4月4日月曜日、夜7時から、岩上安身による国際ジャーナリスト大野和基氏へのインタビューが実施された。
岩上が大野氏にインタビューをするのは初めてだが、30年近く前からの知人だという。冒頭、ジャーナリズムの世界の下積み時代のエピソードなどに始まり、大野氏の近年のお仕事の紹介があった。
大野氏は、1979年に渡米し、18年間、化学や基礎医学を学ぶなどしたあと、現地でジャーナリストとして活動してきた。大野氏は、アメリカで体験した、厳しい競争とアジア人への差別についても語った。
岩上は、「日本人はアメリカのことをあまりわかっていないというか、誤解しているんじゃないですか」と問うた。
大野氏は「多くの日本人はアメリカをかなり誤解している」という。「アメリカがほかの国とは異なるという『例外主義』」について説明した。
岩上「日本人は、あたかもアメリカは悪意なき善意の保護者であるかのように、これは信じるとかなんなんとかというレベルの問題じゃないはずなんだけれど、もはや信仰になっちゃって」
「アメリカは国内で民主自由と民主主義というんだけれども、国外に対しては何も自由も何の民主主義も何もないですね。
国際法も自分たちが作り出し、人の国に守らせ、守らななければ処罰をして制裁を加える。でも、我々アメリカ自身は時々破る、という」
「この時々破るっていうことが、アメリカン・エクセプショナリズム、例外主義。アメリカは何をやってもいい、あなたたちは駄目ですと」
「アメリカン・エクセプショナリズム、この例外主義という言葉も本当はアメリカの一番のドクトリンなんだけれども、日本ではこれすらも知らないっていうか」。
大野氏は、この「例外主義」を理解することが、米国を理解するためには必要だと指摘した。米国だけは何をしてもいいという傲慢さは、「ヒュブリス(Hubris)」と表現されるという。
ロシアによるウクライナ侵攻に関わる、欧米、そして日本の報道は、欧米の情報にほぼ依拠しており、ロシア側の情報を示すことすらできないような雰囲気ができている、と大野氏は指摘した。
岩上も、「プーチンが精神を病んでいる」など、根拠も示さずに垂れ流されている今の状況は異常だと指摘した。
岩上「日本の大メディアの報道の偏向が、今、一番甚だしいですよね。日本だと、長いものには巻かれろっていうのがありますが、大本営一色ですから。ウクライナ報道を見て、あんなに偏った報道ないですよ」
大野氏「まるでアメリカが出してる情報が100%正しくて、ロシアが出してる情報が100%パーセント間違ってるみたいな。あれはもう駄目ですね。もっと冷静に情報を判断しないと駄目だと思うんですね」。
2021年にバイデン政権が発足すると、トランプ時代よりも「まし」になると考える人もいたが、実際、ロシアの侵攻を止めるどころか、誘発したような形になってしまった。
大野氏は、米国内では「トランプが大統領だったら、今のウクライナの戦争はなかったと、6割から7割の人が考えている」と述べた。そして、「すでにアメリカが戦争をしている」と思っている人も過半数にのぼる、と指摘した。
バイデン氏が関わった「ウクライナゲート」の話は、米国では有名でも、日本ではあまり知られていない。バイデン氏が、副大統領だった時、ウクライナに深く関わってきたことは、ようやく日本でも少しずつ知られるようになってきた。
バイデン氏は、息子のハンター・バイデン氏が取締役をするウクライナ企業ブリスマの不正を揉み消すために、不正を追及する検事総長を解任せよと、10億ドルのウクライナの融資を引き換えに、当時のポロシェンコ大統領に迫った、との疑いがもたれている。
ロシア国防相は、ハンター氏が、ウクライナにおける生物兵器研究開発に関与していたと発表したが、これについて日本のメディアで報じたのは『共同通信』だけで、それも数行のベタ記事でしかなく、中身がないので日本人の読者には内容がまったく伝わらなかったと、岩上が指摘した。
大野氏は「アメリカの生物学研究は有名ですけれどもね」とコメントした。
