2022年5月24日、東京都千代田区の司法記者クラブで、「安保法制違憲・国家賠償請求訴訟」の控訴審判決言渡し期日後の記者会見を、原告側弁護団が行った。
同訴訟は、安保法制の閣議決定と国会での可決成立、および自衛隊の駆け付け警護のための南スーダン派遣、海上自衛隊護衛艦による米海軍艦船の武器等防護が、憲法前文、9条、96条等に違反し、これらにより「平和的生存権」「人格権」及び「憲法改正・決定権」が侵害され、精神的苦痛を被ったとして、国に対して原告それぞれに慰謝料10万円(+延滞損害金)の支払いを求めて東京地裁に提訴されたもの。
2016年4月26日に第1次提訴(原告計457名)、同年11月22日に第2次提訴(原告計865名)、2017年8月10日に第3次提訴(原告計268名)が行われたが、2019年11月7日の判決で請求は棄却された。
このため、2019年11月20日に、慰謝料各1万円(+延滞損害金)として堀尾輝久氏ほか872名が東京高裁に控訴した。しかし2022年5月24日当日の東京高裁の控訴審判決で請求は棄却された。
会見では、古川健三弁護士の司会で、岡田尚、福田護、棚橋桂介、伊藤真の各弁護士が登壇。上訴することを明言した。
福田弁護士は「今日の判決は、一言でいうと責任逃れ判決」だと批判した。「司法の役割を自分で果たさずに、国会に押し付ける」「(各人の)信念の問題だということで、法律問題ではないとしてしまっている」と指摘。「安保法制の法律に正面から向き合う姿勢を取らずに、他の国民、原告や国会にボールを投げてしまっている」と断じた。
さらに福田弁護士は、この訴訟で国家賠償請求を求める根拠とした「平和的生存権」「人格権」「憲法改正決定権」について、判決は、いずれも「侵害されていない」と判断したとして、詳述した。
たとえば、安保法制で「戦争への恐怖と不安」に直面させられることが、「人格権」の「平穏生活権」の侵害だとする主張に対して、判決は「憲法9条によって保障されてきた平穏な生活が破壊されたと原告ら控訴人らは感じていると主張しているが」「政治的な信条、あるいはそういう強い信念を傷つけられる、そういう精神的苦痛だと、原告らの主張は理解される」とした。
だから、人によって違うので、代表民主制の多数決原理では「社会的に受忍すべきもの」だというのである。
福田弁護士は、「憲法問題ではなくて、個人の受け止め方、考え方の問題」と「代表民主制の問題」に「すり替えられて」しまっていると批判した。
会見内容について詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。