東京都医師会・黒瀨理事「セルフケアとしての抗原定性検査と医療機関でのPCR検査を併用する。抗原検査での『偽陰性』の問題については現在、解決に向け調査中!」~6.14東京都医師会記者会見―内容:新型コロナウイルス感染症拡大防止対策等について 2022.6.14

記事公開日:2022.6.16取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2022年6月14日午後4時より、東京・千代田区の東京都医師会館にて、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策等について、東京都医師会の定例記者会見が開催された。

 会見冒頭、東京都医師会長・尾﨑治夫氏より、新型コロナウイルス感染症についての現況と今後の方向などについて、総論的な説明があった。

 尾崎氏は、先ず、新型コロナウイルスの感染症法上の類型について、「現在の2類をいきなり5類とするのは難しい」とした上で、「(選択肢が)必ずしも2類と5類しかないわけではなく、現状に即した、新しい、2類と5類の間のような分類を作ってもいいと思っているが、そろそろ、今の2類相当からは脱却した方がいいとは思っている」と述べた。

 次に、現在、重症化予防効果についての治験が実施されている3つの国産経口薬(アビガン、S21-7622、イベルメクチン)について、「安全性がある程度確保でき、重症化予防効果が予測されるのであれば、『緊急承認(※)』という形で承認する制度もあり、治験の途中経過をきちんと周知し、それにもとづき、早期認可に向け、議論をしていくことが重要である」との考えを示した。

 また、ワクチンについては、既存のファイザー、モデルナ、アストラゼネカのワクチンに加え、「4回目接種には、米ノババックス社のワクチンも使えるようにして欲しい」と求めた。

マスク着用の問題については、「屋外でのマスク着用は原則不要」とし、「同調圧力が生じないように注意しつつ、『する』『しない』は自由である」とし、検査については、「感染リスクの高い場所での、抗原定性検査の積極的な活用」を提案した。

 最後に、現在、感染予防手段として励行されている「アルコール消毒」及び「アクリル板」について触れ、「接触感染の例は少ないということもあり、ウイルスの種類によっては、アルコール消毒が効果を持たないものもあることから、改めて、『手洗い』を実施することが重要ではないか」と訴えた。

 尾﨑氏の総論に続いて、東京都医師会副会長の猪口正孝氏、角田徹氏、平川博之氏、そして、東京都医師会理事の黒瀨巌氏がそれぞれの取り組みの現状と課題、そして、今後の方向性についてのプレゼンを行った。

 質疑応答では、IWJ記者は以下のとおり、検査について、2つの質問を行った。

 IWJ記者「黒瀨先生にうかがいます。先ほど、抗原定性検査について、様々ご説明頂きましたけれども、3つ、短い質問を致します。

 1つ目は、PCR検査よりも抗原定性検査を推す一番の理由というのは、『検査結果までの即時性』という理解でよろしいでしょうか?

 2つ目ですが、抗原定性検査は、結果の一致率について、PCRと、陰性の場合も陽性の場合も100%になっていないと理解していますが、100%になっていないということで、何か問題があるのかどうか、ということ。

 もう一つ、PCRの扱いについてですけども、今後、PCRは抗原検査の結果の補強のような形で使っていくのか、それとも完全に、PCRは抗原検査に置き換わっていくということなのでしょうか?」

 黒瀨理事「ご質問ありがとうございます。まず一番目の、PCRよりも抗原定性検査を推奨しているということですけれども、これは、PCRよりも推奨しているということではなくて、あくまでも、使用の環境が違う。

その、抗原定性検査はもちろん医療機関でも受けられるのですけれども、広く皆様方がお家で、朝起きて、血圧を図ったり、歯磨きしたりと同じく、いわゆるセルフケアの一環としてですね、今日はこういう活動をしたいから、自分が陰性であることを証明して、皆さんと安心安全に活動しましょう、という場合に、これを使っていただく。もちろん、『安い』、『早い』、『簡単』ですね。

PCR検査の場合、やはり、特殊な装置が必要です。最近では、どんどんどんどん進んできまして、PCRとは言っても、いわゆる、拡散の増幅装置の簡易版も出て来まして、30~40分で結果が出るものもあります。

