2023年3月7日午前9時頃より、東京千代田区の経済産業省にて、西村康稔経済産業大臣の定例記者会見が開催された。
冒頭、西村大臣からの報告事項はなく、そのまま各社記者と大臣との質疑応答となった。
IWJ記者は、2月28日に閣議決定をした、60年を超える原子力発電所の運転延長を可能とする法案など、関連する5つの法改正案を束ねた「グリーントランスフォーメーション(GX)脱炭素電源法案(原発GX法案)」について、以下のように質問した。
IWJ記者「原発GX法について、うかがいます。
3月1日、参議院予算委員会で、辻元清美議員が、原発が停止していた期間を加算して、稼働期間を60年超まで延長可能だとする閣議決定は、『停止期間中も劣化は進む』としてきた原子力規制委員会の方針と矛盾していると指摘しました。
この『矛盾』については『後日理事会で協議』となっていましたが、その後の進捗をうかがえればと思います。
また、従来の方針を変更してまで稼働期間を延長するリスクと、その『効果』をどのように試算されているのでしょうか?
たとえば、2021年の『第6次エネルギー基本計画』では、2030年のエネルギー需要を満たす一次エネルギー供給源として、原子力は9%から10%程度が見込まれていますが、この比率は変化するのでしょうか?」
この質問に対し、西村大臣は以下の通り、回答した。
西村大臣「まず、今回の措置についてでありますけれども、これは東京電力福島第一原発の事故の反省、教訓、これを我々は一時たりとも忘れることなく、福島の復興にも取り組むということでありまして、まさに、その教訓であります。
最大の教訓である、『原子力における利用と規制の峻別』ですね。それまでは、経産省で一緒にやっていたわけですけれども、独立した原子力規制委員会が、安全規制については、しっかりと独立した立場で判断をしているという、この大きな峻別。
これを踏まえて、両者の分離を法制面でも再整理、徹底するべく再整理をするということでありますので、この大原則は福島の教訓以来、我々として最も大きな教訓ということで規制と利用を分けるということであります。
そして、その独立した原子力規制委員会は、かねてから『運転期間のあり方は、安全規制ではなく、利用政策である』という、そうした見解をお示しされておりまして、これも踏まえて、今回の改正案では『利用政策』の観点から、電気事業法に運転期間に関する規定を設けるということにしたわけでありますけれども、その際も福島事故後に決めました『40年プラス20年の一回の延長』という大きな枠組みは、引き続き維持をするということであります。
他方で、『利用政策』の観点から、将来の安定供給の可能性、選択肢の確保、これは極めて重要な課題でありますので、実質的な運転期間の60年というこの上限は維持しながら、新規制基準への適合作業などに伴ってやむなく停止していた期間、これについては、利用政策側の判断として、運転期間のカウントから除外をする、ということにしたわけであります。
今回の北陸電力も、証拠データをたくさん集めて、いろいろな取り組みをして、新基準に対応したわけであります。そうした期間を実際にどの期間を延ばすかというのは、それぞれの個別例で変わってきますけれども、新基準への適合作業を伴って停止期間について、他律的な要因で止まっていたものについては、利用政策側の判断として運転期間のカウントから除外する、そして、申請ができる、ということにしたわけであります。
ただ、言うまでもなく、原子力規制委員会の、世界で最も厳しいとも言われる厳格な安全基準、安全規制、これをクリアしないと運転ができないということは変わりがありません。
ですので、仮に40年やろうと思っても、30年の検査で無理だと言われるかもしれないし、20年延長60年やりたいと言っても無理だと言われるかもしれないし、さらに止まっていた期間を追加で延長申請しても、劣化などがあって、安全基準を満たさなければできないということであります。
ですので、今回のこの方針は、将来においてもエネルギー需給が不確知であるという、そういうリスクを踏まえながら、運転期間の延長の可能性も含めた安定供給の選択肢の多様化という観点から定めたものであります。
したがって、何か運転期間の延長について、何らかの数値目標、これを想定しているわけではありません。
原子力のウエートにつきましては、第6次のエネルギー基本計画におきまして、2030年度の電源構成に占める割合を20~22%とする方針を維持するということを明記しておりますので、今回の運転期間の延長によって、何か原子力の比率を引き上げるということではありません。これを換算すれば、1次エネルギーで、ご指摘の9から10ということになるわけであります。
けれども、いずれにしても2030年46パーセント削減を目指して省エネを行い、再エネも36から38パーセント導入し、原子力についても20から22パーセントに維持していくということであります。それを目指して取り組んでいくということであります。必要な規模は維持をしてまいりますけれども、長い目で見て低減をすると、原子力への依存度を低減するという大きな方針も変わりはないということであります。
そして、このような事柄について、私自身、国会で参議院予算委員会でも答弁をしてきておりますので、今、公式の見解をということで求められて、理事会で協議がなされております。
私どもとして真摯に対応してまいりたいと思いますので、理事会の決定に従っていきたいというふうに思います」。
他社の記者からは、「日韓両国間の輸出管理」、「北陸電力志賀原発」、そして「電気料金」などについて、質問が行われた。
詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。