コロナ禍を口実に改憲による緊急事態条項の導入は不要!政府による人災に苦しめられたコロナ禍を検証!~岩上安身によるインタビュー第1061回 ゲスト 弁護士 永井幸寿氏インタビュー 2021.12.20

記事公開日:2021.12.22取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

 12月20日午後7時より、「コロナ禍を口実に改憲による緊急事態条項の導入は不要!政府による人災に苦しめられたコロナ禍を検証!」と題して、岩上安身による永井幸寿弁護士インタビューを実施した。

 冒頭、岩上が、自民党の茂木敏光幹事長らが、自民党改憲案の本丸は「緊急事態条項」だと堂々と言い始めたこと、高市早苗氏が自民党政調会長に就任したこと、安倍晋三元総理が12月1日「台湾有事は日本有事」と発言したこと、麻生太郎副総理が任期中に「日米で一緒に台湾を防衛しなければいけない」(7月)と発言したことなどを挙げ、2016年の集団的自衛権問題の時から見ると現在は、自民党改憲案と緊急事態条項に対する危機意識が薄くなっているのではないかと問題提起した。

 永井弁護士は、「コロナ対策で政府は国民の自粛に頼るばかりで何の有効な手立ても打てないまま、東京五輪を開催した。内閣支持率が急落した菅義偉総理は退陣に追い込まれたが、菅氏が辞めたことで自民党総裁戦に争点が移ってしまい、何の検証もされないままだ」と嘆いた。

 永井弁護士は、『世界』2021年12月号(岩波書店)に「検証 コロナと法」という記事を発表した。インタビューでは「検証 コロナと法」に沿って、市民の自由や民間施設運営の制限にかかわる問題を中心に、5点の問題についてお話をうかがった。

岩上「先生は『世界』12月号に『検証コロナと法』という論文をお書きになった。コロナと法というお話と、今、自民党は最優先は緊急事態条項と言い切り、台湾有事とセットで進めようとしている。

 でもメディアは緊急事態条項を扱えないんです。扱うと首が危うくなるから。米中戦争が現実になったとき、同時に日本は参戦することになります。(この台湾有事の話と)緊急事態条項とがつながって進んでいることがほとんどの人に伝わっていない。コロナを口実に進めとしている卑劣なやり方を先生が論破しています」

永井氏「政府のコロナ政策は基本的に国民の自粛に頼り、国民の反対を押し切りオリンピックを強行して。内閣支持率が下がって菅内閣は退陣したんですが、その後の検証と審判が飛んでしまいました。

 英国などはちゃんと検証しているんです。超党派で与党の議員も入っているんですが、ボリス・ジョンソン政権のコロナ対策の検証をして、数百ページに及ぶ報告書をまとめているんですね」

岩上「検証をするどころか、日本は野党が求めた国会を開きませんでした」

永井氏「いわば『国難』なんですから、国会を開かないといけなかったんです。でも、野党が求めても開かなかった。憲法53条違反です」

岩上「『1.患者受け入れを医療施設に強制できたか』と問題提起されています。医療体制が逼迫して自宅療養を余儀なくされ、大阪は死亡者数ワースト1位、東京も、沖縄も大変でした」

永井氏「日本のコロナ対策の1番の問題は医療の逼迫でしたね。日本は人口あたりの病床数は世界一多いのに、コロナ病床の受け入れがわずか1%未満。英国22.5%、米国12.2%に比しても極めて低い割合です。

 まず、日本の病院は民間が主体で、公的な医療機関が少ないので、『コロナ病床の受け入れを政府が強制できない』というのは誤りです。飲食店は私的企業ですが、強力な事業制限を受けていますよね。民間の医療機関にも公的規制を行うことは可能なんです」

岩上「尾身分科会会長の病院(独立行政法人地域医療機能推進機構JCHO、ジェイコーが管轄する公的病院)の問題だけではないんですね」

永井氏「一般的には公的病院の問題と思われていますが、そうではないんです。民間の病院であってもコロナ患者の受け入れを要請することは可能なんですね。お医者さん達は使命感を持っていますから、環境が整えば受け入れてくれるところもたくさんあります。

