10月7日(火)朝8時から、テレビ朝日「モーニングバード!」に出演しました。
番組では、「イスラム国」に戦闘員として参加しようとしたとの容疑をかけられている大学生のニュースが取り上げられました。これが確かならば、日本からは、拘束者に続き、積極的な参加者まで現れつつあることになります。「イスラム国」についてこれからますます真剣に考えなくてはならなくなりそうです。
このほか、葛飾区を中心とした地域で自動販売機が放火される事件が相次いでいるというニュース、「電車の下」をくぐり抜けようとした男性が発車した電車にひかれ死亡したというニュース、そして、自転車に乗らないように小中学生に呼びかけていることが議論を呼んでいるというニュースにもコメントをしました。
「イスラム国」に参加しようとした日本人大学生
警視庁公安部は6日、「イスラム国」に戦闘員として参加しようとしたとして、北海道大学に在籍する26歳学生を含む複数の日本人から任意で事情聴取。東京都杉並区にあるこの学生の宿泊先や、関係先を家宅捜索しました。
学生に対する容疑は、刑法93条で定められる「私戦予備および陰謀」の疑い。条文には、「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する」とあります。学生は、公安部の事情聴取に対し、「シリアに入ってイスラム国に加わり、戦闘員として働くつもりだった」と話しているといいます。
この学生は、東京・秋葉原の古書店で、シリアでの勤務希望者を募集する張り紙を見て渡航を決めたとのこと。張り紙を出した古書店の関係者は、応募してきた複数の人物を、「イスラム法学者の元大学教授」へ紹介していたといいます。北大の学生は、7日には成田空港から出国する計画でした。この学生のほかにも、シリアへの渡航を計画していた人物が複数いるとされています。
岩上「若者の意見で『これまで日本にも傭兵がいたからいいんじゃないか』というものがありました。これは一つ考えるポイントですね。たしかにこれまで傭兵としてよその国で戦い、体験を本にしている人もいますね。
今度の北大生の場合は、刑法93条の『私戦予備および陰謀』の疑いがあるということです。これは外国軍とは戦ってはいけないということですね。ということは、勝手に外国の戦争にいってはいけないということになる。
ところで、今まで、傭兵として外国で戦争に参加していた人はどういうことなんだろうと疑問がわきます。この北大生だけではなく、これまで傭兵として活動していた人たちはいいのか。きちんと問われなくてはならないと思います」
従来、欧州では、「イスラム国」など中東地域の武装組織への参加者は、社会的マイノリティや貧困層の出身だとされてきました。ところが、現在では、中流層や富裕層からの参加が増加しているとの指摘があります。(2014/9/18毎日新聞「フランス:若い女性や中流・富裕層出身者がイスラム国参加」)
番組で実施した学生と同年代への街頭インタビューでは、「個人の自由だからいいのでは」「その人が行くことに対しては別にいいと思う」という声が目立ちました。
同居人の話によれば、北大生には、戦闘を好む様子や、「イスラム国」を支持するような言動はなかったといいます。聴取に対して「就職活動がうまくいかなかった」と話しているそうですが、就活の失敗が戦闘参加へ向かう動機なのか。イスラム国の何が、若者を惹きつけるのでしょうか。
岩上「『イスラム国』はたいへんリクルートが上手です。私は中東周辺で働いている人に知り合いがいます。それから、つい最近シリアに行かれたイスラム学者の中田考さんに、昨夜、『イスラム国』の現状について教えていただきました。
『イスラム国』で外国人をどのようにイスラム教徒としてみなすのか、という問題については、自己申告でハードルなどはとくにないということです。『私はムスリムです』と言えば、ムスリムとして認められてしまうということのようです。
ですから(『イスラム国への加入』は)非常にハードルが低いのですね。加入のための誓いの言葉もない。もちろんイスラム教徒一般と、『イスラム国への加入資格』とは別に分けて考える必要があります。
現地では、『サラフィ・ジハード主義』という『イスラム国』の主義に基づいた講義を受けることになるとも言われます。アラビア語ができる必要があるのか定かではないのですが、逆に言えばその程度のものなのではないかということです。
