2021年5月27日(木)午前9時より内閣府本部庁舎にて、丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック大臣による定例記者会見が開催された。
まず、オリンピック・パラリンピック大臣として、ホストタウンの第30次登録で、北海道札幌市の相手国にカナダを追加し、これでホストタウン登録件数が計456件、自治体数としては528、相手国・地域数は184になったことが報告された。また、広島県広島市、府中市、廿日市市を共生社会ホストタウンに登録したことも告げられた。共生社会ホストタウンは現在計105件、109自治体となる。
次いで、男女共同参画担当相として、金銭的な理由で生理用品を買えない女性への支援についての報告がなされた。この問題への対策を講じている自治体が全国で255あり、主な取り組みは災害備蓄用の生理用ナプキンの無償配布などで、公共施設や小中高校の女子トイレや保健室で実施している例があるという。この調査結果については男女共同参画局のウェブサイトに掲載し、各地方公共団体にも共有して地域女性活躍推進交付金の活用と合わせてさらなる取り組みを進めていくとのことであった。
その後、会見参加記者との質疑応答が行われた。まず、東京新聞記者が、「大臣は以前から来日する大会関係者の削減を強く求めておりましたが、先日組織委員会が発表した資料によると、関係者の家族の参加が大会延期前の計画から減っていないようである」と指摘した。
丸川大臣は、以下のように答えた。
「私も武藤事務総長に確認を致しました。実は私達は、今回はコロナ禍での大会を迎えるにあたって、通常のオリンピックでは恒例となっているオリンピックファミリーの皆さまが配偶者を含む同伴者を帯同されるということをお断りしております。その数がまだ精査が済んでいないので、この中に含まれておりません。ですので、確実にまだここから減っていくということになります。
武藤事務総長がご自分の会見の中でこの3000人というのは大会運営上不可欠な人です、と自分で言ったんだけれども、あれは勘違いしてましたということで、まだ私たちが一番関係者の皆さまに、今回本当に大会に必要な人だけにしてほしいと言っている、かなりコアな部分のひとつである、配偶者を含む同伴者の帯同をやめるということについての数字が含まれておりません。精査され次第これをしっかりと反映をしていただくということになっております」。
日本テレビ記者が、「医学界で最も権威を持つ医学誌と称される『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』が、東京大会での新型コロナウイルス対策をまとめたプレーブックについて、『科学的な根拠にもとづいていない』と批判したことをどう受け止めるか」と問うた。
これに対して丸川大臣は、次のように答えた。
「このご指摘の論文は、もうすでに皆さんの取材上でお読みいただいていると思いますけれども、私どもがきちんと読ませて頂きましたところ、明確な事実誤認や誤解にもとづく指摘が見受けられます。
まず明確な誤認についてですが、論文ではアスリートへの検査頻度が明確ではないとしていますが、プレーブックにはアスリートに対しては原則として何日検査を実施するということが明示してあります。
また、WHOの協力を得るようにと指摘をされておりますが、プレーブックは五者協議に参加している我々も含めたメンバーに加えて、WHOも参加する、オールパートナーズタスクフォースというグループの知見も得て作成をされております。
また、文中、『試合中選手は携帯電話を持っていない。ウェアラブルをつけるべきだ』、というご指摘がございますけれども、私どもが理解している限りで言いますと、オリンピックの競技というのは衆人環視のもと、すべての競技が何らかの形で映像に収められますので、このご指摘はあまり合理的ではないのではないかと思っております。
誤解や一方的な認識にもとづいた指摘ということで申し上げますと、論文ではNBAやNFLのようなアメリカのプロスポーツにおける対応をスタンダードとして、これと比較する形で優劣を指摘されております。しかしながらIOCのバッハ会長が19日に開催されたIOC調整委員会の冒頭挨拶で指摘されましたように、コロナ禍においても世界のさまざまな国で430を超える国際大会が開催をされ、5万4000人を超えるアスリートが参加し、無事に大会が開催されております。こうした様々な大会の経験をもとに、東京大会の準備を進めているところです。
さらにですね、論文では、先日公表されたプレーブックバージョン2の内容について指摘をしているという事でございますが、先ほど申し上げたような事実誤認がございますのと、プレーブックは最終版も6月に公表することにしております。ですので、まだ検討途上の内容についてご指摘になっているということを、書いておられる側も理解をされていないのだろうと思います。
一方、論文がおっしゃっているのは、東京大会の中止を求めるものではなく、東京大会を開催するための緊急の行動が必要だ、という趣旨で書かれているものと認識をしております。
