2023年10月29日午後6時30分より、東京都国分寺市のcocobunjiプラザ リオンホールにて、「NO!PFAS 健康と未来のための国分寺市民集会」が開催された。集会では、ジャーナリストの諸永裕司氏の講演「PFAS・人体汚染と汚染源」、当事者からの証言「PFAS汚染と私たち」、近隣地域でPFAS問題にとりくむ市民からの活動報告などが行われた。
PFAS国分寺市民の会(PFAS汚染を考え、安心で住みやすい国分寺を創る市民の会)・共同代表の梅原利夫氏によると、市民の会は、7月3日に設立されたとのこと。
8月には、有機フッ素化合物(PFAS)汚染の実態を調べるため、多摩地域住民の血液検査の実施と、この検査を保険診療で受けられることを、国と都に要望する陳情書を、国分寺市議会に提出したとのこと。
この陳情には3500名を超える賛同署名が集まり、9月28日には、国分寺市議会が、都に汚染源調査を求める意見書を、全会一致で可決した。
- PFAS汚染を考え、安心で住みやすい国分寺を創る市民の会(略称 PFAS国分寺市民の会)
梅原氏は、意見書が市議会で採択されたことは、「本当に、大切な大切な、有り難い第一歩」だと述べた上で、市民の生命と安全を守るため、「市長部局に『PFAS問題国分寺市緊急対策本部』というのを設けて、あらゆる仕事をそこで迅速に行うことが必要ではないか」と問いかけ、会場から大きな賛同を得た。
基調講演「PFAS 体内汚染と汚染源」を行った、元朝日新聞記者でジャーナリストの諸永裕司氏は、東京の地下水のPFAS汚染問題を追及した著書『消された水汚染「永遠の化学物質」PFOS・PFOAの死角』を、2022年1月に刊行している。
諸永氏は、厚労省と環境省がそろって「健康への影響についての評価はまだ定まっていない」と主張し、「Everywhere Chemical(どこにでもある化学物質)」とも「Forever Chemical(永遠の化学物質)」とも呼ばれる、この「有機フッ素化合物(PFAS)」について、次のように説明した。
諸永氏「(PFASは)フライパンから泡消火剤まで、半導体の製造工場とか家庭とか自動車部品とか化粧品とか、さまざまなものに使われて、『台所から宇宙まで』というふうに言われています。
水を弾いて、油も弾いて、熱に強いというこの特徴が、極めて便利な物質として、世界中に、私たちの社会にあふれています。同時に、目には見えなくて、匂いもなくて、味もしません。なので、まったく私たちには自覚がないんですけれども、これを取り込んできたと。(中略)
分解されづらく、その分、蓄積されやすいということで、なかなか消えない。PFASというのは、この有機フッ素化合物の総称ですね。今、OECDが出したものが、2018年の古い数字で4730種類あると。最近で言うと、1万2000種類とも言われて、もう1万種類以上のものがあります。
一番有名なのが、既に規制されているPFOS・PFOAという2物質です。これに加えて、PFHxSという物質も近く、日本でも規制されることになっています。アメリカでは、すでに、ここにある6つが水道の規制値の対象になるとされており、その他にも、もう数え切れないほどの物質があります。
これを一つ一つ、今、追いかけていてはもう足りないのではないか。PFASそのものを全体としてどう規制していくかというのが今の世界の流れです」。
さらに諸永氏は、PFASがもたらす健康への影響について、次のように説明した。
諸永氏「体の中にたまりやすい。それから、なかなか分解されないので壊れない。そして、ずっと残ると。
半減期というのは、この物質が体の中に入ったりした時に、半分になるまでの時間です。だから、3年たって半分になり、また3年たってその半分、4分の1になっていくというようなことになっています。
で、ずっと中に残るので、『体内の時限爆弾』という呼び方をする方もいます。
ただし、これによる健康影響は、水俣病とか、いわゆる『公害』と言われたものとは違って、『PFAS病』という症状が起こることはありません。どういう影響があるかというと、先ほども少し触れられていましたけれども、ここにあげた6つの症状(腎臓がん、精巣がん、甲状腺疾患、高コレステロール、潰瘍性大腸炎、妊娠高血圧症)というのが、一つあげられているものです。
もう一つ、『全米医学アカデミー』という、アメリカの学術機関ですけれども、ここが出したものでも、腎臓がんと脂質代謝異常というものとの関連というのが、もう既に指摘をされています。
それから、子どもでは、低体重で生まれたり、発達への影響などが確認されています。
でも、いずれも、ビール飲み過ぎて肉を食べ過ぎたらコレステロールが上がるように、他の要因でもなります。癌もそうです。なので、PFASとの因果関係というのは、なかなか証明されない。
そもそもPFASという物質が、血液の中にどれぐらいあるのか、ということも調べられていませんし、その後の健康状態がどうなのかということも、業者は調べていませんから、関係性がわかる前に、その実態自体がわからないということで、この問題が長く表に出ないできたということになります」。
諸永氏によると、PFASの汚染経路は、次のようなものである。
諸永氏「この物質汚染源がどこかにあって、まずは土壌が汚れて、それが地下水を汚して、その地下水を使っていた水道水を飲んで、体の中に入ってくるというような流れです。
あるいは、汚染源から川を汚して、それが海に流れて、魚介類をとっているということも、多摩地域ではその魚介類がどうなのかということも調べられてないですが、こういう汚染のルートもあります。
あるいは、大気を通し、空気から、私たちは吸い込んでいる。そして、汚れた土壌、あるいは汚れた地下水を使ってつくられた農作物、あるいは、水道水を使って調理したものから取り込んでいる、というような形でも、PFASを私たちは体の中に取り込んでいます。
今、この物質について、一定の基準、管理の基準があるのは、飲み水、及び地下水と川。地下水と川というのは、環境中の水ということで同じなんですけど、この水だけです。他については今、まったく規制がないという状況です」。
諸永氏はPFAS問題の課題を、(1)水はきれいなのか、(2)健康への影響はないのか、(3)どうして汚染が起きたのか、の3つだと指摘し、実際の取り組みとして、血液検査、汚染源調査、土壌調査の重要性を説いた。その上で「2024年がPFAS汚染問題の『分かれ道』になる」と強調した。
質疑応答の内容など、集会プログラムの詳細については全編動画を御覧いただきたい。