「ウクライナ紛争で原発攻撃が現実化している今、岸田総理が増やそうとする日本の原発の防護計画は?」のIWJの質問に、浜田防衛大臣は回答拒否! 原子力規制委は「運転期間最大60年」の縛り削除を容認! 独立性かなぐり捨て、政府の原発政策に盲従! 2022.10.13

記事公開日:2022.10.13 テキスト
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(文・IWJ編集部 文責・岩上安身 2022年10月12日時点で加筆・アップ)

 紛争化のウクライナで、現実に原発が攻撃されており、「仮定」ではなく、すでに「現実」に起きている危機的事態に対する質問にもかかわらず、浜田靖一防衛大臣は、2022年9月13日の定例会見で、IWJ記者の「日本の原発防護計画は?」との質問に対して、「仮定の質問には答えない」と回答を拒否した。

 岸田文雄総理は8月以降、脱炭素やエネルギー安定確保を理由に、原発の再稼働、運転期間延長、次世代革新炉開発などを繰り返し表明している。戦時にはきわめてリスクの高い原発を減らすのではなく、逆に増やそうとしているのだ。

にもかかわらず、戦時を想定した原発の防護などまったく放ったらかししたままである。

 しかも、原子力規制委員会の山中伸介委員長は、10月5日の会見で、福島原発事故の反省にもとづき運転期間を「最大60年」とした原子炉等規制法の縛りをなくす方針を容認した。

 山中委員長は自ら「原発が古くなれば安全性の立証が困難」の旨を述べながら、「運転期間延長の議論を規制委として容認か?」と質問されると「ご指摘の通り」と回答。そもそも「運転期間に規制委は意見を言わないと2年前から決まっている」「資源エネルギー庁とスケジュール感をあわせる」というのである。

 さらに「推進側が80年、100年、150年利用したいと言っても、理論的にはOKか?」と質問されると、山中委員長は「運転期間の上限を決めるのは、科学的・技術的に不可能」とまで断言した。

 本来、推進側からの独立性が存在理由である規制委が「推進側の片棒を担いで、運転期間延長のルール変更を手伝っている」「推進側と一緒に政策を進めている」と記者団から揶揄されたのも当然だ。山中委員長自身、9月26日の就任会見で「独立性と透明性を堅持」と表明した、その舌の根も乾かないうちに、である。

 岸田政権の前のめりに原発を増やす動きに、独立性をかなぐり捨てて片棒をかつぐ原子力規制委。しかも、原発攻撃の可能性が現実化する中で、標的となる原発は増やすが、その防護計画はゼロ回答という異様な事態である。

 詳しくは、ぜひ、記事本文を御覧いただきたい!

原子力発電所の現状(2022年9月13日時点)(経済産業省 資源エネルギー庁ホームページより)

原発攻撃の可能性はウクライナで実証済み! にもかかわらず浜田防衛大臣はIWJの「原発防衛計画は?」の質問に無回答!

 2022年9月13日、浜田靖一防衛大臣の定例会見が、防衛省にて開催され、IWJが生中継した。

▲IWJ記者の質問に答える浜田靖一防衛大臣(IWJ撮影)

 IWJ記者は以下の質問を行った。

IWJ記者「8月24日のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、岸田総理が原発再稼働と新増設の方針を明らかにされました。

 しかし、ウクライナのザポリージャ原発に対して激しい砲撃が加えられ、9月11日には原子炉が停止したという危機的状況を目の当たりにすると、有事において原発が武力攻撃の対象となり、非常に大きなリスクとなることが明らかになりました。

 この岸田総理の方針変更は、防衛省が日本の原発防護について、中露、あるいは北朝鮮のミサイル飽和攻撃にも耐えうる絶対の自信があると考えてよろしいのでしょうか?

