2026年5月15日午後3時6分より、東京都千代田区の外務省にて、茂木敏充外務大臣の定例会見が行われた。
会見冒頭、茂木大臣から、国連のグテーレス事務総長が、アジア初の開催となる「国連システム幹部会及び関連イベント」出席のため、5月17日から20日までの予定で訪日する予定であり、日本滞在の間に、天皇陛下および、高市総理や茂木外相などと面会する予定である旨の報告があった。
続いて、茂木大臣と各社記者との質疑応答となり、他社の記者からは、「米中首脳会談の受け止め」「対ロシア外交」「インドからの投資誘致、日本企業のアフリカ進出の展望」などについて、質問があった。
IWJ記者は、「ロシア産原油の輸入」について、質問した。
なお、IWJ記者は、今年3月、3度にわたり茂木大臣に、「ロシアへの経済制裁解除」や「ロシアから石油・天然ガスを輸入すべきでは?」と質問したが、茂木大臣は、「対露制裁を続けていく」「(ロシア以外の)ホルムズ海峡を通過しない代替ルートや新たな調達先を探す」と、回答している。
この日の会見で、IWJ記者は、次のように質問した。
「ロシアとの外交関係について、質問します。
ロシアのラブロフ外相が、『日本がロシア産の原油の輸入を望む場合は、反対しない』との考えを示したと報じられています。
ラブロフ外相は、また、『茂木外務大臣はロシアへの圧力を継続し、西側諸国と足並みをそろえるが、ロシア産原油なしでは困難だという立場を明確にしている』『我々は経済や、既にある合意を政治問題化したことはない』とも述べており、『日本の政治的立場を理解した上で、経済的窮地に陥っている日本に石油を出す』と言っているものと理解します。
今、何よりも必要なのは、備蓄が尽きる前に、緊急で日本の需要を賄えるだけの石油・天然ガスであり、国益を第一に考えるのであれば、ロシアからの申入れを受け入れるべきではないかと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください」。
この質問に対して、茂木外務大臣は、次のように答弁した。
「ラブロフ大臣が、今、おっしゃったようなことを直接話しているということは、私は認識をいたしておりません。
ですから、それに対する回答について、控えたいと思います」。
茂木大臣は「私は認識していない」と答弁しているが、この会見に先立つ、5月13日の時点で、『スプートニク日本』は、「ロシアのラブロフ外相は、日本側が露産原油の輸入を望むなら、反対しない考えを示した」と報じていた。「認識していない」で片づけていい話ではない。日本の国益、エネルギー危機回避に関する重要な情報のはずである。
【ロシアのラブロフ外相が「日本側が露産原油の輸入を望むなら、反対しない」と表明!】「対露制裁を続けていく」と表明した茂木外相を名指しした上で「だが、ロシア産石油なしでは、きつい」と指摘!!(日刊IWJガイド、2026年5月15日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20260515#idx-5
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/55579#idx-5
さらに5月14日には、『NHK』と『北海道新聞』が、それぞれ「ラブロフ外相 日本のロシア産原油輸入に反対しない考え示す」「船越外務次官、ロシア高官と外務省で会談 ラブロフ外相、日本の原油輸入『反対せず』」と報じている。
- ラブロフ外相 日本のロシア産原油輸入に反対しない考え示す(NHK、2026年5月14日)
- 船越外務次官、ロシア高官と外務省で会談 ラブロフ外相、日本の原油輸入「反対せず」(北海道新聞、2026年5月14日)
ラブロフ外相の発言は、5月13日に、『RTインド』によって行われた約1時間に及ぶインタビューの一部であり、その内容は、ロシア外務省のホームページに公表されている。
ロシア外務省が公表しているインビュー記事から、このたびの質問に関する部分を抜粋して、IWJが仮訳・粗訳すると、以下のようになる。
『RTインド』記者「(前略)西側諸国が、これら日本を含むアジアの国々に対し、ロシア産原油を一切購入しないよう圧力をかけていることを踏まえ、この動きをどのように見ていますか?」
ラブロフ外相「ロシア産原油の購入を阻止しようとするのは、(米国の)卑劣な戦術です。
植民地主義的、新植民地主義的など、様々な表現があるでしょうが、いずれも搾取の手段です。
その根底にあるのは、安価なロシア産原油ではなく、高価な米国産原油と液化天然ガスを、各国に強制的に購入させることです。こうして、世界のエネルギー供給を支配することで、世界を支配しようとしているのです。
しかし、誰もがこの圧力に屈しているわけではありません。インドは、『エネルギーの購入先と購入量を、独自に決定する』と、断固として繰り返し表明してきました。
あるインドの買い手が、ロシア産原油を積んだタンカーからの購入を拒否したという噂が時折流れましたが、改めて強調しますが、インドは自国の立場を明確に表明しています。
日本も、この問題に取り組んでいます。茂木敏充新外務大臣は、『日本はロシアへの圧力を継続し、西側諸国と連携していく』と明言しましたが、ロシア産原油なしというのは、日本にとって大きな課題です。
もし、彼らが我々から購入してくれるなら…私達は、経済や既存の協定を、政治的な道具にしたことは、一度もありません」
御覧の通り、ラブロフ外相の発言は、『RTインド』の記者からの質問に答えて、対露制裁をかけている日本に対しても、石油・ガスの輸出を行なってもよいと、オープンな姿勢を表明している。日本国民にとっても、日本企業にとっても利益となり、さらには日本という国家の国益にもつながる、非常に重要な発言である。
ロシア外務省が公表し、IWJを含め、日本のメディアもすでに報道していた事柄について、日本の外務大臣が「認識していない」と公言することなどありえるのだろうか? 事実、そうだとしたら、茂木外相も、彼を支える外務官僚も、無能であるということになる。
外務大臣並びに外務官僚の「国益」に対する認識・感度のレベルに対し、大きな疑問を抱かざるを得ない。

