 問題になるのは病院の営業の自由、つまり『経済活動の自由』という人権を制限できるかどうかなんですが、憲法12条・13条でも、他の人の人権との調整のために、必要最小限度の制約を受けることが認められています」

岩上「13条には、『すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』とあります。この、『最大の尊重』をされたのかと。

 高市(早苗)さんは『公共の福祉』を『公共の秩序』に変えたいと。どのような危険性がありますか?」

永井氏「国家の利益『国益』のために人権を制約したいということ。人と人の関係でお互いの人権を調整するのではなく、政府の利益のために人権が制約されるということで、『お国のために』で、大変危険です」

岩上「圧倒的な権力をもつ、強者の秩序に従えということになるんですね」

永井氏「新型インフル特措法31条で、『都道府県知事は医療関係者や病院に対して医療行為を要請ができる』としています。まずは、お願いができるんですね。

 それでも、正当な理由なく要請に応じないときは、『厚生労働大臣及び都道府県知事は医療行為を行うように指示できる』指示ができるんです。法律では『指示』は事実上の命令のことです。罰則はないですけれど」

岩上「これ(新型インフル特措法)をどうして、政府も知事らも使わなかったんですかね? ここまでくると意図的なものを感じてしまうんですけれども」

永井氏「まあ、そこまでは言えるかどうか…。

 国や都道府県は、命令するだけではなく、ちゃんと『医療関係者の生命及び健康の確保に配慮し、危険が及ばないよう必要な措置を講じなければならない』(31条4項)とか、『実費を弁償しなければならない』、『コロナ対策に協力する医療機関、医療関係者に対する支援その他必要な措置を講ずる』など費用の支払い(62条2項)とか、損害の補償(63条1項)まできちんと定められているんです」

岩上「これが嫌で動かなかったんでしょうか? 全然信用できないんですよ、国は。ワクチンの副反応で亡くなったら4000万円補償するとあれだけ言っておきながら、ワクチンでお亡くなりになった方に因果関係はないとしてずっとたなざらし」

永井氏「分かりませんけれども、とにかく『法』は完備されていたんです。すごくいい法律でしょう?」

 永井氏は、民間の病院がコロナ患者を受け入れるリスクはもちろんあるが、180床のコロナ病床を受け入れた神奈川県の仁厚会(じんこうかい)病院の対応を紹介した。

 仁厚会病院では、県立病院の専門医との間で医師と医師のリモートによる助言を受けたり、医療機器を国からの補助で、看護師の人件費は県の特別手当で賄ったりしていた。こうした財政の裏付けと自治体や医療機関との連携も「新型インフル特措法」に書き込まれているのである。

永井氏「地方公共団体は、『関係機関が実施する新型インフルエンザ等対策を総合的に推進する責務』(3条4項)とも定められており、対応することが『責務』だとされています。やらないといけないんです」

岩上「コロナ対策のボトルネックになったのは保健所だという指摘があります。ずっと減らしてきたんですよね」

永井氏「はい。保健所は1992年には852ヶ所ありましたが、2019年には472ヶ所と45%も減らされました。

 東京都は1995年には53ヶ所あったんですが、今は1区ひとつで23ヶ所しかありません。

 大阪市などは、24ヶ所が1ヶ所に減らされています。これでは医療崩壊しますよね。当然です。

 こうしたことも国会できちんと検証されるべきです」

岩上「維新はこんなことをやってきているということです。保健所を半減させるのは失政ではないでしょうか?こういうことも国会で再検討すべきですよね」

永井弁護士「新型インフル特措法は、感染症は一種災害に似たところがあるので、実は、『災害対策基本法』に倣ってつくられているんです。『災害対策基本法』は被災現場の都道府県が主体ですが、コロナ対策も都道府県知事が『リーダー』としての自覚を持って、特措法を活用しないといけませんね」

