自民党の裏金問題を刑事告発した上脇博之・神戸学院大学教授の講演をメインプログラムにしたシンポジウムが、2024年4月1日、東京都千代田区の衆議院第一議員会館で開かれた。
主催は「共同テーブル」で、「『新しい戦前にさせない』連続シンポジウム『金権』から『民権』へ ―『政治改革』を問う」と題されて開催された。
上脇教授は「政治資金オンブズマン」の代表を務め、これまでも、政治とカネの問題を中心に、様々な不正疑惑を告発し続けている。
岩上安身によるインタビューをはじめ、IWJでもお馴染みである。
「政治改革を問う」と題して、オンラインで登壇した上脇教授は、「実は、1994年の『政治改革』は『改悪』であったという立場で、ずっと運動している」と前置きして、自民党の裏金事件について語り始めた。
上脇教授は、自民党各派閥のパーティー券収入不記載に始まり、裏金問題へ発展した経緯を振り返り、各派閥の不記載や裏金、キックバックなどの一覧、東京地検の処分等を詳細に説明した。
上脇教授は、こうした問題の各々で、刑事告発を進めているという。
上脇教授は、特に企業等による政治資金パーティー券の購入に、政治資金収支報告制度がなく、確認できないため、「裏金が作られたのだろう」との見方を示した。
その他、一般の企業献金や、公職選挙の候補者への政党の寄付が、裏金に使われやすいという、法的不備についても説明した。
さらに、国会議員の「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交滞在費)や、「内閣官房報償費」(機密費)にも、使途報告などのチェック機能がなく、「政治資金のように、自民党のために使われた疑惑」を指摘した。
上脇教授は、「政治とカネ」問題の大きな原因として、「4割の得票で8割近い議席が取れる」衆議院の「小選挙区選挙」や、参議院の「選挙区選挙」をあげた。これらの制度のもとでは、「政治とカネ」問題が起きても、党でなく、候補者「個人の責任」にすることで、他の選挙区に影響を及ぼさないため、自民党の自浄能力を喪失させていると、分析した。
「完全な比例代表制であれば、政治とカネ問題が起きれば、政党全体に影響し、他の議員も落選する可能性がある」ために、「自浄能力を発揮できる可能性がある」というのだ。
上脇教授は憲法研究者として、「民意を歪曲する制度」があれば、「議会制民主主義とは言えない」と訴えた。それが、衆議院小選挙区選挙、参議院選挙区選挙、政党助成金、企業献金、使途不明金(裏金)だというのである。
上脇教授は、それらが政権・与党に暴走を許し、福祉国家政策を否定して、新自由主義の強行や、戦争できる国づくりを進めさせたと指摘した。
上脇教授は、抜本的な政治改革の必要性を訴え、前述の政治資金パーティー等の禁止や、使途報告の義務化などを訴えるとともに、1994年の「政治改革」のやり直しを主張した。
具体的には、「企業その他の団体の政治献金」の禁止や、自民党の収入の大部分を占める「政党助成金」(政党交付金)の廃止、国政も都道府県等の地方選挙も、完全比例代表制にすることである。
続いて、元参議院議員の平野貞夫氏が、「黒い金の実相」と題して講演を行なった。平野氏は、自民党と野党各党を渡り歩いた経験から、「政治とカネ」にまつわる生々しい体験を披露した。
休憩を挟んだ後半では、「共同テーブル」発起人の評論家・佐高信氏、社民党党首の福島みずほ氏、新社会党委員長の岡崎宏美氏、上脇教授、平野氏による、「金権から民権へ」と題したシンポジウムが行われた。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。