岩上「アメリカは何をやってもいいと。地球の番長で、地球の独裁者(のつもり)なんですよ。今、プーチンを独裁者とか言ってますが、地球全体を見たら、アメリカが独裁していると言ってもおかしくなさそうですね」
大野氏「アメリカ国内では、この国の大統領を選ぶために自由と民主主義があるんだけれど、アメリカっていう国でみれば、他の国の民主主義とか主権とか、全然認めない独裁者でしょう」。
だから、中国やロシアなど、国家主権を持っていて支配が及ばない地域を完全に打ち砕きたいのだ、というわけです。
ウクライナに次から次へと軍事兵器を送り続けることによって、米国の軍需産業が大儲けをしている、と大野氏は指摘しました。そうした側面から、ウクライナ危機を見ることも必要です。
岩上は「ウクライナ紛争は、アメリカによるロシア攻略問題に他ならない」と指摘した。
ロシアは核保有国である。岩上は、米国はどうして、ロシアをギリギリまで追い込むようなことをするのだろうか、核戦争になれば、相互に核を撃ち合って数秒で世界が終わるのに、と懸念を示した。
岩上「こんなことになっているのは、中国が非常に早く台頭していることがあるのではないか。科学技術でも軍事でも、経済規模でも米国を追い上げているし、分野によってはむしろ追い越している」
大野氏「アメリカは焦っているんだろうね」
岩上「だから、(中国をやっつける前に)先にロシア、やっちゃおうと。ロシアが弱体化すれば、西と北から中国に手を突っ込んでガタガタにできる、と」。
大野氏は、「一般のアメリカ人は、バイデンがちょっとおかしいと思い始めていると思いますよ」と指摘した。トランプ大統領が出てきたことで米国社会の分断が大きく取り上げるようになったが、大野氏は、トランプが出てくる前から、ずっと、米国社会は、エリートと一般庶民、人種などバラバラだった、と指摘した。
大野氏は、「トランプはまさに一般のアメリカ人そのものだ」という。それに対して、オバマやバイデン、ヒラリー・クリントンなどは、エリートで、一般の米国人とは分断されていると述べた。
大野氏は米国人の特色として、「個人主義」と「干渉主義」が共存していることをあげた。
大野氏「ある夫婦の間でトラブルがあって、夫が妻を殴ったんです。そうしたら、ニューヨーク市民が夫を訴えたんですよ」
岩上「そういう『干渉好き』が、中国にウイグルの問題への干渉になっているんですね?」
大野氏「中国がよく言うでしょう。内政干渉だと。その通りです。人の家の子どもに対して、それぞれ家庭で教育方針がある、それにいちいち文句をつけて、攻撃しますか、と」。
この後、インタビューは『ファンタジーランド』の内容に入っていった。米国の歴史をたどりながら、最初から「ファンタジー」から始まり、いまや米国人同士でも、相互に「もはや議論も成り立たない」という状況に至っている、と述べた。
大野氏は「僕は最初、トランプが福音派に支持されたのか不思議だった」が、『ファンタジーランド』の著者、カート・アンダーセン氏へのインタビューを通して、トランプはまさにアメリカ人そのものだと考えるようになったと述べた。
大野氏「アメリカを体現するのがトランプです。もともと、トランプがミスター・アメリカなんです。オバマみたいな例外主義者は、もう、偽善、偽善、偽善…。あんなに、メディアを弾圧した大統領もいない。とにかくやり方が汚い。
アメリカだけは何をやってもいいと、本気で思っている。白人、エスタブリッシュメント、ヒラリー・クリントンとか。例外主義が染み込んでいるんです」。
大野氏は、バイデン大統領が「(プーチン大統領は)権力の座に維持するべきではない」と言ったのは、まさに「本音」だと断言した。
大野氏「アメリカは、干渉ばっかりしているんですよ。それは傲慢ですよ。やめればいいんですよ」。
日本は、米国を「善意の保護者」のように考え、その米国の言説を主の命令のようにそのまま受け止めてきたが、もしかしたら、米国はとんでもなく「やばいやつ」ではないのだろうか? 詳しくはぜひ、インタビューの全編動画を御覧いただきたい。