岩上「確かに、知事のリーダーシップが光った県もありました」

永井弁護士「神奈川県もよくやっています。去年の5月に神奈川県は臨時の医療施設を作ってお医者さんを供給しています。臨時の医療施設も作って。神奈川モデルですね」

 続いて、第2の問題点「臨時の医織施設を設置できたか」、第3の問題点「過去の教訓(第1波の教訓)を生かせたか。PCR検査体制強化、国立感染症研究所、保健所の人員増加、米国CDC等を参考にした組織強化」、第4の問題点「憲法に緊急事態条項は必要か」、第5の問題点「ロックダウンは憲法上認められるか」について、関連法の条文を紐解きながらじっくりとお話をうかがった。

 詳しくは全編動画で是非御覧ください。

■ハイライト

  • 日時 2021年12月20日(月)19:00~21:30
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

 自民党の下村博文前政調会長は、「憲法に緊急事態条項がないことが(コロナ対応の)スピード感を鈍らせている」、「日本では憲法上ロックダウンが認められていないので、緊急事態条項を設けるべきである」と、まるで憲法に緊急事態条項がないから、コロナ対策が失敗したかの如き発言をしている。

 しかし、永井弁護士は、コロナ対策には「新型インフル特措法」があり、さらに言えば「コロナ特措法」をつくればまったく問題はなかったと主張した。なぜなら、特別定額給付金も「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」にもとづく要綱で実施、持続化給付金は会計法22条に基づく政令で対処するなど、日本政府は行政的行為(通知、告示、要綱)等の行政措置で対応してきたからである。

 永井弁護士は、コロナ対応に緊急事態条項が必要だというのであれば、国会の法律の制定を待ついとまがなかったかを検討すべきだと主張、実態としては野党も協力的で国会開催中に十分対応できたと指摘した。

 永井弁護士は、コロナ問題が山積するにもかかわらず、2020年6月18日に国会を閉会してしまい、その後開かれた国会も野党の要請にもかかわらず、一切会期延長しなかったこと、野党が憲法53条にもとづいて総議員の4分の1で臨時国会を要求しても(2021年9月2日)、憲法に違反して内閣は召集を決定せず放置するなど、自民党政権の「違憲」対応を批判した。

 以上のように、永井弁護士はコロナ対応において、「法律の制定を待ついとまがなかったという事実はない」と論じた。

 なぜ、自民党政権は「違憲」であるのに、何の処分も罰も受けないのか?永井弁護士は、その理由は国家の統治に関わる行為は司法が及ばないとする「統治行為論」の実績を作ってしまった砂川判決に遡ると指摘した。

 日本国憲法81条には以下のようにある。

 「第八十一条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」

 「統治行為論」があるために、この81条が事実上無効化されているのである。

 また、「新型インフル特措法」が定める責務を無視してしっかりとした医療体制の構築をしてこなかった地方公共団体は、自宅療養を余儀なくされるなどして命を落とした人が訴訟を起こせば、国家賠償法(地方公共団体も含まれる)によって賠償をしなければならない可能性がある、と永井弁護士は指摘した。

 結局、以下のような問題があり、コロナ対策は「できなかった」のではなく、「しなかった」のだというべきである。

1)コロナ対応のための法制度は完備されていた。
2)しかし、問題は国や地方公共団体が法律に従った対応を行わなかった。
3)コロナ対応について充分な事前の準備がなかった。
4)国会を常時開催して法の審議をしなかった。
5)この間のコロナ対策の検証がされていない。

 永井弁護士のインタビューから、コロナ対策に「緊急事態条項」はまったく必要ないし、「むしろ濫用の危険があるので創設すべきではない」ということが明確に伝わってきた。

 大変スリリングな論点がいくつも出たインタビューであった。

 ぜひ、全編動画で詳細を御覧ください。

 なお、続編は23日木曜日の午後6時より生配信される予定である。

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