10月10日、夜6時半から、岩上安身による神戸学院大学教授・上脇博之氏へのオンラインインタビューを生中継した。
上脇教授のご専門は憲法学であるが、いくつかの告発をやってきたことで、刑法にもだいぶ詳しくなったとのこと。
岩上「今回の衆院選は、改憲勢力が3分の2をとってしまえば、確実に改憲されてしまうという中で、『あっせん利得疑惑の甘利氏が幹事長!? 自民党の新要職者の絶望的な顔ぶれ、衆院選の争点は「政治と金」』と」
上脇教授「憲法、国民生活、政治と金、いろいろな論点があって、みなさん大変ですけど、全部つながっているんですよね。お友達政治をやっていて、こんなことになっているんですから」
新しくなった自民党役職者は、絶望的なラインナップだ。憲法改正について「ナチスの手口を真似たらどうか」と言った麻生太郎氏が副総裁。UR金銭授受問題をうやむやにしたままの甘利明氏が幹事長。これはどうなんだろうか。
上脇教授「党の資金を扱う重要なポストが幹事長、政治資金問題で逃げ回って説明責任をしない人(甘利氏)が幹事長ということは、岸田内閣は、安倍・菅内閣と全く変わらないということ」
岩上「選挙の金を配る実権を持っているのが幹事長ですよね。そこにこの人(甘利氏)」
『東京新聞』(2021年9月5日)には、二階幹事長に10億円の「政策活動費」が入っていたと報じている。
上脇教授「自民党本部が自民党幹事長中心に、20人くらいに配っているんですね。政策活動費は、何に使ったかどこにも収支報告されていないんです。
政治資金規正法の穴になっているんですね。僕らは報告義務があるという立場だけれど、特捜部はそういう立場ではなくて、『使途不明金』なんですよね」
岩上「20人ってどんな人たちですか?」
上脇教授「衆議院選挙があれば選挙関係の担当者とか。でもそういう人は二階さんに比べると大したことはないです。幹事長がずば抜けて大きな金額を受け取っている。
かつてはもっと多くの国会議員に、平たく配っていたんですよ。80億円くらいとか。今は幹事長を中心に濃淡つけて配っています」
岩上「みんな濃淡つけられたくないから、幹事長に権力が集まってしまう」
上脇教授「中選挙区時代の自民党と小選挙区時代の自民とはまったく別ですね」
幹事長が圧倒的な資金を握っているため、総裁選もまったく中選挙区時代とは変わってしまったと上脇教授が言った。
岩上「中選挙区時代は、派閥の長が力を持っていて。それが小選挙区になったら、幹事長が党の金を全部握ってしまった」
上脇教授「今回の総裁選でどのくらい資金が動いたか情報がないけれども動いていても不思議ではないと思いますね。
政党交付金は幹事長だけではなく、総裁も強く関与していますね。
自民党は、政党交付金と政策活動費を悪賢く分けています。
政策活動費は『その他』の企業献金などからと、帳簿上はなっています。しかし、実際にはお金に色はついていないですから。帳簿上だけ。実質は税金ですよ」
岩上「政策活動費や官房機密費などは法を変えて、ちゃんと明細を出させないといけませんね」
上脇教授「そのとおりです。今の自民党にはできないでしょうね。野党に期待するしかないでしょう。野党は是非、法律改正まで提案して、自民党とは違うというところを示していかないと」
岩上が、岸田新内閣についてどう思うか質問した。
上脇教授「麻生さんは財務大臣を辞めたけど、後任は麻生さんの親戚ですよ、麻生さんがいるのと変わらない。森友などの財務省問題が動かないでしょう。
顔ぶれは変わってもバックが誰かと見ていくと、安倍政権から変わっていない」
岩上「領収書も何もいらないということになれば、また広島(河井案里氏)のようなことになるのでは?」
上脇教授「その通り。まあ、広島は溝手さんも出て、自民党候補が2人。普段の10倍くらいのお金が動いて目立ったから(表面化した)。
岸田内閣がこのような顔ぶれになったのは、実質的な人材不足の表れではないかと思います。あれだけ議員がいても、こんな人たちがトップになるということは。誰かの思惑で人事が動いているということではないでしょうか」
甘利明新幹事長のUR金銭授受問題は今でもまだ不透明なままだ。上脇教授は、2016年に事件が判明した当時、「あっせん利得」で甘利氏を告発している。
上脇「(告発したけれども)検察が不起訴にしてしまった。『不起訴不当』も出たんですがが、どうもバックに安倍(晋三)さんの影響のあるところから話がいって、不起訴になったのではないかなという疑いもあります。官僚が関わったという話もあります。
検察がもはや政権にとってマイナスなこと(捜査)をしなくなったという、疑惑を持っていますが、その発端になった事件です」
岩上「民主主義にとって非常に危険ですね」
上脇「河井さんの事件も、甘利さんの事件も刑法上の問題がありますが、それ以外にも説明責任があります。自民党もそういう候補を公認しているのですから、ちゃんと説明させるべきです」
甘利氏はまだ別の政治資金規正法違反関係の疑惑も出ている。安倍晋三総理補佐官だった薗浦健太郎議員が、2019年4月3日に政治資金パーティーを開催。
このパーティーに、甘利氏が講師として招かれていたと『しんぶん赤旗』(日曜版、2021年10月10日)がスクープした。甘利氏はいわば闇パーティーの広告塔役をやっていたのである。 上脇教授「ここでまた甘利さんに講演させていたというのがすごいですよね。類は友を呼ぶじゃないけれども、そういう人たちの思惑の中で利害が一致して、そういう関係が出来上がってしまうんでしょうね」
