2021年5月14日(金)午前9時20分頃より内閣府本部庁舎会見室にて、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック大臣が閣議後の定例会見を行った。丸川大臣からの発言はなく、記者との質疑応答のみが行われた。
東京新聞の原田記者が、「オリンピック好きが多かった日本において、ここまで開催に疑念が高まっているのは、国、都、組織委員会から開催への科学的根拠や具体的な数字が示されていないからではないか。総理の会見を聞いてもそれが国民の疑問に答えていると思えない。大臣は政府がオリンピックを開催するための説明責任を果たしているとお考えでしょうか」と質問した。
これに対して丸川大臣は、以下のように答えた。
「まず原田さん、先日の質問、大きな記事で取り上げていただいてありがとうございました。私にとっても、オリンピックの根本に立ち返る大会になるんじゃないかなということを思っております。
特にコロナにともなう(開会の)延長で、大会経費の削減ということが大きなテーマになりました。今までのオリンピックはどんどんビジネスとともに肥大化しているということの中で、今回の大会ではおそらく、過去になかった水準でオリンピックファミリーを含む関係者の皆様方の接遇というものを大幅にカットして、まさにあのそもそも競技をし、同じフィールドのうえで、選手の皆さんが最高のパフォーマンスをお互いに見せるという、根本の部分に削りこんでいくという作業をずっとしております。
そういう意味でいうと、オリンピズムの原点にかえっていく大会というものを、私たち東京でまた始めている、ということの中から新しいオリンピックの姿がつくられてゆくのかな、という思いであります。
そして、あの、ご質問いただいた件ですが、私は私のできる立場から、できる限り数字をお示しして、国民の皆様にも何をやろうとしているのか、対策が、特にどこに重点を置こうとしているのか、説明をしているつもりです。
ただ、ご承知のように、私どもが全ての数字を持っているわけではない、組織委員会がお持ちになってる数字もあれば、民間の契約で出していただけない部分もあるわけで、それから東京都にももちろん投げかけしておりますが、東京都も、緊急事態宣言で「ちょっと待ってくれ」という部分もありまして、なかなかそれぞれのご事情もおありになる。これは、みんなでやっていることでありますので、相手が言ってくれるなという数字を我々が勝手に公表することもできません。足並みが乱れたという、世論のご指摘を受けるところもあります。
ここはしっかり、相手も準備が整って、皆さんに公表できるという状況になったところで、数字を公表させていただいたり、施策、対策が、こういうことをやりますということを言わせていただきます。これからもできる限り私たちの立場から安全安心を確信していただけるような対策について、なるべく早く国民の皆さま方にお伝えできるようにしていきたいと思っておりますので、また叱咤激励をいただければありがたいと存じます」。
次にTBS報道特集の金平茂紀氏と丸川大臣の間で、以下のような問答が行われた。
金平氏「今の最初の質問で、原点にかえるということをおっしゃいましたけれども、ちょうど今日で大会開催予定日まで70日という切羽詰まった事態ですけれども、大臣は先日の記者会見で、『分断された人々の間に絆を取り戻す』という、大会開催の意義をおっしゃったと思いますが、この発言については、開催の賛否が国民の間で大きく分かれている今、『絆』という言葉はどうなんだろう、むしろ使い方としてふさわしくないんじゃないか、という声がたくさん届いています。
たとえばJOCの理事の山口香さんは、『このまま大会を開催すれば負の遺産として歴史に残ってしまうんじゃないか』、それから、『アスリートにワクチンを優先するというのは倫理上の問題があるんじゃないか』ということまでおっしゃってます。今の時点での、開催の意義についてのご見解をお聞かせください」
丸川大臣「ワクチンの話は正直、態勢が整わないかぎりはなかなか容易ではないので、それは国民の皆さまもそうですけれども、アスリートの皆さんもそんなに簡単に態勢整わないと思いますので、実質優先するというほど早く打てるのかどうか、まだちょっと私達には何とも申し上げられない状況であります。ただ、スポーツを愛するドクターの皆さま方が、非常に熱心にご支援してくださっていることは事実でございますので、そういう話の中で、まだどうなるちょっとよく分かりませんけれども、世界のアスリートが、全て打ってくるということに、これでなろうかと思います。
ファイザーはすべてのアスリートに供給しますと言って、自分たちでその国まで持って行きますということまで言ってくださっているので、そうした中で日本の選手だけ打たない、ということになると、逆にコンタクト系のスポーツにおいては、相手の国から安心安全と思っていただけないという場合も生じてくるのではないかな、と思っております。
そして、いろいろな意見があることは承知をしておりますが、私は、今回の大会参加は、冒頭申し上げましたように、むしろコロナで、色々とビジネス目線でオリンピックのことを見ておられた方が、他の批判にむしろ答えるような形で、そういう部分がどんどんそぎ落とされていってる大会ではないかな、と思っております。
