9月27日(日)、東京都小金井市で「女性の労働問題を考える小金井の会」主催の「女性と労働 ~コロナ災害のもとで働く現場はどうなっているの?~第1回 コロナ災害下での外国籍の女性の労働問題」が開催された。ベトナム出身の女性起業家が、新型コロナ災害下における外国人籍の女性の労働問題について話をすると聞き、取材した。
(取材・文:山内美穂)
特集 #新型コロナウイルス
※2020年10月27日、テキストを追加しました。
9月27日(日)、東京都小金井市で「女性の労働問題を考える小金井の会」主催の「女性と労働 ~コロナ災害のもとで働く現場はどうなっているの?~第1回 コロナ災害下での外国籍の女性の労働問題」が開催された。ベトナム出身の女性起業家が、新型コロナ災害下における外国人籍の女性の労働問題について話をすると聞き、取材した。
記事目次
■ハイライト
日本で新型コロナウイルス感染拡大が始まる直前の2019年12月。東京で、一人の外国人女性が起業した。ベトナム人のドァン・ティー・フォーンさん。国際人材サポート株式会社社長だ。母国ベトナムで大学を卒業し、2012年に初来日。日本人の夫との間には2児がいる。日本での出産後まもなく日本語学校や人材派遣会社などで働き始め、日本で働く外国人のサポートに携わってきた。その経験をもとに、行政書士の事務所でビザ申請業務に従事していた経験を持つ、同じベトナム出身の友人と、外国人のための人材紹介とビザ申請サポート業務の会社を立ち上げた。
有料職業紹介事業、ビザ申請サポート業務のほか、会計業務、日本留学コンサルティング、通訳・翻訳まで請け負う。しかし、設立直後に新型コロナウイルスが日本でも広がり始めた。4月、5月は休業を余儀なくされ、緊急事態宣言が解除されると営業を再開した。人材紹介の件数は新型コロナウイルスの影響で激減。現在はコロナにより急に職を失った人たちのビザの相談で忙しいという。ここでいうビザは、在留資格のことを含む。
ビザの相談者の男女比率は女性が7割ほど。ベトナム人、中国人、ネパール人の相談者が多い。最近も新型コロナウイルスで仕事を失い、ビザ(在留資格)が切れ、更新もできず、帰国もできず、という状況の人たちからの相談が入っている。在留資格の変更や更新の在留カードを取得できないと、住居の賃貸もできないし、健康保険証もない。その上に仕事もないという八方塞がりの状態だという。
非正規滞在となっている技能実習生からの相談もあるが、弁護士か資格のある行政書士しか対応できないケースなので、アドバイス以外の実質的なことは何もできない。また非正規滞在の状況で、再び在留許可を得るのは非常に難しいそうだ。取り扱うビザ申請の相談は、労働ビザ(技術・人文知識・国際業務)、家族滞在ビザ、留学ビザ、経営管理ビザ、短期滞在ビザ、日本人配偶者ビザ、永住者、定住者等。また最近は、帰化申請のサポートも増えてきているそうだ。
フォーンさんのもとに寄せられている相談の例として、日本人の夫とベトナム人妻の話が語られた。「夫は離婚をしたい。妻は同意しない。夫は妻に黙ったまま、妻の署名の筆跡を真似て離婚届を提出。後日、妻は自治体の離婚届受理の知らせでその事実を知った」という。どちらかが離婚に応じない場合は、通常は調停離婚へと進むはずだ。「日本人同士なら、こんなことは起こらない」とフォーンさんの語気が強まった。
また別の例として、ベトナム人同士の離婚の相談についても語られた。夫は「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得している。妻は夫のビザの扶養(注:厳密には「家族滞在ビザ」を持っているということ)に入っているので、夫の家庭内暴力(DV)などで離婚をしたくても、離婚すると「家族滞在」という在留資格から外れてしまうため、帰国しなければならない。そういったDVの相談は結構あるそうだ。
簡単には解決できなかったり、事情の複雑さゆえに専門外となるケースもあるが、話を聞くなど精神面でのサポートをしているという。簡単に母国に帰れない様々な背景を持った人たちの精神的な支えとしてもフォーンさんの存在意義は大きい。
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