日米豪印のクアッドに英独仏蘭が加わるクアッド+アルファは中国に石油が入らないようにマラッカ海峡封鎖が狙いか!? との質問を茂木大臣はなぜかはぐらかし、自己PRの回答! はぐらかしたのは図星からか!? ~5.25茂木敏充外務大臣 定例記者会見 2021.5.25

記事公開日:2021.5.26取材地: テキスト動画
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(取材・渡会裕 文・IWJ編集部)

 5月25日、外務省で茂木敏充外務大臣定例記者会見が行われ、IWJ記者は中国包囲網「クアッド」に、英仏独蘭のEU諸国が参加していることについて、質問した。

IWJ記者「日本政府は、安倍晋三前総理が提唱した『自由で開かれたインド太平洋戦略』を踏襲し、米、豪、印と組んで、中国包囲クアッドを形成しています。ここに英独仏蘭の欧州4カ国も加わるとのことですが、クアッド+アルファによる中国包囲網とは、具体的に何をされるのでしょうか?

 海上自衛隊幹部学校の戦略研究論文を見ると、マラッカ海峡を封鎖し中国への中東からの石油の輸入ルートを遮断する戦略がしばしば出てきます。米海軍大学のトーマスハメス博士の提唱するオフショアコントロール戦略にもとづくものです。クアッドの戦略は、このオフショアコントロール戦略をベースに、マラッカ海峡封鎖し、中国に石油が入らないようにして、兵糧攻めにするのが、狙いと考えてよろしいでしょうか?

 一方で、中国と日本は、他の東アジア諸国とともに、RCEPという包括的経済連携協定を結んでいます。中国は日本にとって最大の貿易相手国でもあります。RCEPという経済の枠組みと中国包囲網であるクアッドとは、相反し矛盾すると思われますが、今後、クアッドが深まれば、RCEPは放棄し、中国という巨大マーケットも捨てる決断をするのでしょうか? その時の日本経済のダメージはどうお考えですか?

 大臣のお考えをお聞かせください」

茂木外務大臣「『自由で開かれたインド・太平洋』、これは今から5年前、2016年のですね、TICAD VI(アフリカ開発会議)の際、まあ、当時は安倍総理でありましたが、日本として提唱したビジョン、考え方でありまして、基本的にはこの『自由で開かれたインド太平洋』、これはインド太平洋、まさに世界の成長センターという地域でありますが、一方でパワーバランスの変化も激しい。この地域においてですね、法の支配をはじめとする共通の価値や原則、これにもとづく自由で開かれた秩序を実現することによって、地域全体、ひいては世界全体の平和と安定を確保していくと、こう言った考え方にもとづく構想であります。

 まあ、これ、あの、特定の国を念頭に置いたものではなく、考え方を共有するですね、幅広い国々と協力していく包括的かつですね、開かれたビジョンであると考えております。

 まあ、実際にこのですね、『自由で開かれたインド太平洋』と、ご案内の通りですね、日米豪印、この間ではですね、すでにこれは、インドネシア沖の地震の時の協力から2004年始まったものでありますが、2019年、わたくしは外務大臣に就任してすぐにですね、国連総会の際に外相会談、これを行いまして、そのあと、毎年外相会談、今年は2月に外相会談、さらには3月にですね初の首脳会談、これも行っているところであります。

 これは安全保障だけではなくてですね、地域の連結性を強化するためのですね、4か国の取り組みであったりとか、4か国のそれぞれの強みであったりとか、また関係を生かした様々な取り組み協力の分野というのがですね、様々な分野に広がっていると考えております。

 この日米豪印、クアッドもありますし、さらには一昨年ASEAN、これはAOIP(ASEAN・アウトルック)というですね、独自のビジョン、これを発表したところでありまして、日ASEAN首脳会議におきましてもですね、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)と、様々な共通の要素、考え方をもって、したがって、協力関係と言いますか、ASEANとの協力関係も広げていきたい。

