憲法記念日に安倍総理が櫻井よしこ氏らが主催する「5.3憲法フォーラム」に送ったビデオメッセージをIWJが全文文字おこし!コロナ禍に乗じて「緊急事態条項を議論すべき」との「偽論」に要注意! 2020.5.4

記事公開日:2020.5.4 テキスト
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(IWJ編集部)

 2020年5月3日の憲法記念日に、ジャーナリスト櫻井よしこ氏が共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」と「民間憲法臨調」が共催で、「5.3憲法フォーラム」を、YouTubeで配信した。テーマは「憲法は国民の命と生活を守れるのか!新型肺炎と中東危機」。新型肺炎と中東危機では「危機」といってもまったくジャンルも性質も異なるが、ここでは一緒くたに並列されている。フォーラムの冒頭では、安倍晋三総理によるビデオメッセ―ジが流された。

 例年この「憲法フォーラム」は、千代田区砂防会館等で多数の聴衆を集めて行われていたが、今年は新型コロナウイルス感染防止対策と称して、オンライン上での開催となった。

 出演者は、櫻井氏のほかに、弁護士であるケント・ギルバート氏、伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授(元海将)、田久保忠衛・杏林大学名誉教授(日本会議会長)、西修・駒澤大学名誉教授、百地章・国士舘大学特任教授など、改憲論者、右派活動家の面々がずらり。美しい日本の憲法をつくる国民の会事務総長である打田文博氏による声明文読み上げなどもあった。

▲「5.3憲法フォーラム」より

 安倍総理はビデオメッセージで、新型コロナウイルス感染対策として全国に緊急事態宣言が発令されていることに触れた上で、「しかしながら、そもそも現行憲法においては緊急時に対応する規定は、『参議院の緊急集会』しか存在していないのが実情」と強調した。

 続けて安倍総理は、「今回のような未曽有の危機を経験した今、緊急事態において国民の命や安全を何としても守るため、国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗りこえていくべきか、そしてそのことを憲法にどのように位置づけるかについては、極めて重く、大切な課題であると私自身改めて認識した」と説明した。

 その上で、「自民党がたたき台として既にお示ししている改憲4項目の中にも『緊急事態対応』は含まれておりますが、まずは国会の憲法審査会の場でじっくりと議論をすすめていくべきであると考えます」と述べた。

 まるで、「新型コロナウイルス特措法にもとづく緊急事態宣言」と、「自民党改憲4項目の緊急事態対応」が同じものであるとの誤解を与えるような言いまわしである。この2つが全く別物であることは明白だ。何よりも、当の安倍総理本人が「別物である」と言っているのである。その事実は重い。

 安倍総理は3月13日に新型コロナウイルス対策の改正特措法が成立したことを受け、翌日14日に記者会見を行った。岩上安身は会見で、安倍総理に「今回の特措法の非常事態宣言がひとつの布石となって、国民を慣らし、その後にこの緊急事態条項を導入するのではないか、という懸念があります。これは大変強力な内容、安倍独裁を可能にするような内容を含んでおります。その点につきぜひお答え願いたいと思います」と質問。それに対して安倍総理は次のように答えた。

 「これとですね、自民党の改憲案とは全く別のものであると思います。そもそも憲法改正というのは、3分の2の発議があって、さらには国民の皆様の国民投票によって、過半数の皆様の賛成を得て、成立するものであります。さらに国民の皆様が決めるものであるということを、どうか理解をいただきたいと、このように思います」

 安倍総理は「特措法にもとづく緊急事態宣言」と「自民党改憲案の緊急事態条項」は「全く別のものだ」と言いながら、改憲については、「国民の皆様が決めるもの」と答え、「安倍独裁」を否定しなかったのである。その「民意」が、今、着々と形成されつつある。

 多くの人が緊急事態条項の危険性を知らない。他方で、現在の緊急事態宣言では生ぬるいと、より強力な規制を求める声が高まっている。

 共同通信の世論調査によると、個人の権利を制限できる緊急事態条項を憲法に新設することに51%が賛成と答えている。(改憲に至っては6割が賛成)

 以下に、安倍総理のメッセージ全文を掲載する。


 YouTubeをご覧の皆さん、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。

▲安倍総理のビデオメッセージより

 新型コロナウイルス感染症が全世界で猛威を振るっています。まずもってこの感染症によりお亡くなりになられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、現在も闘病中の方々の一刻も早いご回復をお祈り申し上げます。

