2021年6月22日、東京都千代田区の東京都医師会館で、東京都医師会による緊急記者会見が開かれた。
東京都医師会は6月18日付けで、田村憲久厚生労働大臣、丸川珠代東京五輪担当大臣、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会、小池百合子東京都知事に対し、「オリンピック・パラリンピック開催についての意見書」を提出していた。
尾崎治夫・東京都医師会会長は冒頭、「東京オリンピック・パラリンピックに向けて東京都医師会として、きちっとした警鐘を出すべきであるというお話があって、こうした形で18日に出させていただいた」と、意見書提出の趣旨を説明した。
質疑ではNHKの記者が「オリンピックの競技会場では酒類の提供を検討をしているということですが、このことを医師会はどのように受け止めているでしょうか?」と質問した。
それに対して、尾崎会長は「感染症対策の面から言っても、オリンピック開催、私もアスリートファーストとしてやって欲しいというふうに考えていますけども、やはり観客をどうするか、そこでアルコールを提供するのはどうするかといった、競技と直接関係あるのかなというふうに思うわけで、やはりここは見直すなりしていただきたいというふうに思っています」と、競技会場での酒類の提供には反対する立場を示した。
その後、大会組織委は会場内での飲酒、アルコール飲料の持ち込み禁止と、会場でのアルコール飲料を販売しないことを発表した。
- チケットホルダー向け新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン (Ver.1 2021年6月23日)(TOKYO2020)
会見でIWJ記者は、選手村で酒類の持ち込みが禁止されていないことや、避妊具の配布を組織委員会が決定したことについて、感染拡大の観点から尾崎会長に以下のように質問した。
「先日、来日したウガンダの選手がワクチンを2回接種していたにも関わらず、新型コロナに感染したことが報道されております。ワクチン接種は重症化リスクや感染拡大を予防する効果はありますが、万能であることはないと思います。
- 五輪ウガンダ選手団、2人目のコロナ感染 泉佐野市の宿舎で待機中(毎日新聞、2021年6月23日)
また、五輪期間中、選手村への酒類の持ち込みを禁止しないということや、避妊具の配布などを組織委員会が公表しています。
- 選手村におけるコンドームの提供について(TOKYO2020、2021年6月22日)
スクリーニング検査から漏れた選手が入国し、その選手が選手村で酒類を含むパーティーや、濃厚接触をすることも考えられます。
組織委員会のこの決定は、バブル内のクラスターの発生する確率や、感染拡大を高めるだけでなく、バブルの中に30万人の国内関係者が出入りするといわれている中で、バブル外にも感染が拡大する可能性があると思いますが、尾崎会長はどのようにお考えでしょうか?」
- 五輪選手の「バブル」は効果なし? 国内から30万人が出入り、ワクチン用意は2万人分(東京新聞、2021年6月4日)
これに対して尾崎会長は、以下のように答えた。
「今、おっしゃったように、そういう予想の通りだと考えています。
確かにワクチンは、従来のインフルエンザのワクチン等と比べても有効性が高く、重症化予防だけではなくて感染そのものもある程度防ぐという予測もされますけども、万能でないことは確かですよね。ワクチンを2回打ったから絶対に大丈夫だということは絶対にないと思います。
リスク管理の上からは、なるべく感染の機会があることは避けた方がいいわけですよね。何が大事かといえば、選手が本当に安全な中で力を発揮して、競技ができるということが最優先ですよね。
本当に守るべきであるのはどこなのかということを明白にして、それ以外のいろんな、不特定な感染を広げるような要素はやっぱり避けながらやっていくということが本来ではないかと私は思っています」
尾崎会長は、あらためて五輪を契機に感染拡大をさせないために、必要最低限に縮小して開催すべきとの姿勢を示した。