世界ではコロナ禍による各国の明暗がはっきりしてきた。2020年通年で、主要国の間では中国が唯一プラス成長という予測を8月18日の日刊IWJガイドで紹介した。日本の貿易動向にも、中国相手の貿易だけは順調な回復ぶりが見られる。
一方、11月に大統領選を控えたトランプ氏は、「中国叩き」に狂奔し、2020年2月に中国との貿易合意の成果を踏みにじるような行為に出ている。
▲アリゾナ州の支持者集会で演説するトランプ氏(2016年3月、Wikipediaより)
これまで米国追従一辺倒で外交を行ってきた日本であったが、今後は米中の両大国の間でバランスをとる難しい外交を強いられるだろう。また東アジア、東南アジア諸国との関係の見直しを進めることも重要になってくる。
2020年7月の日本の輸出総額は財務省よると対前年同月比マイナス19.2%! コロナ禍以前からマイナスが続くが3月にマイナス11.7%、5月にマイナス28.3%! 5月以降も依然として厳しい状況が続く!
財務省が2020年8月19日に発表した「令和2年7月分貿易統計(速報)の概要」によると、輸出総額は5兆3689億円で、対前年同月比マイナス19.2%と、20ヶ月連続の減少になる。
コロナ禍以前からマイナスが続いていたが、3月にマイナス11.7%と、この1年で初めて二桁台のマイナスになって以来大きな落ち込みが続いている。
振り返ると5月には、欧米諸国の経済活動再開にともなって輸出が回復していくことが期待されていた。しかし、コロナ禍の見通しは甘く、2020年に入って最も落ち込んだ5月(輸出総額4兆1856億円、前年同月比マイナス28.3%)より持ち直したとはいえ、依然として厳しい情勢が続いている。
輸入総額は5兆3572億円と対前年同月比マイナス22.3%で、15ヶ月連続の減少となった。輸入の減少幅が大きいために4ヶ月ぶりの黒字(116億円)になるというのは皮肉だ。輸入も、最も落ち込んだ5月(総額5兆269億円、前年同月比マイナス26.1%)よりは持ち直したとはいえ、やはり低迷が続いている。これは生産活動が停滞し、そのために資源、素材等の輸入も落ちていることを示すものと思われ、貿易収支が黒字になったと言っても、少しも喜ばしいことではない。
地域別の貿易動向を見ると、対米国は輸出総額が1兆914億円で対前年同月比マイナス19.5%、輸入総額は5789億円で対前年同月比マイナス25.5%となっている。
地域別の貿易動向! 米国・EUとの貿易は激しく落ち込む一方、7月の対中輸出総額が対前年同月比で唯一プラス8.2%に!中国市場だけが生き残りをかけた頼みの綱であり、そして最後の網であるという苦い現実!
米国への輸出は、2020年に入って、対前年同月比で1月はマイナス7.7%、2月はマイナス2.6%と小幅だったが、3月にニューヨークで感染が爆発するとマイナス16.5%へと急減し、4月はさらに落ち込んでマイナス37.8%、5月はさらにさらに落ち込んでマイナス50.6%、6月はマイナス46.6%とほぼ半減してしまった。
対EUの貿易でも、輸出総額が4393億円で、7月は対前年同月比マイナス30.5%と激しく落ち込み、輸入総額は6517億円で、対前年同月比マイナス14.3%となっている。
激しいコロナ被害を出している欧米諸国との貿易が低迷を続けていることがわかる。EUへの輸出は、5月にマイナス33.8%まで下がって底を打ちはしたものの、さしたる回復はみられない。
これに対して、対アジアは輸出総額が3兆1762億円で、対前年同月比マイナス8.2%、輸入総額は2兆8380億円で対前年同月比マイナス13.5%となっている。
やはり、前年に比べると下がってはいるが、欧米諸国との貿易、特に輸出の落ち込み幅と比べると、マイナス幅が小さいことがわかる。明らかに、コロナ禍による経済ダメージが、アジアでは欧米よりも軽く済んだことがみてとれる。
一方、対中国は、日本からの輸出総額が1兆3290億円で、7月は対前年同月比プラス8.2%と、唯一「プラス」になった。
2020年に入って、対中国輸出総額は、対前年同月比で1月はマイナス6.4%、2月はマイナス0.4%、3月はマイナス8.7%、4月はマイナス4.0%、5月はマイナス1.9%、6月はマイナス0.2%とマイナスが続いていたが、この数字は、2桁マイナスを2回記録した2019年下半期よりもむしろ少ないくらいだ。
2020年の対中国輸入総額は、1兆4564億円で対前年同月比マイナス9.8%である。新型コロナウイルスの感染爆発で武漢封鎖が続いていた2月にマイナス47.1%を記録した。しかし、3月にはマイナス4.4%、4月はプラス11.8%と武漢封鎖の影響をごく短期間のうちに乗り越えている。
中国への輸出部門では、非鉄金属が金額の伸び率でプラス72.4%(寄与度1.8%)と最も大きく、ついで半導体等製造装置がプラス23.6%(寄与度1.4%)、自動車がプラス19.0%(寄与度1.2%)となっている。