【岩上安身のツイ録】経済指標が語る「アベノミクスの大失敗」「モーニングバード!」で岩上安身がコメント 2014.9.6

記事公開日:2014.9.6 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

 9月2日(火)朝8時から、テレビ朝日「モーニングバード!」に出演しました。

 スタジオでは、この秋に入り食品の値上げが相次いでいることが話題となりました。「給料が増えず、消費税が上がり、さらに食べるものの値上げで困っている」という庶民の実感。その背景にある経済政策の「大失敗」についてコメントしました。

 そのほか、デング熱の感染拡大のニュース、広島市での土砂災害発生以前に送信されていた注意喚起のファクスが、市消防局で見落とされていたニュースについてもコメントしました。

大失敗!「アベノミクス」

 9月に入り、乳製品、魚介類の缶詰、コーヒーなどの食品の値上げが開始されました。牛乳やヨーグルトなどの乳製品の値上げは、飼料代の高騰によるもので、北米の天候不順が原因だといいます。魚介類の缶詰の値上げは、漁獲量の減少によるもの。番組のインタビューに応じた購買者たちは、「消費税も上がって困る」と実感を語りました。

 この先さらに懸念されるのは、運送費の上昇です。運送業界では、若い働き手が集まず、ドライバー不足が深刻だといいます。人手を集めようと賃金水準を引き上げれば、それが運送費に転嫁されることも予想されます。そうなれば、食品の価格もさらに上昇してしまいます。

岩上「人手不足の背景には、労働力人口の減少があります。このベースにあるのは少子化の問題です。この問題に、根本的な手だてを打たないでいたわけですよ。

 つまり『生んで育てる』という活動にお金が回らない仕組みになってしまっているのです。逆に、お金が流れていく先は、大企業。そして大企業はと言えば、どんどん海外に生産拠点を移していくので、産業が空洞化してしまう。

 日本を代表する企業のトヨタでさえ、国内生産は4割にとどまります。この空洞化で、すべて悪い方向に向かってしまう」

 ところで、食品の値上げは、天候不順や漁獲量が原因で、人為的な影響がそれほど大きくありません。人手不足にしても、どちらかといえば人口動態の変化に由来する構造的な問題です。

 それに比べ、消費増税はもちろん、給料が増えないことの原因は、直接的には経済政策にあります。つまりこれらは、為政者により人為的に作りだされたものだということです。

岩上「『アベノミクス』で好調だと言われていた経済ですが、あらゆる指標が惨憺たる結果を示しています。その『アベノミクス』を、英紙フィナンシャル・タイムズが酷評しています。3本の矢というのは円安しか生まなかった。あとは何もなかった。この先懸念されるのは軍事化だ、と厳しく評価しています。

 賃金の上昇が追いつくどころの話ではありません。恩恵を受けていると感じているのは、一部の層に限られて、8割の人たちは実質下落しています。実質賃金指数は4月から3カ月連続で、前年から3%台の下落です。これは大変なことですよ。

 賃金が下がり、物価がこんなに上がり、増税され、そして経済は縮小していく。貿易収支はと言えば、市場最悪の赤字です。円安で真っ先に貿易が伸びると思われていたにもかかわらず、この有様です。大失敗としか言いようがありません」

 安倍総理の高い支持率が、その経済政策への期待だったことは、広く知られています。それが「大失敗」だったことが、この夏、決定的になりました。

 経済指標は正直です。2014年4~6月期の国内総生産(GDP)が、前期比年率6.8%縮小。7月の貿易収支は、9640億円の赤字。25ヵ月続いている貿易赤字は、統計が始まって以来の最長記録を伸ばし続けています。

 労働者の賃金はどうでしょうか。7月の現金給与総額は、前年同月に比べ2.6%上昇しています。ところが、物価上昇分の影響を除いた実質賃金指数は、前年同月から1.4%の減少です。4月の消費増税以来、実質賃金指数の下落幅は3%台が続いていました。7月に少し上向いたとはいえ、下落傾向は13ヵ月連続で続いています。物価の上昇率に、賃金の上昇が追いついていない。むしろ物価は上がるけれども、賃金は減り続けているのです。

 7月の消費者物価は、生鮮食品を除いた指数で、前年同月に比べ3.3%上昇しています。消費者物価の上昇も、14ヵ月連続で続いています。

 給料が減り、物価が上がる。これでは消費が伸びないのは、誰でも予想できます。果たせるかな、8月29日に発表された7月の消費支出は、前年同月比の5.9%減という惨憺たる結果となりました。

