「技術には社会に適合した土着性がある。原発は米国向き。日本は石炭、天然ガス、地熱の有効利用を」 ~岩上安身による横浜国立大学・伊藤公紀教授インタビュー第5弾! 2015.8.21

記事公開日:2015.8.22取材地: テキスト動画独自
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(IWJテキストスタッフ・関根)

特集 地球温暖化と原発ルネッサンス
※12月8日テキストを追加しました!

 同時多発テロに見舞われたフランス・パリで2015年11月30日より、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(通称「COP21」)が開幕した。近年の気候変動を「温暖化によるもの」とし、その温暖化の原因を「二酸化炭素(CO2)の排出によるもの」と位置づけたうえで、各国に一律的に排出削減の義務化を迫るものだ。

 浜国立大学環境情報研究院・伊藤公紀教授は、この「温暖化CO2要因説」、そしてその前提である「地球が全面的に温暖化している」という定説に対しても、様々なデータを根拠に、疑問を呈する。

 2015年8月5日に行った岩上安身による4度目のインタビューで、伊藤氏は、「自然変動」の範囲内で部分的な温暖化を認めたうえで、「CO2だけが原因ではない」と明言。米国のハリケーンの発生数、コロラド渓谷の干ばつ、アジア・モンスーン、中国の唐、元、明文明の衰退と気候の一致、アルプス氷河の伸縮、アフリカの干ばつ、マヤ文明の衰退と干ばつなど、多岐ににわたる知見から歴史と気候を照らし合わせて、CO2が原因の温暖化を否定した。

 そして、8月21日に行われた、第5弾となる今回のインタビューで伊藤氏は、近い将来、温暖化または寒冷化すると現時点で断定はできないものの、いかなる気候変動が起きても持続可能なエネルギー政策を進めるべきだ、と主張。「温暖化CO2要因説」に基づいた、安易な一律的エネルギー政策を危惧した。

 「人間の血管や神経が、迂回経路をすぐに作って回復するのと同じように、気温変動の対策は、回復力、柔軟性を強めるところに着目して、社会の脆弱性を手当てすることです。エネルギー政策も同様で、適度な結びつきがいい。強固すぎるとシステム同士が共倒れになってしまう。外交もそうです」。

 インタビューではまず岩上安身が、ウォール・ストリート・ジャーナル(2015年7月13日付)に掲載された、2030年までに地球は「ミニ氷河期」に入るという記事を取り上げて、口火を切った。

 伊藤氏は、「自然変動なので範囲内。その中で熱波や寒波があるので、それに対応することの方が重要だ」と述べ、レジリエンス(Resilience)という言葉を強調して、「これは柔軟性、弾力性という意味。東が不作で、西が豊作なら、それを補完し合う政策を考えるべきだ」と語った。

 また、エネルギー問題について、伊藤氏は次のように主張した。

 「原発は、日本にとって一番不向き。原発は米国のもので、立地もメンタリティも米国向きです。技術には文脈や背景など、社会に適合した土着性があるのに、万国共通で成り立つと勘違いしている。その上、1回事故があったら、国土の大部分が失われてしまう。近代技術はリスクと利益のバランスを見る。原発はリスクが高すぎて、利益との妥協点がない。保険会社も断わるくらいだ。早く止めた方がいい」

 さらに、石炭、天然ガス、地熱の有効利用を説き、再生可能エネルギーの分野で日本の技術は決して劣っていないと説明。特に地熱発電では政府がやっと重い腰を上げ、国立公園、国定公園内の規制が緩和されたことは朗報だとした。

 岩上安身は「世論が動かないと、官僚も動きません。災い転じて福となすで、今、火山に関心が集まっているので、地熱発電に導くいいチャンスかもしれない」と応じた。

記事目次

■イントロ

  • 伊藤公紀氏(横浜国立大学大学院環境情報研究院教授)
  • 日時 2015年8月21日(金)15:00〜
  • 場所 IWJ事務所(東京・六本木)

2030年までに「ミニ氷河期」に入る!?