このように、別の宗教を信仰していた人も改宗すれば受け入れるという、過去に例をみない包摂性が、『イスラム国』を拡大させている大きな要因となっているのではないでしょうか。こういう形で拡大したのは『イスラム国』が初めてのケースでしょう」
今回の警視庁公安部による家宅捜索では、「関係先」の目星のつけ方が、強引だと感じさせる一幕がありました。
北大の学生は8月にも渡航する計画を持っており、ジャーナリストの常岡浩介さんは取材を目的としてこの渡航に同行する予定でした。また、学生へのインタビューも行っています。これが、常岡さんを「関係」先とみなす理由となったようです。
常岡さんへの家宅捜索では、取材活動に必要な「ハードディスク3台やSDカードからPC3台、スマホと携帯計8台、ビデオカメラ2台」が押収されたとの情報もあります。
また7日には、秋葉原の古書店関係者が学生を紹介した先の、「イスラム法学者の元大学教授」にも、家宅捜索の手が及んだ模様。取材陣に対しこの「元大学教授」は、「イスラム国に入るルートの手配はしていない」と話しました。
この「元大学教授」とは、言うまでもなく、番組のコメントで紹介させていただいた中田考さんのこと。私が番組で中田さんに教えていただいた話をしている一方、当のご本人は、家宅捜索を受けていたことになります。
この後、私はあらためて中田さんに突撃インタビューを敢行。7日から秘密裏に中田さんと連絡を取り、周囲のスタッフにも行き先を告げず、未明の闇に紛れて、中田さんのもとへと向かいました。
取材の成果は以下の通りです。今回の騒動の経緯および中田さんご本人が知る「イスラム国」の情報について、IWJだけに語っていただきました。
続発する自販機放火:絶対に割に合わない犯罪
東京都葛飾区内では、自動販売機が燃やされる事件が続発。9月14日から23日までに25カ所、合計で35台の自販機が同じように燃やされる被害にあっています。
警視庁少年事件課は6日、自販機を燃やして釣り銭を盗もうとしたとして、葛飾区の高校生1人と同区の中学生を窃盗未遂と器物損壊容疑で逮捕したと発表。「遊ぶ金がほしかった」という趣旨の供述をしています。
似たような自販機が燃やされる被害は、葛飾区のほか、江戸川区、埼玉県八潮市、三郷市、桶川市などでも確認されています。今回の逮捕は、9月18日に起きた事件で、現場近くを走っていた少年に警官が職務質問したことがきっかけとなりました。警察では、他にも犯行におよんでいる少年グループがあるとみて、捜査を続けています。
逮捕された少年らは、YouTubeで自販機を燃やす手口を知ったと供述しています。犯罪につながる情報の公開をした場合、「教唆犯」となる可能性があるという指摘もあります。一方でインターネットでの情報発信活動を、全面的に取り締ることは、不可能であり現実的ではありません。また、インターネット上での情報の検閲や監視は、表現の自由を侵害するものであることは、いうまでもありません。
岩上「動画サイトに手口を掲載することが教唆犯にあたる、ということで、だから動画サイトがけしからん、取り締ろうじゃないか、削除しようじゃないか、という話に傾きがちですが、ここには二つの問題があります。
まずネットの自由に抵触するという問題があります。それから、現実に取り締まりはできない、という問題。これは技術的に絶対に不可能なんです。よく情報は国内にとどまるものだと考える方がいますが、実際は瞬時に海外に流れています。
そして、流れていったものは全てどんな形であれキャッシュを残すことが可能なんですね。私はこの間ドイツに行きましたが、ヨーロッパ中であたりまえのようにIWJが視聴されていました。こんな風に情報が飛び越えていくことを実感するわけです。
もちろん、よい情報も悪い情報も、同じように飛び越えていく。ですから『削除はできない』という前提があるのです。では、どうすればいいかというと、カウンターの情報を出していくということですよ。
自販機を揺さぶる手口から、燃やす手口へと移っていった背景には、防犯対策の盲点がありました。自販機を揺さぶったりすると異常察知の通知が管理会社へ送られるのですが、温度の変化を敏感に察知し、連絡をするシステムがまだ普及していませんでした。
