2023年の夏は、異常に暑くて長かった。日本各地で真夏日(最高気温30度以上)や猛暑日(最高気温35度以上)が連日観測され、東京では64日間も真夏日が続いて過去最長を記録。猛暑日も22日と過去最多を更新した。
そんな中、ウクライナ紛争は「6月4日からウクライナ軍が『反転攻勢』に転じた」とアナウンスされながらも、めざましい戦果をあげることなく5ヶ月が経過し、長い膠着状態に陥っている。
西側諸国の中には「ウクライナ支援疲れ」も見えており、ウクライナのNATO加盟については、ハンガリーが承認を渋っており、ドイツは加盟を認めないと舵を切った。大きな進展がないまま、ウクライナのゼレンスキー大統領は、相変わらず西側諸国に向けて、「自分たちウクライナは善で、ロシアは悪だ」という建前を掲げながら、「武器支援をしてほしい」という要求をアピールし続けている。
※【第1弾! ドイツのショルツ首相が7月のNATO首脳会議前、ウクライナのNATO加盟に「断固として反対」していることをバイデン米大統領に伝えていた!】米国の4人の情報筋が『ニューヨーカー』誌記者に証言!(『ニューヨーカー』、2023年10月9日)
会員版:(日刊IWJガイド、2023年10月13日)
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今年6月にプーチン大統領への「反乱」を起こし、3日で翻意したロシアのワグネル部隊の創始者、エフゲニー・プリゴジン氏は、8月23日にモスクワ北西部で起きたジェット機の墜落事故で死亡した。
プーチン大統領は、2024年3月のロシア大統領選への出馬を年内に表明する見通しで、ウクライナ紛争の渦中でも政権の安定を強調し、通算5選への準備を着々と進めている。
2023年8月20日、岩上安身は「米国覇権は凋落から崩壊へか? ウクライナ紛争は、米国の軍事覇権、経済覇権、政治文化覇権衰退の加速!」と題して、安全保障と国際関係論がご専門の桃山学院大学法学部教授の松村昌廣氏にZoomでインタビューを行った。
インタビューは、ウクライナの「反転攻勢」が事実上、大敗という形で終わっている、という指摘から始まった。ウクライナ軍が苦戦しつつも善戦していると報じ続けている、日本のマスメディアを含む、西側のマスメディアの報道とは、まったく逆の転展が、戦場では繰り広げられている、と松村教授は言いきる。
最近では米国の保守系シンクタンクの報告書や外交専門誌に「ウクライナは勝てない」という見立てが出るようになり、ロシアへのさまざまな経済制裁はまったく効果が上がらず、アメリカが目論んだ「ロシア弱体化・孤立化」は、実は「米国の同盟国である欧州各国の弱体化」という結果につながっていることなどが語られた。
松村教授は、2014年のドンバス戦争から英米がウクライナを援助し、2022年まで育て上げてきた部隊の物資がほぼ枯渇し、西側の方も徐々に弾薬などを供給できなくなっているのだろうと推測して、こう続けた。
「西側の方が負けてるのに『勝っている』とか、ロシアも(自分たちが)勝っていることを(あえて)言わないのは、お互いに都合がいいから。
ロシアは、この状況が続けば米国の覇権が崩れていくことがわかっているから『墓穴を掘ればいいだろう』と。
アメリカの方は、これが続けば続くほどヨーロッパがボロボロになるし、日本にも金を出させて力を削ぐことができる。そういう打算で、この嘘の状態を続けている」。
つまり、松村教授によれば、米国としては、潜在的に自分の競争相手となりうる欧州と日本などの「同盟国」という名の「従属国」の力を削ぐことを、中露の弱体化という表向きの国家戦略とは別に、真の目的として隠しもっている、というのである。
さらに、米国の覇権は外部要因よりも内ゲバによる「自壊」という形で崩壊するとの予想や、米中の経済は一蓮托生なので、潰れる時は一緒に潰れるため、米国覇権の崩壊後には「多極化」が出現するなど、研究者の視点でポスト・パクス・アメリカーナのシナリオの可能性を語った。
最後に松村教授は、「ウクライナ戦争」という言い方は間違いで、「ウクライナにおける戦争」であり、周辺国がウクライナを戦場にしているのだと指摘した。
「元々あそこはタタールの国で、その前はカザール(ハザール)。西と東の間で人種も文化もグラデーションになっている。ヨーロッパの最貧国で、北朝鮮や中国とも関係が深く、海千山千でやってきた。そんなに甘い国ではない。そういう、ややこしいところに、周りが手を突っ込んで、収拾がつかなくなっているのが現状だと思います」と締めくくった。
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