6月9日、参議院憲法審査会で「国民投票法改悪案」可決!「コロナ危機に便乗して改憲論議を煽るのは究極の火事場泥棒だ!!」〜岩上安身によるインタビュー第1043回ゲスト 日本共産党・山添拓参議院議員 2021.6.9

記事公開日:2021.6.10取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

緊急シリーズ特集! コロナ禍の陰で着々と進む戦時独裁体制樹立の改憲!今国会での改憲国民投票法強行採決を許すな!!
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 2021年6月9日、国民投票法「改悪」案が、参議院憲法審査会で可決した。6月11日の参議院本会議での採決を経て、今国会で成立する見通しである。この法案は、安倍・菅政権が進めてきた憲法改正への「呼び水」に他ならない。これまで解釈改憲を積み重ねてきた安倍・菅政権が、いよいよ明文改憲に踏み込む。

 問題は、そこに、内閣が全権を握る万能の独裁条項たる緊急事態条項が含まれていることである。この条項が憲法に書き込まれ、実際に発令されたら最後、日本の民主主義、国民主権は失われ、戦時独裁体制に突入していくことになる。

 岩上安身は、参議院憲法審査会の幹事として、インタビュー直前まで審査会にのぞんでいた、日本共産党の山添拓参議院議員に、法案の論点、そしてこれからやってくる改憲への日程、安倍・菅政権が目論む、米国に隷従して、自衛隊を米軍の二軍として垂直統括し、米国の国益のための対中国戦争へ「捨て駒」として利用される事態を、どうやって阻止したらいいのかうかがった。

 採決は、国民投票法改正案(衆議院で立憲民主党提出のCM規制などに関する附則4条によって修正されたもの)原案と、日本維新の会が提出した、CM規制に関する措置の審議中でも改憲論議や発議を妨げないとする追加の修正案の2件について行われ、原案は、法案提出者である自民党・公明党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党などの賛成多数で可決された。反対は共産党だけだった。

 日本維新の会が提出した修正案は、日本維新の会のみの賛成少数で否決された。

 附則4条の扱いには、改憲CMの規制(附則4条2項)などについて審議が尽くされない現状では、改憲の論議や発議はできないとするか、現状でも発議はできるとするかで見解が割れている。

 インタビューで山添議員は、次のように述べた。

 「衆議院(憲法審査会)で5月6日に可決した。その際に、連休中に与野党間の修正協議が行われて、修正が整ったということで、一気に採決になだれ込んだわけですね。その時点で、与野党の国対委員長の間で、この国会での成立ということが合意されていた」。

 そして山添議員は、「(参院憲法審の審議の中で、附則4条の解釈という)法案の問題点を浮き彫りにしながらも、(今国会での成立という)政治上の日程として」この日の採決にいたったと説明した。

 憲法審査会の幹事である山添議員は、「審査会がはじまる前の幹事会では、採決は提案されてなかった。しかし、審議が終わった後に採決することが決まった」と明かした。結局原案に反対したのは、共産党だけである。

 衆院憲法審で立憲民主党が盛り込んだ附則4条2項をめぐる解釈が割れていることについて、山添議員は以下のように説明した。

 「(附則の内容は)とりわけ広告規制、CM規制やインターネットの規制、あるいは資金の規制、つまり、財力によって表現が左右される、どこまで広告ができるかが左右されるという事態は、そのままにしておいてはいけないのではないかと。今後3年間かけて検討するというものです。

 それをもって立憲民主党の皆さんなどが議論をする中で、そういう条項を設けたからには、まずそのCM規制などの議論が先行するべきなのであって、その間は改憲の発議はできないわけですから、やったらまずいとわかっていて、そういう附則をいれるわけですから、そっちが先行するべきだという認識で議論されてきたものだと思います」。

 その上で山添議員は、自分たち日本共産党の主張を、次のように説明した。

 「共産党としては附則の4条2項があってもなくても、今、改憲の論議をする、発議をするという状況にはないということを太い線では打ち出してきました。

 何より国民の多くが改憲を求めていない。今、やらなければならないのはコロナ対策ですよね。政治が行うべきはコロナ対策に集中することであって、改憲を進める必要はないと。

 この欠陥だらけの、重大な欠陥を抱えている国民投票法のもとで改憲の発議をするなどということはあってはならないと主張してきました」。

 山添議員は憲法審査会の場で、「現行憲法が国民に広く根付いていることは動かしがたい事実だ」とし、「安倍・菅総理が、国会に改憲議論を煽ってきたことは憲法違反だ」と、以下のように指摘している。

 「安倍首相も、それを引き継いだ菅首相も、総理という行政府の長の立場にありながら、国会の議論を求めてきたわけですが、これは、ひとつは首相に課される憲法尊重擁護義務、憲法99条との関係で問題がある、と。

 ※第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 もうひとつは三権分立との関係で、行政府が立法府に対して色々とこういう議論をしろと煽ること自体が越権行為だということで、憲法違反だという主張をしてきました」

 6月2日に参院憲法審で行われた参考人の意見聴取では、共産党推薦の福田護参考人が法案について、憲法改正の発議と国民投票について定めた憲法96条違反だと指摘した。

 これについて、山添議員は以下のように語った。

 「もし国民投票が行われることになれば、賛成派であれ反対派であれ、その意見を表明する自由は当然あるわけです。

 ところが、お金のある人は有名人を使ってCMでバンバン広告を打つと。そうでない人は影響力が少ない広告手段しか持たないとなると、これは意見表明の手段としてフェアではない、と。一定の規制を設けて、お金がなくても意見表明ができるよう、公費で表現活動を支える制度が必要だという主張でした。