 そして、まあEUとの関係におきましては、今年の1月にですね、私がEUのですね、外務理事会、日本の外務大臣として初めて参加をいたしまして、FOIPの考え方を詳しく説明いたしまして、EUの各国外相からもこれを支持すると、協力したいと、こういう意見表明も多かったところでありまして、そういったものも踏まえてですね、4月にはEUとしてですね、このインド太平洋の戦略、発表したところであります。

 また、それぞれフランスであったり、オランダさらには英国独自の戦略を発表し、また、独自のイニシアティブを打ち出していると、このように考えているところでありまして、こういった開かれたビジョンのもとでですね、様々な国と協力が今広がってきていると考えております。

 同時に今、世界を見てみますと、このコロナ以前もそうでありますが、特にコロナ以降、自国第一主義でありますとか、保護主義というものが台頭する。こういった中で日本としてですね、自由貿易の旗手としてTPP11をまとめ、さらには日EU・EPAこれが発行し、さらにはTPPから離脱した米国との間ではですね、日米貿易協定、さらにはEUから離脱した英国との間では、日英EPAも結んできまして、昨年RCEPにつきましてもですね、署名という事に至ったわけでありまして、これはまさに自由貿易、さらにこれはサービスから、そしてデータであったりとか、様々なルール分野、こういった事について共通の基盤を作っていこうと、こういう取り組みであります。

 RCEPにつきましては、当初16か国で交渉を進めておりましたが、最終的にインドが合意に至らず、15か国の署名、という事になりまして、そこの中には、中国、韓国が含まれておりますが、同時にすでにTPP等に参加しているASEANの国々や、オーストラリア、ニュージーランド、こういった国々も含まれているわけでありまして、まあこういったRCEPにつきましてもですね、しっかりと進めていくという事がですね、今必要とされる自由貿易の維持、強化にとっては極めて重要であると思っておりまして、そういったところで、日本として主導的な役割を果たしていきたい、こういう意味におきましても、『自由で開かれたインド太平洋』、さらには様々な経済連携協定、まあ日本としてですね、各国が受け入れられる、できるだけ多くの国が参加できる、こういう立場から進めている、協力であったり連携という、こういうものの一環だと考えております」

 茂木大臣は、RCEPには中国が含まれているのに、その中国を包囲するクアッドとの矛盾についての質問には、まったく答えていない。

 クアッドが単に言葉通りに「自由で開かれたインド太平洋」を実現するための構想であるならば、ここに中国を引き込めば問題はあっという間に解決するはず。中国も安全で安定的なシーレーンの継続を望んでいるのは間違いないと思われる。

 なぜ、域外のヨーロッパ諸国かがタンカーでも、貨物船でも、旅客船でもなく、空母や軍艦で集まり込んでこの海域にやってきて、クアッドに加わる、というのか。戦争を始める可能性がまったくないなら、軍艦はまったくお呼びではない。戦争が始まれば、インド太平洋地域は安全な航行が脅かされ、「自由でもなく」「開かれてもいない」海域となる。この「自由で開かれたインド太平洋」という構想と真逆の状況になる。

 重要なことは、この海域の沿岸国でもないのに、欧州諸国が軍艦をもって乗り込んできたことだ。彼ら自身の意志でこのようなことをゴリ押ししてきたら、平和な海を望むクアッド各国は拒むべきだったはず。それを歓迎して受け入れていたのはクアッド側だったことは、ごまかしようがない。茂木大臣は会見のたびごとに「インド太平洋」構想やクアッドについて十分に国民に説明している、と強弁するが、クアッド+アルファが現実に行っているこういう剣呑な側面については、ひたすらはぐらかすのみで、何も説明していない。

 説明できないやましさ、矛盾、危うさがこれらの構想や演習にはひそんでいるのだろうと疑わざるをえない。

■全編動画

  • 日時 2021年5月25日(火) 14:45~
  • 場所 外務省 会見室(東京都千代田区)

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