「基本的人権をなくしたい」は自民党の本音か!? と問われて「人権に対して支持をする、しないという二つのグループに分けられるものではございません」と、はぐらかす!~6.1上川陽子 法務大臣 定例会見 2021.6.1

記事公開日:2021.7.3取材地: テキスト動画
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(取材、文・渡会裕)

 2021年6月1日、上川陽子法務大臣の定例会見が開催された。3月6日に名古屋入管で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが、なぜどのような経緯でなくならなければならなかったのか。その死亡事件の解明はまだされていない。

 日本の入管でおきた収容者の死亡事件はウィシュマさんが初めてではない。2014年には、同じスリランカ人の男性、ニクラス・フェルナンドさんが東京入管で「謎の死」を遂げている。

 2018年インド北西部パンジャブ州出身のディーパク・クマールさんが、東日本入国管理センターで自殺、2017年には、ベトナム出身のヴァン・フアン・グエンさんが、東日本入国管理センター(茨城県牛久)で適切な医療を受けられず死に至るなど、毎年のように亡くなる方が出ている。

 日本の入管にはどんな問題があるのか。人命や人権の軽視、偏見がその背景にあるのではないか。IWJ記者は、上川法務大臣に問うた。

IWJ記者「インディペンデント・ウェブジャーナル・IWJの渡会です。よろしくお願いします。

 入管において変死を遂げたウィシュマさんの事件に対する政府と上川法務大臣の姿勢に疑問と批判の声が高まっています。事件の真相を明らかにしなくては、事件を解決することができませんし、入管が恒常的な人権侵害の場になってしまっている現状も変えることができません。

 ところが、事件の解明どころか、監視カメラの映像ひとついまだに公開しようとされない。多くの人が、上川大臣の公開拒否の頑なな姿勢の理由はなぜなのかを知りたいと思っています。

 入管での人権侵害の問題は、外国人だけの人権問題なのではなく、自由と基本的人権に関わる普遍的な価値観の問題のはずです。

 第一次安倍政権で第77代法務大臣をつとめた、同じ自民党の長勢甚遠(ながせじんえん)元法相をご存知だと思います。長勢甚遠元法相は、2012年の「創成日本」の集会にて、「自民党の改憲草案に不満がある。国民主権、基本的人権、平和主義、この三つをなくさなければならない」と訴えかけ、それに呼応して、安倍晋三前総理以下、同じ壇上に居並ぶ、自民党の主だった政治家たちが大きな賛同の拍手を送りました。

 『創成日本』とは、会長に安倍晋三前総理、副会長に菅現総理、下村博文政調会長らが並ぶ自民党議員による政治集団です。長勢甚遠元法務大臣はこの『創生日本』の会長代理も務めています。その長勢元法務大臣の言われた、『基本的人権を、なくしたい』。これが、昔はともかく、今の自民党の本音なのではないかと思われます。

 自民党の2012年改憲案においては、戦前・戦中の特高による拷問への反省から設けられた現行日本国憲法36条の『公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる』との規定から、恐ろしいことに『絶対に』の文言がわざわざ割愛されています。

 上川大臣の頑なな監視カメラ映像開示拒否の姿勢は、現行憲法の拷問を禁じる条文から、『絶対に』という言葉を削いでいこうとする現在の自民党の動向に同期したもののように思われてなりません。

 自民党という政党は、『基本的人権』という普遍的な価値感に背を向けた、特殊な思想集団であるように映ります。自民党の一員である上川大臣が、監視カメラ映像開示を頑なに拒むのは、上川大臣が、長勢甚遠元法相の『基本的人権全否定の思想』と同様の思想をお持ちであり、この基本的人権をはじめとした現行憲法秩序を停止する、緊急事態条項の入った改憲案を実現しようとする自民党のご出身だからなのでしょうか?

 その点をおうかがいしたいと思います」

 上川陽子務大臣は以下のように答弁した。

 「先ずですね、事案の真相究明、真相解明をするという、まさにその目的で今回調査チームを立ち上げさせていただきました。

 それには若干公正性という意味で第3者に入っていただきまして、そのことをしっかりと真実を明らかにする。そしてそのことがご遺族の皆さまに対しましての説明責任を果たす事、という風に私自身は思っておりましたので、中間報告も早い段階でお出しをし、様々なご指摘があり、疑問があったそのことも含めて最終報告の中で、それに関しても検証し、そして改善策をとっていくという事が極めて大事であると私自身の基本的考え方に基づいて今取り組んでいるところでございます。

 先ほどご質問ございましたように、なるべく早いタイミングで出すようにという事を私自身は指示しておりますが、調査チームもその様な主旨で今動いているという風に思っているところでございます。

 ビデオの開示につきましてはですね、私ども日本は法治国家でございますので、数々の法律に基づいて、情報公開に関しましては、こうした収容施設内の映像記録につきましては、被収容者の具体的状況の記録であるという事でございまして、不開示情報としてこれまでも取り扱って参りました。そうした基本的な考え方にのっとって、情報の開示についても考えているところであります。基本的な考え方はそうした考え方であります。

 3点目、自由民主党の中で私が国会議員であるという中で、今一連の憲法にかかる基本的人権の問題についてご指摘をいただきました。

 人権というのはご承知のとおりでありまして、赤ちゃんで生まれて来た一人の人が人らしく生きるために、欠かすことのできない大変重要な権利であります。そのことの一番ベースの部分、この部分については、人として、その命そのものをしっかりと見つめていく、とこういう考え方でございますので、これは誰にとりましても、例えば命を大切にする、でありますとか、みんなと仲良くするという事についての基本を、小さいころから育ちの中で培っていくものという風に考えております。

 そういう社会であってほしいし、また、そうした社会に向けて、政治家一人ひとり、また、今日ここにいらっしゃるお一人お一人も、国民の皆さんのお一人として、絶えず自問しながら、そして自分の中の奥深くにあるこうした人権に対しての考え方を問い続けていくべきものであると、私自身思っております。

 前も申し上げたことがありますが、人権に対して支持をする、支持をしないという二つのグループに分けられるものではございませんので、今のように、明らかにそれと、そうじゃない物に分けるという事のような、議論で語るべき課題ではないという風に思っております。皆さんお一人お一人絶えずそういったことを深く考えながら、活動、行動をしているという事をお伝えさせていただきたいという風に思っております。

 まあ、今日ヘイトスピーチの許さないという事で、これは、前はもう少しおとなしい形でしたけど、もうちょっと皆さんに気づいていただきたいという事で、ちょっとインパクトのある、同じメッセージでありますが、こういったものをポスターとして掲示させていただくという事であります。

 こういったことを通じて、気づいていただくと、気づいていただくかどうかという事を、啓蒙啓発するという事でありますので、これを気づいた後にその方がどのように考えてそして、行動するか、というところは、粘り強くいろいろな事案の中で、探求していくべきことではないか、という風に思っております。

 限られた枚数でありますが、駅とかそういうところに、あるいは大学の校内などにも張らせていただいているところでありますので、しっかりと目に触れて、また、ひとり一人に思いを、こうした視点の思いを致していただく事ができるように努力してまいりたいという風に思っております」

 上川大臣の会見の全体は、全編動画で御覧ください。

■全編動画

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