「辺野古新基地がいらない、ということにも完結した哲学がある! 一個大隊規模が沖縄にいることが抑止の計算上どんな意味があるのか?」元内閣官房副長官補・柳澤協二氏〜新外交イニシアティブ訪米報告会 2017.8.29

記事公開日:2017.8.30取材地: テキスト動画
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(取材:IWJ編集部 文:栗原廉)

特集 辺野古
※2018年11月11日テキストを追加しました。

 「これまで沖縄の問題をめぐっては、米国の議会・政府、そして軍の関係者とミーティングを行っても、議論がかみ合わないことが少なくなかった。しかし、今回の訪米では、密な議論を行う場を築くことができたという点で、第一歩だったと感じている」

 2017年8月29日、新外交イニシアティブ(以下、ND)事務局長を務める弁護士の猿田佐世氏は、東京都千代田区の弁護士会館で行われたND訪米報告会の中で、手ごたえを感じたことを率直に述べた。

 「今こそ辺野古に代わる選択を ~ワシントンでの発表を経て~」と題されたこの報告会では、2017年7月10日からワシントンでの活動に参加した猿田氏と、ND評議員で元沖縄タイムス論説委員の屋良朝博氏、東京新聞で論説兼編集委員を務める半田滋氏の3名が、訪米の背景と現地での提言内容を順に解説し、関係者からの反応をそれぞれ報告した。

▲新外交イニシアティブ訪米報告会

 続くパネルディスカッションでは、ND評議員で元内閣官房副長官補の柳澤協二氏が議論に加わり、沖縄を取り巻く国際情勢変化の分析と、沖縄県内や日本国内での今後の取り組みについて話し合った。

 IWJでは、この報告会の模様をテキスト記事と共にお届けする。「辺野古基地は必要ない」という可能性を軍事的に突き詰めた今回の報告について、基地問題について新たな視点を得る意味でも、ぜひご覧いただきたい。

記事目次

■ハイライト

  • パネルディスカッション登壇者 柳澤協二氏(ND評議員、元内閣官房副長官補)、屋良朝博氏(ND評議員、元沖縄タイムス論説委員)、半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)
  • コーディネーター 猿田佐世氏(ND事務局長、弁護士)

そもそも辺野古は米軍にとって必要なのか? ~米国側の目線に立った議論をするために始まった研究

 「辺野古をはじめとして、沖縄に米軍基地が集中していることが問題であることはわかった。しかし、それでは中国や北朝鮮の脅威に対して、私たちはどのように対応していけばよいのか?」

 報告会の冒頭で猿田氏は、これまで8年にわたって、沖縄の基地問題について米国の関係者と協議してきた中で、こうしたコメントを受けることが非常に多かったと振り返った。

 元来、沖縄の基地問題は民主主義や環境、社会正義といった観点で問題提起されることが中心であった。米国でも、沖縄の基地について関心を持つ関係者は、県民の負担について理解を示すことは多いという。

▲新外交イニシアティブ事務局長・弁護士 猿田佐世氏

 しかし、具体的にどうすれば良いのかという話題になると、そこで会話が止まってしまっていた、と猿田氏は言う。米国側は、中国や北朝鮮の脅威に対処するのに「沖縄の基地が必要である」という認識を持っており、基地の必要性と県民の窮状の両者がぶつかることで、議論が進まなくなってしまうのだ。

 それに対してNDでは、辺野古新基地が米軍の東アジアでの展開において、本当に必要と言えるのかどうかを問いかけ、辺野古を必要としない代替案について、3年をかけて研究してきた。研究成果は2017年2月に報告書としてまとめられ、今回の訪米は、代替案について米側のリアクションを確認するためのものであったという。

「沖縄の人口は2000人?」と聞かれた8年前からの進展。ペンタゴンの軍事専門家と3時間にわたる議論!