薗浦議員の政治資金管理団体「新時代政経研究会」は、このパーティーの収支を記載していなかった。つまり、「闇パーティー」だったのである。
薗浦議員は、読売新聞に入社し、政治部で首相官邸担当、麻生太郎氏の政策秘書、そして安倍晋三内閣総理大臣補佐官を務めた経歴がある。まさに「権力の嗅覚にすぐれた人物」(岩上)というべきだ。
上脇教授は、まず、薗浦議員と会計担当者を、政治資金パーティーの収支を記載しなかったため、「政治資金収支報告書に虚偽の記入」(政治資金規正法第25条第1項2号・3号に違反、または第27条第2項)をしたとして告発した。
薗浦議員には、「専任及び監督について相当の注意を怠った」(政治資金規正法第25条2項)として、会計責任者の監督責任も問われている。
この告発が適正であれば、薗浦議員は「5年以下の禁錮または100万円以下の罰金」が科せられるはずである。
また、上脇教授は「闇パーティー」の案内状を出すなどその運営に深く関わった「ライズ・ジャパン」(仲井力)もあわせて告発した。
「ライズ・ジャパン」は、1年あたりの寄附の上限750万円(政治資金規正法第26条第1号)を超えた825万円を、2018年に薗浦氏ほかに寄附を行っていたからです。この825万円という金額は、確認できた金額だけで、実際にはもっと多くの金額に上るかもしれないと、上脇教授は述べた。
しかし、薗浦議員とライズ・ジャパンの問題は、これだけには止まらない。じつは、ライズ・ジャパンは、こうした「闇パーティー」を手広く手がけていたのである。上脇教授は「この問題を追求していくと、芋づる式にいろんな政治家の関与がわかる可能性がある」と指摘した。
ライズ・ジャパンは、「志友会」という企業経営者の月額10万円の会費をとる「高級秘密クラブ」を運営している。「志友会」は「秘密の勉強会」を開催し、国会議員・有力政治家や事務次官級の高級官僚が講師として招かれてきた。勉強会の参加費は、月会費とは別に、都度、1万円から2万円程度必要である。
上脇教授「ライズ・ジャパンは、『志友会』を介して大臣級の政治家と企業を引き合わせる、高級官僚と企業を引き合わせるんです」
岩上「癒着の『出会い系』ですね?」
上脇教授「そうです、政官財の癒着の構図を作っているんです」
政治資金パーティーや勉強会といいながら、その参加費(パーティー券代)は、1社あたり1枚ではなく、何枚もまとめて買うシステムになっている。したがって、参加費が1000人分あつまっても、その何分の一しか参加者はいないので、パーティーは数百人程度の会場で開催されている。
上脇教授「これはいわば、政治献金になっているんです。パーティー券を5枚、10枚と買うでしょう。でも社長しか行かない。あとはいわば政治献金になっているんです」
岩上「上限が決まっている寄附だけではなく、パー券も実質的には献金になっているんですね。これ、何の規制もないっておかしいんじゃないですか」
上脇教授「そうなんですよね。でも、検察は動かないでしょうね」
上脇教授は、告発状に書いていないことだが、といって以下の問題を指摘した。
上脇教授「収入162万で、支出42万いくらか。そこに甘利さんの講演料は出てこないんですよ。個人として講演したなら、雑所得として確定申告しなきゃいけない。
政治活動として、政治資金として受け取ったことになると『あっせん利得処罰法違反』にも関わってくる。
しかし、講演料がいくらだったかわからない。それに払ったのはライズかもしれない。これは検察が捜査しないとわからないですよ。
ただ、追及していけば、甘利さんに飛び火する可能性もあるということです」
岩上「ライズ社による案内作業への支払いもないですね。これ、ライズは無償奉仕なんでしょうか?
ライズは作業したのに費用を受け取っていないということは、事実上その分の費用を寄附・献金したということになります。
つまり、違法な企業献金に当たる可能性もあるんですね」
上脇「これも告発状には書かなかったんですよ。金額が分からないから。 僕はこの事件を、薗浦議員の闇パーティーと、ライズの上限違反を結びつけて告発したので、一体として捜査して欲しいんですよ。
そうすれば全体が見えてくる。薗浦議員のことは氷山の一角で、他の議員の問題が出てくるということもあるけれども。
まずは、薗浦議員とライズ社の関係においても、まだ分からないことがたくさんあるので、もっと明らかにすべきことがある。
まだわかっていない闇があるので、検察にはそこを捜査して欲しいんですよね」
上脇教授の告発によって、徐々に薗浦議員の問題が明らかになってきた。いよいよここから「ライズ・ジャパン」が一体何者なのか、という問題に入っていく。
ぜひ日本の政官財の癒着構造に迫る、続編を御覧ください。
- ライブ配信【10/10 18時30分頃~】岩上安身による神戸学院大学教授 上脇博之氏インタビュー https://youtu.be/M4YDHqqPzmQ
- ライブ配信【10/11 18時30分頃~】岩上安身による神戸学院大学教授 上脇博之氏インタビュー(続編) https://youtu.be/_eqRRE4hCHA
- ライブ配信【10/12 19時頃~】岩上安身による神戸学院大学 上脇博之氏インタビュー(続々編)https://youtu.be/CsmgNcRC-80