 また、今回の岸田総理の方針転換を受けて、防衛省が原発防護について、どのようなことを新たに防衛計画に追加するのかなどについても教えてください」

浜田靖一防衛大臣「仮定の質問についてはですね、お答えするのは適切ではないと思いますので、コメントは避けさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、今、我々は3文書(※)の策定のための議論を進めているところでありますので、その意味では、いろいろな場面場面を考えながら、議論していくことになろうかと思いますけれども、総理の発言について、私からコメントをすることは差し控えたいと思います」

※3文書:政府は防衛力の抜本的強化のため、「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の安全保障関連3文書を年末までに改定する方針。これに向けて政府は今年1月から有識者計52人にヒアリングを行った。

 IWJ記者の質疑については、下記の切り抜き動画をご覧いただきたい。

 なお、浜田大臣は冒頭発言で、当日から米国を訪問し、日米防衛相会談を行う予定について報告した。

 また、他社からは、尖閣諸島国有化10周年、沖縄県知事選での辺野古容認の自民党候補惨敗、平和安全法制、リムパック(環太平洋合同演習)での存立危機事態想定の実動訓練への自衛隊初参加、馬毛島での基地整備に関わる自治体への交付金、沖縄訪問と玉木デニー知事との面会意向、防衛費増額、国葬儀への自衛隊参加について質問があった。

 会見全体については、全編動画を御覧いただきたい。

岸田総理が原発再稼働、運転期間延長、次世代革新炉開発を表明!ウクライナ危機横目に原発増やす意向だが、原発防護についてはノープラン!? 規制委の山中委員長は老朽化した原発の運転期間延長を容認へ!増え続ける原発列島のリスク!

 その後、10月5日の原子力規制委員長会見で、9月26日に3代目原子力規制委員長に就任したばかりの山中伸介氏が、後述するように、原子炉等規制法の「原則40年、1回に限り最長20年延長できる」という規定の削除を容認する方針を明らかにした。「最長60年」という縛りを解くということだ。

山中伸介 原子力規制委員会委員長(原子力規制委員会ホームページより)

 前述の浜田防衛大臣の会見で、IWJ記者が質問したように、岸田文雄総理は8月24日の第2回GX実行会議で、原発の再稼働、運転期間の延長、次世代革新炉の開発などを表明していた。山中委員長の方針は、この岸田総理の方針に沿う。

 なお、規制委の前任の更田豊志委員長は、同じ8月24日の定例会見で、運転期間の延長について「変えるのであれば、立法府・国会で議論をされるべきもの」とした上で、原発の高経年劣化については、法律にかかわらず、個別に程度を評価していく、「その評価結果は、必要とされる性能であるとか、維持されていなきゃならない状態っていうのは、変わるわけではない」と答えている。

▲更田豊志 原子力規制委員会委員長(当時)(IWJ撮影)

 岸田総理は10月3日の国会所信表明演説では、運転期間の延長には触れなかったが、ロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー危機を引き起こしたと主張し、エネルギー安定確保のために原発再稼働や次世代型革新炉開発・建設について「年末に向け、専門家による議論の加速を指示した」と、原発再稼働や新規増設に前のめりな姿勢を示している。

 ウクライナ紛争では、原発が攻撃されるなど、ひとつ間違えれば深刻な核惨事につながる事態が起きている。それなのに、原発を減らすのではなく、増やし、戦時を想定した自衛隊による原発の防護などはまったく放ったらかしの状態だ。

 前述のように、IWJ記者が浜田防衛大臣に質問しても、「仮定の質問についてはですね、お答えするのは適切ではないと思いますので、コメントは避けさせていただきたいと思います」という始末なのだ。

規制委の山中新委員長は、 「古くなれば安全性立証が困難」と言いながら、「運転期間は政策判断で、規制委は意見しない」と期間延長をそのまま受け入れる無責任!

 10月5日の原子力規制委員会では、経済産業省資源エネルギー庁の松山泰浩電力・ガス事業部長が「60年の上限を見直すべきだ」との方針を示した。

 これについて、山中原子力規制委員長は会見で、共同通信の記者の質問に対して「今日、資源エネルギー庁からの方針をうかがって、高経年化した原子炉の安全の確認のための規制について、改めて規制委員会できちっと検討していく必要を感じました」と、驚くほど資源エネルギー庁に従順な姿勢を示したのである。

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