「海兵隊が沖縄にいる意味は本当にない」日本最大の基地数を抱える沖縄のジレンマ ~岩上安身によるインタビュー 第338回 ゲスト屋良朝博氏 2013.8.30

記事公開日:2013.8.30取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・安斎さや香)

※全文文字起こしを掲載しました(2013年10月21日)

 元沖縄タイムス論説委員で、現在はフリーランスライターの屋良朝博氏に8月30日、岩上安身がインタビューを行い、沖縄における基地問題や政治外交問題など、幅広くお話をうかがった。

 屋良氏は、オスプレイの追加配備や基地問題を抱える沖縄で、「来年の年明けの名護市長選、暮れの県知事選が分岐点になる」と政治情勢を分析。右派と左派は5分5分ではないかとの認識を示した。「権力が拮抗」しており、沖縄は革新政党が強いと言われるが、そうでもないという。右派の活動について、「ウルトラライトの人たちの宣伝活動は激しい」と述べ、「若い人たちが、ネット右翼の誤った見解をすんなり受け入れてしまうようなことになっている」と懸念を示した。

■イントロ

 基地への反対運動に若者が参加していない状況についても、「基地で生計をたてていくしかなかったという状態だと、なかなか議論にならないし、そういうことで歴史を受け継いでこられなかった」と、過去を知らない若い世代の現状を語った。現在の沖縄では、「正しい認識」が世代交代とともに厳しくなり、「沖縄だから反体制という画一的な理解とは違う現実がある」と解説した。

 「なぜオスプレイを置くんですか」との岩上の質問には、「海兵隊がいるから」と即答。1機100億円のオスプレイの活用法を「今試案しているところ」であるとし、「上陸作戦は海兵隊のお家芸でしたが、1950年の仁川上陸がピリオド。海兵隊は自分の存在意義を探している、組織防衛をする部隊」と、海兵隊の存在自体に疑問を呈した。

 「沖縄はアメリカ軍が統治しているアメリカ軍帝国の島だった」と語る屋良氏は、1956年に海兵隊が沖縄に来てから、住居を撤去させ、畑を埋めて基地が作られていったという経緯を説明。現在も「大きな輸送機は嘉手納にはない。岩国にはジェット戦闘機があり攻撃力があるが、沖縄の普天間に配置されている航空機は、輸送機がメイン」だとして、沖縄における海兵隊は「政治的な意味合いが強かった。海兵隊が沖縄にいる意味は本当にない」と語った。

 外交安全保障上でも、海兵隊は出張していることが多く、「大きな米軍の存在が抑止力になっているというのが一般的なステレオタイプの沖縄の基地のイメージですが、海兵隊はむしろ、アジア太平洋地域全体の平和のために展開するというのがアメリカの考え方」であるとし、日本と米国で認識のズレが生じていることを明らかにした。

 今後の沖縄における政治情勢に話が及ぶと、屋良氏は「次の知事選で一番近いところにいるのが那覇市長の翁長さん。彼は基地は持って行ってくれ、基地はなくてもやっていけると言う。翁長さんが選挙で勝てば、沖縄自立、新しい形の本土との付き合い方の議論もでてくるかもしれない」としながらも、「基地問題でハードルが高いのは、辺野古に持っていくべきと主張して勝てるか、ファジーにしておいて、当選した後に意見を聞いて決めますとなるのが常套手段だ」と分析し、「今後も基地問題は争点にはならない」との見方を示した。

 県民としては、基地問題に関し、「大多数が段階的に縮小していこうという意見」であることから、屋良氏は「ソフトランディングで現実的対応も含めながら、自民党の保守にも時々傾くのではないか」と、今後の世論の見通しを語った。

 終盤、沖縄の人々の対中感情について岩上に問われると、「個人的には、歴史的につながりもあるし、国境に近い人の考えと遠い人とで違う」とし、「沖縄は戦争体験ということがまだ生きてますから、危ない舵取りはやめてもらいたいと思っているのが大多数ではないか」との見解を述べた。

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