 米国では、猿田氏、屋良氏、半田氏が15件の関係者を訪問した。米国連邦議会には約500名の議員がいるが、訪問先は沖縄の基地問題に関する議論を行う、外交、軍事、防衛施設に関する委員会に所属する担当者が中心である。8年前、猿田氏が米国下院のアジア太平洋委員会という小委員会の委員長と面談した際、「沖縄の人口は2000人か?」と聞かれ、この問題が認識されていないことに驚いたというが、これまでの活動の甲斐もあって、今回の訪米では多くの議員とスタッフが事前に十分な知識を有していたという。

 また、現地で開催した講演会では、関連する市民団体や米国務省、国防総省の役人、そして日本のメディアからの参加が目立ち、定員60名を超えて立見の参加者もいたという。国防総省の専門家とは、この報告書をめぐって日を改めて3時間ほど議論する機会を得たという。

 ただし、このようなロビーイング活動は、すぐに米国側の方針転換に直結するようなことはない。そのため、過去にも翁長雄志沖縄県知事の訪米が、日本のメディアに「成果なし」などと批判的に取り上げられることもあった。しかし、猿田氏は、「こういう案もありますよ、と繰り返し米国で問題提起を行うことによって、これをサブリミナル効果のように浸透させていき、議論の土壌を築くことが肝要だ」とし、今後もNDでは同様の活動を継続すると述べて報告を終えた。

レッドカーペットを敷いて「お帰りはこちら」と海兵隊に出て行ってもらうために、辺野古の代替案を示す

 続いて屋良氏が、NDによる辺野古の代替案について報告した。現在、沖縄に駐留する米軍は、その内の半分がグアムなどに撤退することが決まっている。ただし、米海兵隊の31 MEU(Marine Expeditionary Unit=海兵遠征部隊)だけは沖縄に残ることとなり、このために辺野古新基地が必要、と言われてきた。

 だが、辺野古埋め立ては本当に必要なのだろうか。屋良氏は、「米軍が、人道支援・災害復興(HA/DR*)に重点をあてて部隊の再編を行えば、その必要はない」と指摘する。

*HA/DR(ハーダー)
人道支援・災害救助活動(Humanitarian Assistance / Disaster Relief)。米軍におけるHA/DRの例として、インドネシア・スマトラ島沖大地震(2004年)やハリケーン・カトリーナ(2005年)での救助活動、東日本大震災(2011年)のトモダチ作戦などが知られている。

 31 MEUは上陸(地上戦)担当の800人を含む2000人で構成されているが、これだけでは中国や北朝鮮に対する抑止力とはならない。仮に、中国と日米間で本格的な地域紛争が勃発した場合は、米軍は海兵隊9万人を総動員することから、31 MEUだけでは抑止力として不十分なことは明らかだという。

▲新外交イニシアティブ評議員・元沖縄タイムス論説委員 屋良朝博氏

 また、沖縄は現在、米軍艦船と実戦部隊が落ち合う「ランデブー・ポイント」に設定されているが、この機能を沖縄県外や海外に移すことはできないだろうか。こうした考えの下に、NDでは「日米合同のHA/DR」という代替案の検討を進めた。

 HA/DRの取り組みは、実はすでに国際的な取り組みとして始まっている、と屋良氏は指摘する。

 「2013年には、沖縄の海兵隊がフィリピンの山奥にある小学校で活動している。(反政府勢力などが潜伏しやすい)山間部に米軍が入ることで、テロへの抑止効果もある。特に興味深いのは、このミッションに中国が参加していたことだ。

 世界銀行などの統計で、アジア地域は自然災害の蓋然性が高く、その被害規模も他地域より大きいことが予想されている。なお、翌2014年にも、中国は米軍主導のHA/DRミッションに参加している」

 屋良氏によれば、上述の代替案は、日本政府の思いやり予算を軽減する効果も見込めるという。

(…会員ページにつづく)

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    柳澤協二氏「辺野古新基地がいらない、ということにも完結した哲学がある! 一個大隊規模が沖縄にいることが抑止の計算上どんな意味があるのか?米軍が抑止力とはならない場合に、日本人一人ひとりがどうすべきか。自分自身で考えるべき時に来ている」
    https://iwj.co.jp/wj/open/archives/396607 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1061793535517634560

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