この論文は医学界でも権威がある専門誌に掲載されたものと承知をしておりますが、先月28日に公表した、変異株等にも対応した追加的な対策を含めて、科学的な知見をさらにブラッシュアップして、6月のプレーブックに反映したいと考えております。
国内外の専門家の皆様に、こうした東京大会における対策の内容が正確に伝わるように丁寧に説明をして参りたいと思います」。
毎日新聞記者が、「五輪の会場運営費に1日ひとり35万円の報酬という報道が出ています。4月2日の閣議後会見の質疑応答で、組織委員会が民間に委託する大会運営費の人件費単価が最大30万円で試算されていることを指摘すると、大臣は、『是非内訳を知りたい』とおっしゃいましたが、いま報道で実際に内訳などを御覧になって大臣は納得されてるのかどうか、あと、価格の妥当性、報道を受けて国民の批判の声が高まっていますけれども、監督大臣としてのお考えをおきかせください」と質問した。
丸川大臣は、以下のように回答した。
「まずですね、ご指摘の事業は組織委員会が民間事業者と契約しているものである、その契約内容については、組織委員会において説明責任を果たすべきものと考えております。
その上で申し上げますと、もう何度も説明しているのでみなさんご承知かもしれませんが、組織委員会がパートナーからなどの協賛金などによる、自ら収入を確保して実施する事業と、東京都や国から公費が投入される事業があります。このうち東京都や国が費用を負担する、公費によって支援がされる事業については、それぞれの事業の執行が完了した後で、我々も支払いをします。
このお支払いをする時に、組織委員会と東京都と国の三者による共同実施事業管理委員会でその執行をチェックするようになっております。私も組織委員会に確認をさせていただきましたところ、そのような『単価』と書いてあるけれど、実際はその人が率いるグループの人件費も含めて払われるのを、『一人』という書き方をして誤解を招いてるんだ、ということを言っておられたわけですが、別途それぞれの人にお支払いする時は、それぞれ契約を結ばれるんだそうです。
おそらく私たちがこの共同実施事業管理委員会で、実際にいざ公費を払うか払わないかという段になった時には、それも含めてチェックをするということでありますので、しっかりとその時点でチェックしたいと思います。かつ、国費があてられる部分については、会計検査院が合規性、経済性等の多角的な観点から適切な執行が行われているかなどについて検査を実施することになると承知しておりますので、当然ながら会計検査院の検査に対しては、組織委員会は適切に対応していただくものと認識をしております。
ですので、最終的なチェックの時にはきっちりとチェックされるということを踏まえて、組織委員会が適切に対応されるべきであると考えております」。
毎日新聞記者は質問を重ねようとしたが、進行担当者にそれを阻まれた。
続いて、産経新聞記者が、「東京大会での選手へのワクチン接種についておうかがいします。6月1日からIOCより無償提供されるワクチンの選手への接種が開始されますが、選手の中には先に打つことの罪悪感や一般の国民を優先してほしいという声もあるのですが、接種は各団体のスポーツドクターが担当するなど、一般の国民への影響ないということをあらためて大臣より説明いただけるでしょうか」と質問した。
丸川大臣は、「今回の接種は各競技団体やスポーツドクターの皆様にお声がけをして、独自のネットワークの中で集めていただいた打ち手でお願いをしております。打ち手に関して言えば、いま自治体から声をかけているのではない方にご協力いただいているものと認識をしております。その上で、これだけ世界から、おそらく選手村に集まるアスリートの8割が、接種を行なってくる見込みになっている中で、最終的には副反応への懸念等もおありになると思いますので強制ではありません、義務でもありません、ご自身の選択でありますけれども、自分がベストで、最も良いパフォーマンスが出せるということをそれぞれにお考えいただき、また私どももいつでも相談に応じますし、スポーツ庁もその態勢を整えておりますのでご連絡をいただければと思います。そうしたことで選手の気持ちやあるいは競技に向けた姿勢といったものをサポートしていけたら、と思っております」と答えた。
IWJ記者は、「五輪中止の権限はIOCにのみある、という不平等条約は事実なのか。戦争にも匹敵する今回のコロナ禍は日本側にとって不可抗力であり、賠償は免責されるべきではないか。日本政府はこの不平等条約ともいうべき契約を公開して国際世論に訴え、今回は中止でも賠償金をなくすか、最小限度に抑える交渉努力をすべきではないか。開催強行後にコロナ第5波がきて、犠牲になる人が出たら、その責任は開催強行を迫ったIOCにある。日本国民がIOCに賠償を求めたら、日本政府はそれを支持あるいは支援するか」との問いを用意して挙手し続けたが指名されることはなかった。
詳しくは全編動画を御覧いただきたい。