「植田日銀総裁は『円安はずっと続く』というたいへん恐ろしいことを言われた」! インフレ=好況ではない! 日本はスタグフレーション(インフレ下の不況・景気後退)に落ち込みやすい!! 日経平均株価4万円超えと急落・反転は「令和バブル」の始まりか!? 終わりか!? 都心を中心に広がる地価高騰が家賃上昇やさらなる物価上昇を招く!~岩上安身によるインタビュー第1150回ゲスト エコノミスト田代秀敏氏第 第2弾 2024.3.24

記事公開日:2024.3.31取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!

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 岩上安身は3月24日、3月18日のインタビューに続き、エコノミストの田代秀敏氏に2回目の連続緊急インタビューを行った。

 24日のインタビューの前半では、緊急速報として、ロシアでの銃撃テロについて、日本ではまったく報じられていない、テロに見舞われた当事国であるロシア側からの報道を中心に伝えた。

 さらにそこから、話題はウクライナ戦争と対露制裁に及び、西側のプロパガンダを第2次大戦時の日本の失敗と比較して、検証した。

 インタビューの後半では、3月19日に日銀の植田和男総裁が、17年ぶりにマイナス金利解除を発表した内容について、田代氏が詳細なデータにもとづいて、詳しく解説した。

 植田総裁は、3月19日に行われた、金融政策決定会合後の記者会見で、「賃金と物価の好循環を確認し、先行き展望レポートの見通し期間終盤にかけて、2%の物価安定の目標が、持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断いたしました」と述べた。

 これについて田代氏は、次のように指摘した。

 「『好循環』という言葉を、植田和夫総裁が使ったのに、私は驚きました。経済学にこんな言葉はないですよね。循環にいいも悪いもないですよね。ただ、循環があるわけです。

 でも、もともと賃金と物価に循環はないんです。

 経済は、すべてのものが相互連携していて、それぞれに価格がついているわけですよね。で、労働の価格は賃金ですね。物の価格、商品の効果が物価ですよね。いろいろな価格が付いいて、それが動いているわけですね。

 だから賃金と物価が、循環するということは、ないわけですよね。

 『資金循環』とか、そういう言葉はあるけれど、『好循環』というのは、これは政治用語で、これは、安倍晋三元総理が言い出したことですよね。そこから来ていて、それをお使いになったのに、ちょっと私は驚きました。

 というのは、植田和男総裁は、日本銀行の総裁して初めて、プロフェッショナルの経済学者が就任してるんですよ。その植田総裁がこれを使ったのはびっくりで、これは単に政治的用語で、これは岸田(文雄)総理へのリップサービスですから、これは気にしてください。こんな言葉はありません。

 次に『2%の物価安定の目標が、持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った』と。

 これは、たいへん怖いことをおっしゃっていて、これは要するに、円安はずっと続くということですよ。

 今日(3月24日)の日曜日の『日本経済新聞』1面には、なかなかいい記事があって、『なぜ、日銀が金利をこれから上げていくと言ったのに、為替レートは円安に振れて、株価は上がるのか?』と。

 実は、日本は経常収支が黒字なのに、なぜ円安が進むのかというと、結局、企業が外国で稼いだお金を、日本に戻さないんですね。そのまま現地で使ったりとか、あるいはロンドンとかニューヨークとか、そういうところに集約して、お金を置いていて、一向に円にはならないわけです。そういう仕掛けがあると。

 そうなると、円安っていうのはずっと続くという可能性があるわけですよね。それをたぶん、植田先生はお考えだったかなという気がする。そうすると、なかなか怖いことをおっしゃってるわけです。

 円安が続くということは、(輸入)インフレーションが、止まらなくなるということ」。

 さらに田代氏は、「日銀の植田総裁の英断で、金利がこれから上がるんじゃなくて、既に金利は上がってるんです」と述べ、財務省が発表している1年物国債から40年物国債の各金利情報をグラフにしたものを提示した。

 田代氏は、グラフを指し示しながら、「ゼロ金利政策やアベノミクスの第1の矢で、金利をぎゅっと押し込んだのが、(新型コロナ)パンデミックが世界を変えちゃったんです」と述べ、「パンデミックでインフレが起きて、さらにウクライナ戦争がインフレを加速させた」「すでに植田総裁が就任する前から、10年物国債の金利は上がっています」と指摘して、「植田総裁のおっしゃっているのは、現状の追認です」と語った。

 田代氏は、「国債は債権ですから、金利が上がっている時というのは、国債の価格が、激しく下がっているわけです」と述べ、次のように説明した。

 「問題は、日本国債を一番持っているのは地方銀行。金利が上昇するということは、地方銀行が溜め込んでいる国債の価格は下がっていくわけです。

 ということは、資産が目減りしていくわけでしょう。痛いですね。

 だから、日銀総裁として、植田先生も、すごい慎重に、まず金利は上がっていく世界が来たんだっていうことを、1年かけて触れ回って、いよいよ最後に、はっきりこうして認めたと。

 それは、すでに上がっているからなんですよ」。

 植田総裁は、19日の会見で、経済物価情勢について次のように語った。

 「我が国の景気は、一部に弱めの動きも見られますが、緩やかに回復しています。

 賃金をめぐる環境を整理しますと、企業収益は改善を続けており、労働受給は引き締まっています。

 こうしたもと、本年の春季労使交渉では、現時点での結果を見ますと、昨年に続き、しっかりとした賃上げが実現する可能性が高く、本時点における企業からのヒアリング情報でも、幅広い企業で賃上げの動きが続いていることがうかがわれます。

 物価面では、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきていますが、これまでの緩やかな賃金上昇も受けて、サービス価格の緩やかな上昇が続いています」。

 田代氏は「これは、私は我が耳を疑いました。日本を代表する、指折りのマクロ経済学者である植田先生が、本当にそう思っていらっしゃるんだろうかと、かなり驚きました」と述べた。

 田代氏は、消費者物価指数と実質賃金、名目賃金の推移を表したグラフを示し、次のように解説した。

 「バブル崩壊以前は、物価も上がる、名目賃金も上がる、実質賃金も上がるという世界でしたが、(日本の金融危機の)1997年から、日本の実質賃金はずっと低下傾向です。

 それに対して、名目賃金も実は、少し遅れたけど低下しましたが、(2020年の)パンデミックを境に、確かに名目賃金は上がっていますが、物価も上がっています。

 当たり前だけど、物価上昇の方がペースが早いから、名目賃金を物価上昇で割引いた実質賃金は、急速に上がっています」。
 
 田代氏は、インタビューの終盤、アンドリュー・アトキンソン氏とパトリック・J・キホー氏が2004年に発表した有名な論文、『デフレーションとデプレッション:実証的に関連するのか?(Deflation and Depression: Is There an Empirical Link?)』を引用し、メディアで喧伝される「デフレ不況」という言葉は「嘘です。デフレーションだったら不況になるというのは、根拠がない」「もちろんインフレーション=好況ではない」と断言した。

 田代氏は、「デフレ不況よりも、物価は上昇しているけど経済は縮まっているスタグフレーションの方が、より頻繁に観察される」と述べ、次のように語りました。

 「日本はこれからインフレーションがきます。でも、それはイコール好況じゃないんです。インフレーションが必ず好況になるという保証はない。

 鉱工業生産指数を見ても、経済成長率を見ても、日本はどうも、スタグフレーションの方に落ち込みやすいんです」。

 詳しくは、ぜひ全編動画をご視聴いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2024年3月24日(日)19:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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