2025年8月4日、「岩上安身によるインタビュー第1200回ゲスト neutralitystudies.com主宰 京都大学大学院法学研究科・准教授パスカル・ロッタ博士(後編)」を初配信した。
「後編」では、欧州のウクライナ戦争への対応について、インタビュアーの岩上安身との間で、さまざまな意見が交わされた。

▲パスカル・ロッタ氏(2025年7月16日、IWJ撮影)https://iwj.co.jp/wj/open/wp-content/uploads/2025/12/IMG_1243.jpg
YouTubeのチャンネル『ニュートラリティ・スタディーズ』で、各国の要人や専門家にインタビューしているロッタ氏は、マルタのエヴァリスト・バルトロ元外相が、EUを列車に例えたエピソードを紹介した。
かつてイギリスの植民地だったマルタのバルトロ元外相は、「EUは3等級に分かれた列車のようなもの。ファースト、セカンド、サードクラスがあって、フランス人かドイツ人でなければファーストクラスに入れない。(行き先も)ファーストクラスが行くところにしか、行けないんだ」と語ったという(後編・その3参照)。
ロッタ氏は、しかし、すべての国には団結することで利益があるとし、「政治学では、比較的小さな加盟国の政治家が、非常に力を持つという現象が時々見られます。大国が列車を引っ張るけれど、時には3等車の人達が前に出て、列車を導くこともあるんです」と続けた。
この例え話は、2025年12月18日、19日の欧州連合(EU)首脳会合で、ドイツの元国防大臣であるフォン・デア・ライエン欧州委員長らが進めてきた、ロシアの凍結資産を流用してウクライナ支援に充てる賠償融資案が、頓挫したニュースに重ね合わせることができる。
好戦派のショルツの後継者となったドイツのメルツ首相は、前任者以上の好戦派であり、凍結したロシアの国家資産2100億ユーロをウクライナ支援に使うよう、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長とタッグを組んで、EU首脳を説得して回っていた。
ところが、直前まで凍結資産の流用に賛同していたフランスのマクロン大統領が、反対に転じたのだ。12月21日付のフィナンシャル・タイムズは、「マクロン氏はメルツ氏を裏切った」と報じている。
※Role reversal: how foot-dragging France blindsided newly assertive Berlin(FINANCIAL TIMES、2025年12月21日)https://www.ft.com/content/99d256e6-8501-4ab8-81d2-d937d5888f01
EUのコアであり、EUを主導する2大国、発足当初からEU列車のファーストクラスに乗ってきたフランスとドイツが、行き先をめぐって分裂したのだ。
上記の賠償融資案には、ロシアの凍結資産の大部分を国内で保管するベルギーが、強く反対していた。首脳会合では、G7加盟国でもある、メローニ首相率いる有力国のイタリアをはじめ、多くの小国の国々が、ベルギーに同調したため、マクロン大統領も翻意するに至ったといわれる。まさに、「三等車の人達が前に出て、列車を導くこともある」出来事だったと言える。
※<ウクライナ紛争の転換点(その11)>EU首脳会合で、フォン・デア・ライエン欧州委員長ら対露強硬派にして戦争継続派が進めてきた「ロシア凍結資産をウクライナ支援に流用する」融資案が潰れ、EU自身が資金を調達してウクライナ支援をすることで合意! しかし、EU27ヶ国の債務は、すでに約2400兆円、英国を入れれば約3000兆円! EUの共同債務残高は約130兆円、そこに追加のウクライナ支援で900兆円!? ハンガリーのオルバン首相は「ウクライナ人は決して返済できないだろう」と表明! さらにゼレンスキー氏が「日本の高市総理に感謝する」と日本が9000億円のウクライナ支援をするとXに投稿!!(日刊IWJガイド、2025年12月22日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20251222#idx-2
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/55305#idx-2
10月、11月の『岩上安身のIWJ特報!』に続き、パスカル・ロッタ氏へのインタビューの最終回となる「後編」では、欧州が、一部の国を除いて、バイデン政権の米国にひたすら従属的であるという点から、検証を始めた。
「ノルドストリーム・パイプラインを、米国やノルウェーに破壊されたにもかかわらず、なぜ、ドイツをはじめとするヨーロッパ人は、自分達が米英の罠にはめられていることを直視しないのだろうか?」という岩上安身の疑問について、ロッタ氏は、次のように述べた。
「とても難しい質問ですが、ひとつ言えるのは、すべてはタイミングに関わっているということ。ノルドストリームに関しては、特にそうです」。
そして、シーモア・ハーシュ氏によるノルドストリーム爆破実行犯のスクープ報道(注※2、※5参照)のあと、スウェーデンやデンマークが調査をやめてしまい、「現在のヨーロッパの公式見解は、当時のウクライナの将軍が命じた作戦のもと、数人のウクライナ人が、私物のボートに乗ってパイプラインを爆破した」というシナリオであり、「ゼレンスキーも知らなかった」という、ウクライナも含めた、欧州の権力者達にとって、都合のいい「物語」になっていると、ロッタ氏は言う。
ノルドストリームがなくなったことは、実際に欧州の、欧露協調派より、欧露対立派の権力者達にとって、有利に働いており、そのタイミングが、ヨーロッパにおける権力構造について、多くのこと示しているという。
ロッタ氏は、「このタイミングは、ヨーロッパが米国の衛星国(サテライト)となり、ロシアに対抗するための武器として、戦略的インフラを犠牲にする覚悟があることを示した瞬間でもあります」と指摘した。
このあと、インタビューは、日本の右派勢力による緊急事態条項への岩上安身の懸念について、ロッタ氏が、第2次世界大戦中の日本の政治状況、ドイツやイタリアとの比較などから独自の見解を示した。
また、欧州の中でも、特に反ロシア的な姿勢の強いバルト三国や、ポーランドの歴史的な背景、欧州連合が、それぞれ大きく異なる国家的利益を背景に持ちながらも、結局は経済的な結びつきによって維持され続けていることなどについても、詳しく語っていただいた。


