 そして新型コロナウイルスとの闘いのまさに最前線で強い責任感を持って、今この瞬間も一人でも多くの命を救うため、献身的な努力をしてくださっている医療機関・医療関係者の方々に心より感謝を申し上げます。

 国内におけるまん延防止のため、緊急事態宣言を発出してからまもなく1か月、この間、国民の皆様には、人と人との接触機会を8割削減するとの目標の実現に向け、ご協力をいただいておりますことに感謝申し上げます。

 今年の「憲法フォーラム」につきましては接触削減という政府の要請を踏まえ、YouTubeを使ったライブ中継にしていただいたこと、大変ありがとうございます。

 さてYouTubeをご覧の皆さん、改めまして憲法改正の実現に向けてそれぞれのお立場で精力的に活動されている皆様に心から敬意を表したいと思います。

 自民党は立党以来、憲法改正を党是としてまいりました。言うまでもなく、国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義の基本理念は今後も決して揺らぐことはありません。

 その一方で現行憲法も制定から70年余りが経過し、時代にそぐわない部分、そして不足している部分については改正していくべきではないかと考えております。

 例えば今般の新型コロナウイルスという未知の敵との闘いにおいて、我々は前例のない事態に繰り返し直面しております。政府においては国民の命と健康を守るため、全国に緊急事態宣言を発出し、政策を総動員して各種対策を進めています。ウイルスの感染拡大防止に向けて、国民の皆様には外出の自粛や休業要請への対応など、多大なるご協力をお願いしています。また国家の機能維持という点でみれば、国会審議のあり方についても、与野党で協議し、様々な工夫がなされてきたところです。

 しかしながら、そもそも現行憲法においては緊急時に対応する規定は「参議院の緊急集会」しか存在していないのが実情です。

 今回のような未曽有の危機を経験した今、緊急事態において国民の命や安全を何としても守るため、国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗りこえていくべきか、そしてそのことを憲法にどのように位置づけるかについては、きわめて重く、大切な課題であると私自身改めて認識した次第です。

 自民党がたたき台としてすでにお示ししている改憲4項目の中にも「緊急事態対応」は含まれておりますが、まずは国会の憲法審査会の場でじっくりと議論をすすめていくべきであると考えます。

 そして憲法第9条です。今回の新型コロナウイルスへの対応では述べ1万7千人をこえる自衛隊員が対応にあたり、この瞬間も各地の自衛隊病院等で感染症患者の救護にあたるとともに、空港での検疫、自治体職員への感染予防のための教育支援を行っています。

 そして一連の対応を通じて従事した隊員からはこれまで一人の陽性者も出していません。

 事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務める。私は自衛隊の最高指揮官として彼らのプロフェッショナリズムに常に胸を打たれています。

 本年1月からは中東海域における情報収集活動も始まりました。中東海域は年間数千隻の日本関係船舶が航行し、我が国が消費する原油の約9割が通過する、国民の生活を支える大動脈・命綱です。2月には私は護衛艦「たかなみ」に乗艦し、中東の地に向かう隊員たちを直接激励する機会を得ました。使命感に燃え、整然と乗り込む隊員の姿を目の当たりにし、大変誇らしく思いました。

 他方で、きわめて残念だったことは隊員のご家族が見守る一角に「憲法違反」とのプラカードが掲げられていたことです。隊員の子供たちももしかしたらそれを目にしたかもしれない。どう思っただろうか。そう思うと言葉もありません。

 創設以来何十年にもわたり続く「自衛隊は違憲」というおかしな議論に終止符を打つためにも自衛隊の存在を憲法上明確に位置付けることが必要です。全国25万の自衛隊員諸官が強い誇りを持って任務を全うできるよう、憲法にしっかりと私たちの「自衛隊」を明記しようではありませんか。

 3年前のこの「憲法フォーラム」でのビデオメッセージにおいて、私は「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と申し上げましたが、残念ながらいまだその実現にはいたっておりません。

 他方、この間、先の参議院選挙において我々自民党は国民の皆様から「憲法改正の議論を前に進めよ」との力強い支持をいただき、また、各種の世論調査においても「議論を行うべき」という回答が多数を占めてきております。憲法改正への挑戦は決してたやすい道ではありませんが、必ずや皆さんと共になし遂げていく、その決意に揺らぎは全くありません。

 憲法改正の主役は国民の皆様です。どの項目をどのように改正するのか、あるいはしないのか、国民投票によって国民の皆様が決めます。ですから、多くの国民の皆様が憲法改正について自らの問題として大いに議論をし、理解を深めていただきたい。本日のフォーラムがその大きな役割を果たすことを期待しています。憲法改正に向けて引き続き頑張ってまいりましょう。