ですが、さすがにご家庭で使うというわけにはいかないので、やはり、そういったものは医療機関で受けていただく。要するに、症状があった場合は医療機関でPCRを受けましょう。だけど、症状はないけれど、今日はこういう活動をしたい、という時には、抗原定性検査を受けていただく。そういう使い分けをしていただくのがよろしいのかなと考えております。

的中率の話ですが、確かに、100パーセントにはならないです。それは、数パーセントあるいは10パーセント程度の誤差といいますか、的中しない率をどう解釈するかということで、我々は、ひとつは、抗原定性検査キットの限界というのも、もちろんあると思います。

じゃあ、どういった方々に行った場合に的中率が低くなるのか?100パーセントにならないのか、というのを、実は今、『前向き調査』というのを行っております。『前向き調査』というのは、条件を揃えて、今までの『後ろ向き調査』というのは、過去にやったものを、アンケート調査で拾ったのですが、今度は、今度は、こういう条件で、一人の患者さんに対して、抗原検査とPCR検査をやったらどうなるのか?

その時に、症状があるとか、あるいはその人の年齢とか、濃厚接触のある無しとか、いろんな条件で、前向き調査をやってまして、すでにもう300を超える症例が集まって来ています。

その中の一つとして、鼻の中のウイルスの量を調べるために、PCR検査の『CT値』というのがありますが、カットオフするための値なのですが、それを見ることで、要するに、ウイルスが非常に少ない、感染はしているがウイルスが非常に少ない方、そういった方に、抗原定性検査キットが『偽陰性』が出てしまうという可能性については、我々も考えているところです。そこを『前向き調査』で解決していきたいと考えています。

ウイルスが非常に少ない人の場合は、ある程度の危険はあるにしてもですね、本当に多くの方にスプレッド、感染を広げてしまう可能性は極めて低いと考えておりまして、その点について、きっちり明快に答えを出していきたいと考えています。

最後、PCR検査の立ち位置についてですけども、先ほどの抗原検査の話のとおり、抗原検査とどのように棲み分けていくかというところで、やはり、症状のある方、あるいは濃厚接触の可能性が非常に高い方は、抗原定性検査キットで、お家で測定しても、10パーセントくらいの誤差は出てしまいますので、やはり医療機関でしっかりとPCR検査を受けていただくということで、そこはうまく、セルフケアと医療機関での検査を使い分けて頂ければいいのではないかと考えています」。

もう一点、IWJ記者は『抗体検査』について、尾崎氏に以下のとおり質問をした。

IWJ記者「尾崎会長に質問です。リアルタイムでの統計サイト『Worldmeter』によると、日本のコロナの累計感染者数は900万人を超え、世界で14位、総人口に対して7パーセント近くの方が感染しています。

また、『Our World in data』というウェブサイトによると、必要な回数のワクチン接種率も81%となっており、社会生活の正常化のためには『抗体検査』を広く行い、コロナに対する免疫がどの程度形成されているのかを把握する必要などはないでしょうか?ご教示下さい」。

尾﨑氏「『抗体検査』の必要性ということですか?それは十分、あの、必要だと思っています。普通のワクチンなんか打ってできるのは、スパイクに対する抗体だと言われていますし、感染された方からは、今度は、スパイクではなくて、ウイルスの中心部と言うか、コアに対する抗体ができるとか、そういう話になっています。

そのへんについては、ある程度は調べているとは思いますが、もう少し組織的にと言いますか、きちんと調べてですね、実際にはどの程度の方が、潜在的な感染者も含めて、かかっているのか、とかですね。

それから、もちろん、ワクチンを打ったために、どれだけ抗体ができているのかということも、本当はきちんと出した方がいいと思いますね。

あと、やはり、日本というのは、何かそういう面でのいろんな意味の、検査だとかのデータをとるということに対して、あまり熱心ではないですよね。ですから、仰るように、そういったことを本当は、きちんとやっていく必要があると思います」。

登壇者のプレゼン、及び質疑応答の詳細については全編動画にてご確認下さい。

■全編動画

  • 日時 2022年6月14日(火)16:00~
  • 場所 東京都医師会館 2F 講堂(東京都千代田区)

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