9月10日に、自民党総裁候補の1人である高市早苗氏が、お昼のテレビ番組「大下容子のワイド!スクランブル」に出演した際に、日本が他国の領空内で核爆発を起こす可能性を示唆する衝撃的な発言をした。
どう番組で高市氏は中国を念頭に置き、「強い電磁パルスですとか、いろんな方法でまず相手の基地を無力化する。これで一歩遅れたら、日本は悲惨なことになると思います」と発言した。
相手基地を無力化するほどの電磁パルスを起こすには、相手基地の上空で核爆発を起こすしかありません。高市氏の発言には、日本国の核保有と、相手国に対する核の先制使用、民生への無差別で破壊的影響、報復攻撃の脅威と多くの問題がある。
IWJは、安全保障関連の識者や他の総裁候補に、高市氏の「電磁パルスで相手基地を無力化」発言をどう思うか、質問をした。
2021年9月14日、元防衛省キャリアで元内閣官房長官副長官補の柳澤協二氏に岩上安身がインタビューした際、高市氏発言についてもうかがった。
岩上「(高市氏の発言は)いかがなものか、過ぎるんですよね。どうでしょうか?」
柳澤氏「まったくそのとおりだと思います。私も兵器マニアではないけれども。漫画の読みすぎなのかもしれないしね。
今、アメリカが考えているのはこんなことではなくて、中国本土にあるミサイルの管制施設を潰そうとするわけですね。コントロールの施設を。ミサイルの本体そのものを潰していくんじゃなくてね。
そのためには、たぶん巡航ミサイルでは地下のサイロなんか破壊できないから、中距離弾道ミサイルが要るねっていう論議になっていくわけですね。
そういうことが今、問題になっている時に電磁パルスの話なんかしていてもね。総理大臣としてアメリカにそんな話を持っていったら、相手にされないだろうなあ、と思いながら聞いているんですが。
『電磁パルスじゃなくて、中距離弾道ミサイルならいいの?』っていうと、今度は、それもそれで日本を舞台にした軍拡競争、ミサイル軍拡になるわけですから。かえって、先制攻撃のモチベーションがお互いに上がらざるを得ないという問題もあるのでね。
だから、そっちのもっと現実的な政策にもとづく議論をちゃんとやってかないといけないだろうなと思うんですね。
(核弾頭ではなく)通常弾頭で、一番シビアな、クリティカルな攻撃をするという使い方になるだろうと思うんですが。それに対する相手の行動はどうなるんだと」
岩上「報復ということですよね」
柳澤氏「そう。そういう軍事目標を、日本列島全体を要塞化して、そういう軍事目標をあちこちに置けば、どれが潰されるかわからないんじゃないの、という話になるが。
そういう『安全』ってあるの?っていうことですよ。つまり、どこに飛んでくるかわからない状態になって、結果としてバランスしますよねっていう話でいいの?ってこと。
軍事目標だけを攻撃してくるわけではないですからね。ちょっと逸れたらどうするのってこともあるし。そっちの方を、私は議論していかなければならないかなと思っています」
岩上「(その緊張の中で)どっちが核の引き金を引くのか、と」
柳澤氏「だから今まで以上に、米中対立の状況にあるが故に、核の先制不使用ということは、日本の安全にとって必要なことだと思うんですけれども」
岩上「米中対立の間で日本が巻き添えを食っていく、それこそ冷戦時代のドイツの立場に置かれるようなことになる前、もう少しのどかだった時に柳澤さんにお聞きしたのは、『日本に何発の核が撃ち込まれたとしたらアウトか』と。『5発で終わる』とお聞きしたことが忘れられないんですね。それは中国から見れば、そんなもの」
柳澤氏「戦争にならないです」
岩上「逃げ場も何もないじゃないですか。こんな小さな島国で。これは絶対に避けなければならない話なんじゃないかと思うんですが」