最終的に、どのような形で開催できるか、ということはよくまだわかりませんけれども、オリンピックを進めていくということがもしできるのだとしたら、それはやっぱり、特別な努力をした人たちの輝き、というのが私たちに勇気を与えてくれる、ということと同時に、私たちが勇気を持って一歩を進み、また、社会の活動を進めていくということの具体的な後押しになると考えています」
金平氏「『絆』、という言葉はふさわしかったですか?」
丸川大臣「その点については特別な考えはございません」
金平氏「これは関連してなんですが、『絆』という言葉にふさわしくないような実情を私どもは把握しているんですが。
オリンピックのボランティアの方の辞退が相次いで、それを補うような形で、有償で、オリンピックということを明示しないでアルバイトを募集しているということを私たちは把握しています。こういうありかたというのは、『絆』というような美しい言葉で表現されたことと相反するのではないでしょうか。こういったことでオリンピックが実現できるんでしょうか?」
丸川大臣「オリンピックの中には当然有償で働いていただく方もいらっしゃいます。ボランティアでおいでになっていただく方もおります。それは私の承知してる限りでは、どのような責任をもってその職務を果たしていただくかということによって異なろうかと思います。
ボランティアの皆さま方、テストイベントでもおいでくださってましたけれども、私たちも、ボランティアの皆さま方も、選手に接すれば、この前のあのバレーボールの試合、TBSじゃなかったでしたっけ? あと世界陸上もTBSですよね。放送されてたと思いますけれども、ああいうところにおいでになるボランティアの皆さま方の、選手のバブルの中に入られますので、こうした皆さま方には毎日検査をしていただく準備をしております」
ここで担当官が「本日は公務の関係で質問はあとひとつかふたつで会見を終わらせてもらう」と告げた。
また、丸川大臣は補足として、「ちなみに、ワクチンは強制ではありません。これは打ちたい方が打つということでありまして、これはアスリートでも、国民の方でも一緒です。これはぜひ徹底をしていただければありがたいなと思います。ですので、打ってこられない方でも安全に競技をして頂ける環境というのを最後まで貫いて作ってまいります」と述べた。
次にNHK記者が、「東京大会の事前合宿や交流事業で、各自治体の取りやめがあった数と理由などを報告お願いします」と質問した。
丸川大臣は、以下のように回答した。
「整理をいたしました。今朝までの報道も含めて、45の自治体で中止になったということを承知しております。
1000を超える事前キャンプのお願いというか、できればやりたいというのを把握をしている中で、非常に厳しい状況で、断念せざるを得なかった、というところがあるのは残念ですが、どういう理由かと言いますと、45のうち32の自治体が、相手国が事前合宿を行いません、というケースだとうかがっております。
相手国が合宿を一か所に集約した、例えば、アメリカとかブラジルはそういうケースがあるんですが、大きいので、いろんな所で競技をなさる中で、合宿をなさる中で、一か所に集約しますということを連絡してこられた、というのが3自治体でありました。
また練習施設が日程の変更があったり、あるいは別のことに使いたい、大学の合宿で使うとか授業で使うとか、そういうことでの練習施設の確保ができなくなったというのが3自治体と、このようになっておりまして、できるかぎり、特にホストタウンに登録してらっしゃる方々は、合宿はできないかもしれないけれども、事後の交流であったり、オンラインでの交流などということをやっていきたい、というふうにおっしゃっております」。
次いで、日本経済新聞記者が、「昨日の参議院の内閣委員会で、東京大会で監視員を置くとご説明されていましたが、あらためてお考えと意図をお知らせください」と質問した。
丸川大臣は、次のように答えた。
「『監視員』というのはたぶん、こういう風に、『』がついてたので、お聞きになった方がそのように表現されたのだと思いますけれど、実際には、もしルールを守って頂けない方がいる場合には、ルールを守って下さいね、ということを申し上げて、行動を変えていただく、ということをやってくださる方ということになろうと思います。
これは、選手の皆さんに関しては自分が競技に出るためにおいでになっているので、非常に自己管理を徹底しておられる、ということで、あまり心配はないだろうということは、多くの関係者がお話しをくださっています。
一方、競技に出ないけれども大会においでになる、関係者の皆さま方、ここは相当、申し訳ありませんが、行動の制限については厳しく見させていただくことになるのではないかと思います。組織委員会の職員の方は数千人、マックスで8000人ということをうかがっておりますので、そうした組織委員会の職員の皆さま方に、しっかりと行動管理の実効性を担保することについて、ご尽力賜りたいと思っております」。
これをもって、この日の会見は終了した。
会見の詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。