 安倍総理に続いて、ビデオメッセージで登場した櫻井氏は、時に満面の笑顔を浮かべながら、次のように語った。

 「国民はこう思っていると思います。『安倍総理よ、もっと自信をもって強い措置を打ち出してほしい!少しくらい私権が制限されても、私たちはこのコロナウイルスに打ち克ちたい!』。そのような思いだと思います」

 「我が国の憲法も、憲法から生まれる法律も緩いかたちになっていますから私権を制限したり、自由を制限したりすることはなかなかできません」

 このように櫻井氏は、日本国民が待ち望む「自民党改憲草案の緊急事態条項」ともいえる論を展開。「極めて近い将来、安倍政権のもとで、憲法改正をやり遂げるということを、ここでもう一回誓いましょう。私もその先頭に立ちます」とメッセージを締めくくった。

 櫻井氏は、2016年の同じ憲法集会でも、東日本大震災では現行憲法のために助けられる命が助けられなかったと、次のようにスピーチした。

「あの3.11で自衛隊、消防隊、警察、民間のボランティアの人々、どれだけ全力を尽くしたか。(しかし)彼らがどんなに頑張ってもできなかったことが、いくつもいくつもいくつもありました。問題は、憲法にその元凶があるのではないでしょうか。

 緊急の道路をつくるのに、荷物、車、がれき、片づけようとしても、現場はとまどいました。

 なぜならば、それは憲法で財産権の保障などをしていて、もしかしたらこれは、(撤去すれば)憲法に抵触するのではないか、そのような思いを現場の人が現に持ったんです。複数の証言があります。

 その結果、多くの対策が遅れました。助けることのできる命が助からなかった。このようなことを繰り返してはなりません」

 この櫻井氏の発言に対して、永井幸寿弁護士は「そんな話、まったく聞いたことがない」と断言し、次のように櫻井氏の発言を否定している。

 「「災害対策基本法64条2項により、市町村長は、災害が発生した場合、応急措置を実施するために緊急の必要があると認めるときは、現場の災害をうけた工作物または物件で、当該応急措置の実施の支障となるものの除去、その他必要な措置をとることができます。

また、同法64条7項により、現場に市町村長又はその委託を受けた職員がいない場合,またはその要請があった場合、警察官は市町村長の職権を行うことができます」

 また、ケント・ギルバート氏はアメリカと日本を比較し、「日本の緊急事態宣言がアメリカと異なっているのはあまり強制力をともなわないということ。日本国憲法には他の国々にある、非常事態にあたって、政府が民間の私権を制限して行動できる緊急事態条項がない。それでタイムリーにとるべき措置がとれるのか。私は今回日本の憲法改正の必要性を感じた。日本は脆い国ですね」などと、皮肉を込めて語った。

 ここであらためて強調しなければならないことは、「自民党改憲草案の緊急事態条項」と、「新型コロナウイルス特措法にもとづく緊急事態宣言」とは全くの別物だということである。

 「自民党改憲草案の緊急事態条項」は、同党が2018年3月にまとめた「改憲四項目」の一つである。戦争・内乱・大災害などの場合に、本来法律で定めるべき事項を、国会の審議を経ずに内閣が政令で定められるといった規定や、国会議員の任期を延長できるといった特例などを含んでいる。

 自民党改憲案の緊急事態条項には、次のような多くの問題点がある。

・国会の事前同意が必要ない。
・法令と同じ効果を持つ政令の制定が可能になる。
・総理大臣が予算措置を行える。
・「緊急事態」の期間に制限がない(際限のない延長が可能)。
・解除の規定が曖昧。
・内閣は衆議院の任期を延長することができる。
・地方自治がなくなる。
・司法も行政に遠慮せざるを得ない状態になる。
・集会・結社・言論・報道の自由が制限されるおそれがある。
・全国民が公権力に従わなければならない状況になる。

 つまり、内閣に全権力を集中させ、国会を空洞化し、国民の自由や権利といった、基本的人権を制限できる点において、「新型コロナウイルス特措法にもとづく緊急事態宣言」とは大きく異なるのである。

 IWJは「これこそナチスの手口!緊急事態条項(対応)」と題し、特集ページを掲載しています。憲法学者である樋口陽一東京大学名誉教授、長谷部恭男早稲田大学教授、そして石田勇治・東京大学教授など数々の識者に、IWJ代表の岩上安身がインタビューを行っている。下記の特集ページもぜひ、この機会にご覧ください。

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