2020年7月14日(火)、大阪市役所B1会議室にて、大阪城公園よろず相談、釜ヶ崎センター開放行動、釜ヶ崎パトロールの会、長居公園仲間の会、釜ヶ崎住民と、大阪市市民局総務部定額給付金担当らによる「野宿者および不安定居住者に対する特別定額給付金についての要望」についての協議が行われた。
上記市民グループは、野宿者や不安定居住者に対する住民票による確認が不要な特別定額給付金の速やかな支給や、申請期限8月25日の延長などを求めて交渉とアピールを繰り返してきた。
この日の協議は、曖昧な市役所側の対応に憤った当事者が思わず市役所側の机を蹴りつけ、それが担当者の腹部に当たり、市は警察に通報して協議打ち切りを告げた。警官に包囲された状態で市民グループは市役所側に協議の継続と今後の協議を訴えかけたが、二時間以上もの膠着状態ののち、次回の協議もあるという同意を取り付けたのみで内容面の前進はないまま協議の時間は終わった。
現場にやってきた警官と公安警察からは、参加者を執拗に撮影する行為や、取り囲む、人物を同定するなどの示威的な振る舞いもあった。
暴力的な行為は慎まれるべきだが、不安定居住者当事者らの怒りや不信感も故なきものではない。あいりん地区ではかつて定まった住居のない日雇い労働者の方の失業保険そのほかの手続きのために、居住実態がなくとも便宜上の住所登録が行われていたが、2007年に大阪市は2088人の住民票を消除した事件がある。
そのような歴史的背景もあり、今回の特別定額給付金の支給申請に住民基本台帳への記載と住民票の取得が条件とされたことに行政の身勝手さを感じ、苛立つ者もいる。また単純に手続きに困難を感じる方もいる。国や総務省が掲げる「特別定額給付金が国民すべてに行き渡ること」に、本来的には手段や方法のひとつであるべき住所の登録が条件となって、住所のない方への強制力として抵抗や反発を生んでいる。
大阪や東京のホームレス支援団体と当事者は国会内で要請を行い、戸籍の附表を取り寄せ、消除された当時の住所を確認すれば住民登録せずとも二重払いを防止しつつ給付金支給ができるなどの代替案も提示しているが、総務省も地方自治体もこれを受け入れることを拒んでいる。この給付から漏れてしまう人々が存在することを知りつつ、もう充分対応したとして見切ろうとしている。
この日は従来のような協議を持ちえなかったが、グループはその後、市役所内の関係部局を巡り、粘り強く質疑をおこなった。
住所不安定者の特別定額給付金申請と支給に関するIWJの記事はこちらをご覧いただきたい。