた国際社会で直面している課題解決にですね、全力でとりくむという姿勢は変わりないと思っています。国民のために働く。
様々な観点がありますが、外務省から申し上げましたら、国民、まあイコール邦人でもありますが、海外にいらっしゃる邦人の安全の確保。これは極めて重要な、最も重要な仕事でありまして、今年、新型コロナが発生し、世界に広がっていく、こういった中で、武漢の帰国オペレーションから始まりまして、これまでに、帰国困難な地域・国から12,000人を超える邦人の方の帰国のお手伝いを外務省としてさせていただきました。こういった仕事はしっかり続けていきたい。邦人の安全確保に万全を尽くしていきたいと思っております。
同時に、国民の命、そして、平和な暮らし、これを守っていく。極めて重要なことでありまして、日本外交の基軸は日米同盟にあるわけですが、これを軸にしながら、今、東アジアの安全保障環境も極めて厳しくなる中でですね、どういう事態にあっても、国民の命や安心・安全を守れるようにしていきたい。そんなふうに考えています。
同時に様々な国々との良好な関係、こういったことを築いていくということは重要でありまして、二国間(bi-)においても、また多国間(multi-)においても、そういった関係を築いていく。同時にまた、その中心に日本がいると、そういった意味で日本の存在感(presence)も高めていきたいと考えています。
さらには、国民のためといいますと、国民の生活や経済、こういったことも重要になってきます。日本として、自由貿易とこの旗手であると、そういう軸のもとで、今、内向き志向といいますか、各国でそういった動きがある中で、日本は自由貿易の推進・発展、これに中心となって取り組んできたわけでありまして、TPP11から始まりまして、日EUのEPA、さらには日米貿易協定、これもこの1月に発効しております。
そして、日英の協定も先日、大筋を合意いたしまして、来年1月には発効したいと考えていまして、こういった通商政策の推進というのも、国民経済、そして国民生活の向上に資するものだと考えております。そういった政策を実行していきたい思っています。外交と継続性・一貫性、これが重要でして、しっかりそれをおこなっていきたいと思っています」
茂木大臣の回答は、非常に詳細かつ広範囲に渡るものであったが、この回答を、今後の外務大臣を評価する際のひとつの目安として、厳しくそのパフォーマンスを監視していかなければならないと考える。