それから、そんなに自販機を置く必要があるのかという問題。あるいは自販機に対する保険の問題もあります。それよりもなによりも、『これは、まったく割に合わない犯罪だから、おやめなさい』と呼びかけることですね。
自販機に火をつけるということは、結局、お札を燃やしていることになる。だから、回収できるのはコインだけですね。数百円のコインを手にするために、高いものでは100万円はすると言われる自動販売機の損害賠償を払わなければならない。
さらには、放火や窃盗罪ですから、これは懲役刑です。しかも複数台を狙ったとなると、執行猶予がつかず実刑となることが予想されます。カウンターの情報として『こんなつまらないことはおやめなさい』とTVやネットで伝えることがずっと有益でしょう」
「電車の下」をくぐろうとした男性がひかれて死亡。すぐ側には歩道橋があった
5日午前11時20分ごろ、横浜市鶴見区市場上町のJR古市場踏切で、61歳男性が列車にひかれ、死亡しました。事故直前、男性をひいた列車は緊急停車中。男性は遮断機を越え、電車の下を通り抜けようとしたところ、列者が発車したものと見られています。
この踏切は、いわゆる「開かず」の踏切だったようです。番組が調べたところ、平日午後7時ごろでは、10分間のうち遮断機が上がっているのは、わずか3分だけでした。
実は、この踏切のすぐ傍らには歩道橋が設置されています。それでも、踏切を通り抜けようとする人のほうが圧倒的に多い。カメラがとらえた映像からうかがえるのは、利用者が悪い意味で慣れてしまい、大変な危険に晒されているという感覚を失っている様子でした。
高木美保さんは、「歩道橋があっても、高齢者などは渡ることができない」と、高齢者が増えている時代に合わせた対策が必要だとコメント。実に的を得たご意見です。
岩上「公共事業にあれだけ使っていて、こういう所に使わない。使い道の発想に、住民やユーザーの軽視があるのではないでしょうか。このような場所の踏切を高架にするのは、それほど大変なことではないのですが。
公共事業にあれだけ使っていて、こういう所に使わない。使い道を発想する際に、住民やユーザーの軽視しているのではないでしょうか。このような場所の踏切を高架にするのは、それほど大変なことではないのですが」
自転車には「なるべく乗らないように」と訴える市長
新潟県加茂市の小池清彦市長(77)が、市内の小中学生に対して「なるべく自転車に乗らない方がよい」と呼びかけていることが、物議をよんでいます。
加茂市内では8月に、自転車に乗った中学生がトラックにひかれ、死亡する事故が起きています。これを受け小池市長は、10月1日付けで、「自転車の事故を完全になくするために」と題した文書を、小中学生およびその保護者向けに配布しました。
この文書の中で小池市長は、「小中学生のいたましい自転車の事故を完全になくするための一番の方策は、なるべく自転車に乗らないようにすることである」と自身の考えを表明。下線を引いて強調しています。
さらに小池市長は、「なるべく徒歩かバス等を利用するのがよい」とし、やむをえず自転車を利用する場合は、ヘルメットの着用や、自動車が多い道ではなるべく乗らない、などの注意点を挙げています。
番組の所レポーターの取材に答えた加茂市長は、「今や自動車の全盛時代」と語り、「自転車にとっては危険な時代がきた」との認識を示します。「私は今、ぜんぜん自転車に乗る気がしない」と述べました。
一方、小中学生からは「困る」との反応が聞かれます。加茂市では通学に無料のスクールバスが利用可能。しかし、部活動や塾通いには自転車は必須だといいます。「自転車コース」のようなものがあるとありがたいという保護者の意見もありましが、市長によれば、「サイクリング道路を作る場所はない。とても金もない」ということです。
岩上「自転車が車にはねられる事故に起きた。だからといって、『自転車に乗るのをやめましょう』と言う前に、はねた車側に対して『気をつけましょうよ』と言うのが先ではないでしょうか。
それから、自転車が危険に晒されるような道路状況や道路行政があり、それを見直すように市長の立場から国に掛け合っていくのが先決だと思います」
★岩上安身がレギュラーコメンテーターとして出演中のテレビ朝日「情報ライブショー モーニングバード!」は、毎週火曜日午前8時から放送中! ぜひ、ごらんください。
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