 もうひとつの最低投票率は、これはイメージしやすいものですが、投票率がすごく低い中で、僅差で改憲するということになれば、多くの国民が選んで改憲するということにならないだろう、と。(中略)

 そういう欠陥を残したままで発議をすることになれば、改憲の正当性が失われる」。

 山添議員は、公正公平な投票にならない根本的な欠陥をもった国民投票法であり、今通すべき法案ではないと批判した。

 岩上安身が、与党の参考人までもが「熟議されていない」と発言し、4人の参考人が誰も肯定しなかったにも関わらず、採決してしまったことについて「安保法制の時のようだ」と指摘すると、山添議員は次のように応じた。

 「(法案発議者の自民党の)中谷(元)議員などは、CM規制について、『法改正が必要だと個人的には思っている』という答弁をされていました。つまり、このままの法案ではダメだと発議者自身が思っておられるわけです。(中略)

 こういう欠陥を抱えた法律の下で改憲の論議や発議をするなどということは許されるものではないと思います」。

 岩上安身は、安倍・菅政権による憲法破壊と国民投票法は、「一緒のカテゴリー」だと述べ、集団的自衛権の行使容認の閣議決定の末の安保法制、秘密保護法、共謀罪などと、日本学術会議への人事介入、今、まさに参院で議論されている重要土地利用規制法案などがすべて「アメリカとともに戦争する」、しかも「隣国と戦争する」話だと指摘した。

 これに対して山添議員は、「5月3日の憲法記念日に、菅首相は、『国民投票法改正法案は改憲論議を進める最初の一歩だ』と言った。安倍首相ばりに改憲を煽る姿勢を崩していない。実際の改憲は政治的な地力のバランスもありますが、菅首相が考えているということが重大ですね。セットのものだと考えている」と述べ、一連の動きを「『戦争する国づくり』を進めていこうと見るべきだ」と強調した。

 その上で、重要土地利用規制法案について山添議員は、監視社会の入り口にもなり得る法案だと指摘した。

 「土地利用規制法案は平時の法案だと説明されています。平時であるにもかかわらず、内外の諸情勢がどうなるかわからないから、あらゆることを政令や省令、あるいは内閣総理大臣の判断に委ねて、法律にはほとんど中身を書かない。

 注視区域や特別注視区域がどこかになる予定かという話も国会でしないし、最終的に罪になる可能性のある機能阻害行為について(具体的な)説明をしない」

 一見別々に見える、国民投票法改正案も、重要土地利用規制法案も、実は「戦争する国づくり」の一環だというわけである。

 そして山添議員は、自民党がコロナ禍を言い訳に、憲法に緊急事態条項の創設が必要だと主張していることについて、次のように糾弾した。

 「いざという時のためにって言って、憲法改正して緊急事態条項をという話をされてきたわけですけれども、それで独裁になったら大変だっていうことを、警鐘を鳴らしてきたんですが、いざコロナのような本当の緊急事態になった場合、想定外の緊急事態が起きると、いかに無能か、対応しきれない政権かということがはからずも、この1年余りの間に露呈したと思います。

 独裁的に、独断でなんでもやれるという危険とともに、危機に対応できない政権であった場合に、『何もされない』ということによる危険性も露わになったと思います」。

 この後、インタビューは、有事に日本がコミットすることに言及した日米共同声明の意味、6年以内に台湾有事が起こる可能性が高いと表明した米軍のインド太平洋軍の軍司令官の発言、有事には米軍に指揮権を握られて傘下に垂直統合されるしかない自衛隊、緊急事態条項の危険性、国民投票法改正案が11日参議院本会議で採決された後の日程についても話が及んだ。

 東京都議選、五輪、自民党総裁選、衆議院選挙というタイトな日程の中で、五輪直後に臨時国会を召集し、改憲発議が行われる可能性はあるのだろうか。山添議員は、改憲発議までもって行くには日程は少しタイトではないか、今の菅政権にそこまでの体力はないのではないかと指摘した。

 つまり、我々国民には、まだチャンスが残されているということである。戦争は私たちの身近に迫っているが、それを止めることができるのもまた、主権者である私たち国民である。

 菅総理は、安倍前総理の代打として、9月末の自民党総裁の任期切れまでに、解散総選挙を行い、国民に信を問わなければならない。改憲勢力は現在、衆議院で改憲発議が可能な3分の2以上を占めているが、9月末前に臨時国会が開かれ、改憲発議が行われないならば、この秋の総選挙で、国民は改憲勢力を落選させ、3分の2を割り込ませることで、万能の独裁条項である緊急事態条項の導入をひとまず阻止することができる。国民には「ワンチャン」残されているのである。

 岩上安身による山添拓議員へのインタビューの第1弾も、ぜひあわせて御覧いただきたい。

 また、国民投票法改正案の問題点と危険性については、岩上安身による立憲民主党・小西洋之議員へのインタビューを御覧いただきたい。

 岩上安身による小西議員へのインタビューは、「岩上安身のIWJ特報」として、国民投票法に関する部分をテキスト化し、詳細な注釈をつけた上で、現在特別公開している。こちらもぜひ、あわせて御覧いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2021年6月9日(水)17:30~
  • 場所 Zoom + IWJ事務所(東京都港区)

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