2021年6月8日(火)、午前9時20分頃より、東京都永田町の内閣府本部庁舎にて、丸川珠代 東京オリンピック・パラリンピック大臣の定例記者会見が行われた。
冒頭、丸川大臣より、本日の閣議終了後に開催された「新型コロナに影響を受けた非正規雇用労働者等に対する緊急対策閣僚会議」について、以下のとおり報告があった。
丸川大臣「その会議の中で、男女共同参画担当大臣として、『新型コロナの感染が続く中で、非正規雇用の多い女性が、職場や社会とのつながりを失くし、家庭以外の居場所を失っていることなどを背景に、配偶者暴力や性犯罪・性暴力の相談が増加し、昨年度の件数はそれぞれ、コロナ前の1.6倍、1.2倍と
なるなど、深刻化している。
相談支援体制の強化が求められており、近く取りまとめる女性活躍・男女共同参画重点方針2021においても、柱のひとつを、『コロナ対策の中心に女性を』としており、女性デジタル人材育成の推進、ひとり親に対する職業訓練など、女性の就業サポートをしっかり盛り込んでいくことについて申し上げた。引き続き、支援を必要とする女性が誰一人、取り残されることのないように、取り組みを強化して参ります」
続く各社記者と丸川大臣の質疑応答で、IWJ記者は次のように質問した。
IWJ記者「6月5日付けの英国のフィナンシャルタイムスで、五輪スポンサーの一部が、水面下で大会を9月か10月に延期することを提案したと報じています。
また、立憲民主党の有田芳生(よしふ)議員が、オリンピックの参加国について『現時点で明確に参加や不参加を表明している国・地域はありません』とツイートしています。
スポンサーからの延期提案…(ここで内閣府担当官からの『大きな声で!』の声で遮られる)」
丸川大臣「ごめんなさい、その、参加・不参加を表明している国がないというのは、母体、というか母数は何ですか?」
IWJ記者「母数?」
丸川大臣「母数というか、その、何の中で…」
IWJ記者「有田議員が、問い合わせをして、現時点で、オリンピックに、明確に参加・不参加を表明している、国・地域はない、とツイートしているのですが、スポンサーからの延期提案や、有田議員からの話のとおり、参加を公式に表明した国が現時点でゼロということは、それぞれ事実でしょうか? 確認させてください。また、事実である場合、1ヶ月後に五輪開催は不可能に思えますが、丸川大臣のお考えをお聞かせください」
丸川大臣「はい。まずですね、組織委員会は少なくとも、そういう話は聞いておりません、とおっしゃっています。
最終的に、延期はかなり難しいというのが、私の今の実感でございまして、一番は、あの、かなりの…毎日ご紹介していますが、事前キャンプ等も具体的に話がつめられているところでして、追加的に会場の確保、あるいは宿泊先の確保等考えますと、非常に難しいのではないかと考えております」
「延期は難しい」という、この丸川大臣の言葉は、会見に参加していた各メディアが次々と記事にした。以下はそのひとつ、NHKが質問をしたIWJの名前を出すことなく、この質問と回答を報じている。
他方、IWJ記者のもうひとつの質問である、参加表明をしている国・地域がないことの指摘については、上記のようにNHKなどは記事にしていない。参加予定国が現時点で1ヶ国も、正式に参加表明をしていないというのは「異常」なことであり、ニュースとしての価値は十分あるはずだ。
IWJ記者が引用した立憲民主党の有田芳生議員のツイートは、以下の通りである。
「東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会によると、この夏の東京大会に参加する国・地域の最大数は、オリンピックが206、パラリンピックは182。現時点で明確に参加や不参加を表明している国・地域はありません。北朝鮮も関連組織のHPで不参加を表明しましたが、正式な通告ではないそうです。」
マスメディアの「スルー」ぶりも、きわめて不自然だが、この質問に対する丸川大臣の反応も「異様」なものだった。参加を公式に表明している国・地域がゼロであるという指摘の、事実確認をしているのに対し、「母数は?」という聞き直しに何の意味があるのだろうか? 「母数」というものがあるとしたら参加予定国・地域の数に他ならない。それは有田議員のツイートにある通りだろうし、そうした参加国・地域の母数はそもそも五輪相である丸川氏が把握しておくべきことであり、記者に尋ね直すのは筋違いである。
なぜ、これほど狼狽しているのか、理由はわからないが、有田議員のツイートの内容が事実かどうか、肝心な点については、自身では断定的なことは言わず、「組織委員会は少なくとも、そういうことは聞いていない、とおっしゃっています」と伝聞の形で曖昧に答えるにとどめている。
丸川大臣による冒頭報告、および大臣と各社記者の質疑応答の一部始終については、全編動画にて、ご確認いただきたい。