 「アベノミクス」が絵に描いた餅だったということは、25ヵ月も赤字を続けている貿易収支の推移を見れば一目瞭然です。2014年上半期で見てみると、7兆5984億円の赤字で、この期間の赤字幅として過去最悪です。日銀の主導により、円安を誘導する。円安の恩恵を受けて、輸出品がたくさん売れる。儲かった企業から賃金を上げていき、その波及効果で景気がよくなる。この見通しのもと、第一の矢「異次元の金融緩和」が放たれました。

 まったく逆のことが起きました。輸出が伸びない。なぜか。今や日本の製造業は、安価な労働力を求め、生産拠点を海外へ移しています。つまり、製品は海外で組み立て、そのまま他国へ輸出することになります。

 番組の中でトヨタの例を出しましたが、トヨタは今や6割を海外で生産しています。要するに円安にして輸出産業が儲かるというシナリオは、初めから前提が間違っていたのです。そんなことはしかし、わかりきっていたはずです。何を今さら、と言わざるをえません。

 番組中のコメントで紹介した「フィナンシャル・タイムズ」の記事は、「どうか4番目の矢として軍国主義が復活しないように願いたい」としめくくられます。これは、海外での安倍総理に対するイメージが素直に投影されたものでしょう。しかし単なるイメージで、杞憂に終わる、とは言い切れないところが、頭の痛いところです。

・2014/8/28 日本経済新聞「[FT]アベノミクス3本の矢、いまだ的中せず」

 安倍総理は今年1月の世界経済フォーラムで、「グローバル・リーダー」たちを前に、「『アベノミクス』によって活力ある日本を作り出し、地域と、世界に、平和と、繁栄をもたらしたい」と、自信満々の講演をしました。その結果は、この夏ではっきり出たと言っていいでしょう。半年がたち、私たちは「アベノミクス」の幻想ではなく、その「現実」と向き合う時が来ているようです。

・2014/1/22 首相官邸「世界経済フォーラム年次会議冒頭演説~新しい日本から、新しいビジョン~」

感染拡大するデング熱

 日本国内でデング熱の感染が広がっています。4日現在で判明している感染者の数は55人。ここ最近海外に渡航した人はおらず、いずれも代々木公園とその周辺を訪れています。代々木公園は草地に覆われ、噴水池もあるなど、デングウイルスを媒介する蚊が発生しやすい場所です。都が公園を部分的に消毒した28日以降は、公園や周辺での感染はみとめられていないということです。

 デング熱は熱帯や亜熱帯地域の病気だとされており、日本国内での感染は、およそ70年の間報告されてきませんでした。温暖化や気候変動が言われる中、日本も熱帯化しているのか、と思わせるような突然の感染拡大です。

岩上「かつて日本で感染が広がった理由は、戦争で南方に送られた兵士たちが戻ってきたからでしょうね。私の父も南方へ出征し、たいへんな病気をして帰ってきました。ただ、一度流行したデング熱は収束しました。

 今回はどうなるのでしょうか。次の冬が過ぎても、感染が拡大するのでしょうか。温暖化と言われていますが、病気の定着はありえる話なのでしょうか?」

 番組で話した、東京慈恵会医科大学で熱帯医学を教える嘉糠洋陸(かぬか・ひろたか)教授によれば、収束する見通しだということでした。ただ、輸入症例が毎年約200件あるので警戒の継続が必要だということです。また、温暖化の影響によるデング熱の日本への定着の可能性に関しては、「これから丁寧に見ていかなければわからない」ということです。まだ研究の蓄積が必要だということでしょう。

ファクス着信の見落とし

 大惨事となった広島市の土砂災害ですが、発生の一時間以上前に送信された豪雨予報を伝えるファクスを、市の消防局は見落としていました。広島市が行った検証により明らかとなりました。

 広島地方気象台は8月20日午前1時15分に「土砂災害警戒情報」を発表。市にも電話で内容が伝わっていました。さらに気象台が1時49分に出した、「県内で1時間に最大70ミリの雨が降る」との気象情報は、市が契約する気象情報会社が送信したファクスを通じ、同50分には広島市消防局に届いていました。

 3時21分の通報により、子供が土砂崩れにより生き埋めになったことが明らかとなってからは、被害情報が続々と寄せられます。市が避難勧告を出したのは午前4時15分でした。

 見落としについて市消防局では、「同じ時間帯に、市内の河川の水位が急激に上昇中であることを伝えるファクスが多数送られてきた」と説明。その中に紛れていた可能性を指摘しています。

岩上「広島市を擁護するつもりはありませんが、ありえるだろうな、という気はします。私の事務所でもファクスの見落としはありますから。

 対策として、たとえば、メールで同じものを送ることが必要となってくるのではないでしょうか」

★岩上安身がレギュラーコメンテーターとして出演中のテレビ朝日「情報ライブショー モーニングバード!」は、毎週火曜日午前8時から放送中! ぜひ、ごらんください。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です