岩上安身(以下、岩上)「7月からお盆までは、とても暑くて、温暖化していると感じましたが、急に涼しくなって、やはり、地球は寒冷化しているのではないか、とも思ってしまいます。今日は、前回(2015年8月5日)から引き続き、横浜国立大学大学院環境情報研究院教授の伊藤公紀先生に、お話をおうかがいします。ウォール・ストリート・ジャーナル(2015年7月13日号)は、2030年までに地球は「ミニ氷河期」に入る、という科学者の警告を掲載しましたが?」

伊藤公紀氏(以下、伊藤・敬称略)「まず、氷河期もしくは氷期と、400年前の小氷期とはまったく違うことを断っておきます。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事は、太陽物理学者のヴァレンティナ・ザルコヴァ博士のグループが、太陽活動の論文を学会で発表したものがネタになっています。

 実は、ザルコヴァ博士は、氷期についてはひと言も言っていない。ウォール・ストリート・ジャーナルの、「氷期が来る」という記事に驚いた、と反論しています。ただし、太陽活動による小氷期が起こる可能性は常識になっています。

 太陽活動がだんだん低下しているのは事実です。そして、その次がどうなるかが問題で、予想がとても難しい。ザルコヴァ博士は新しい予測法を開発、次のピークを見積もることができたのではないか、というところがキーポイント。彼女の論旨は、太陽の2つの層、表面と対流層から算出すると、次回、かなり活動が低下し、1645年に始まった小氷期以来だ、ということなんです」

温暖化と寒冷化、交互に繰り返す地球

伊藤「氷河期と氷期は同じ意味ですが、氷河時代は、100万年前くらいから始まった氷河がある時代で、今も10万年周期で繰り返す氷河時代の間(後)氷期です。その前はもっと暖かくて、氷河がなかったんです。現在の間氷期は特殊で、1万年くらい暖かい時代が続き、安定しています」

岩上「人類がこれだけ栄えたのは、それに起因しますよね」

伊藤「グリーンランドや南極の氷の厚さは、2000~3000メートルあり、下には10数万年前の雪が凍っている。それを分析するため、穴を掘ります。その開いた穴の表面温度の伝わり具合を計測すると、1000分の1度の精度で、当時の気温がわかるんです。ボアホール測定と呼びます。

 それによると、10万年前から2万年にわたり気温が下がり、そこから急に上昇する。その差がグリーンランドで30度もある。1万年前の縄文時代は温暖で、2000年前頃に再び下がる。中世の1000年頃にまた気温が上がり、17世紀の小氷期になる。

 本当の氷期に比べると、小氷期は微々たる温度差です。それでも人間の活動には影響します。氷期の熱帯地方は2~3度低下したと言います。スコットランド地方は氷河に覆われていたのが、それが溶けたために重しがなくなり、地面が上がった。そのかわり、テコの原理でロンドンなど南部では地盤沈下しています。

 3メートルほどあった縄文海進の場合は、地盤沈下の影響が大きい。氷期の時は海面が100メートル下で、日本周辺もベーリング海峡も地続きで、人類も移動したと言いますね」

岩上「そのあと(海面が上昇して日本が島になり)日本が孤立して、日本人は独自の発展を遂げたのです」

伊藤「面白いのは、その頃の記憶が神話に取り上げられていることです。でも、日本では、それを研究していません」

岩上「(日本人は)日本にこだわって、周辺も含めたグローバル・ヒストリーは研究しません。それが、今も偏狭なナショナリズムに影響しているんではないでしょうか」

今は「温暖化」ではない。わかりやすい一元論はダメ

伊藤「過去4000年で比べると、中世温暖期に比べて、今が特別高いとは言えません」

岩上「これから多少、気温が上がろうと、パニックを起こすほどでもない。逆に、下がっていっても影響はある。想定内ということですね」

伊藤「気候最適期(~BC5000年)でも、現在より2~4度高かった。中世温暖期は、現在と同程度です」

岩上「地球温暖化と騒ぐ人がいますが、『気候最適期に近づいている』と言ったら、ずいぶんイメージが変わりますね。でも、温暖になるのか、下がるのかは決められないんですよね」

伊藤「自然変動なので、範囲内であることは確かです。その中で熱波や寒波があるので、それに対応する。それが自分の主張です。小氷期(1650年付近)では、1度くらい下がるという見方です。

 暖かくなったり、寒くなったりすることは、アルプス氷河の解析からもわかり、暖かい時は苔の痕跡の泥炭で、寒い時は、氷河が成長してモレーン砂の堆積でわかります。過去2000年間でも、100年から数百年で温暖期と冷涼期が繰り返されています」

 ル・ロワ・ラデュリの『気候の歴史』に面白い記述がある。それは、葡萄の収穫と気候の関係を調べた研究です。葡萄は、ヨーロッパでは大きな産業だったので、収穫日の記録が残っている。たとえば、『葡萄の実は熟した』と、1717年9月12日、南仏リュネルで宣言。9月19日を収穫日とした。それらの記録と気温を対比させると、明らかに一致する。1500年代、柏の木の年輪でも調べ、当時は2年交代で涼しい夏だった。しかし、ラデュリ氏は、社会的要因で、収穫日の変動があるので正確には言えないと断っています。

 また、気候の影響は、場所によって違います。たとえば、小麦の生育にとっては、地中海性気候の乾燥がよくない。パリやロンドンでは、過度の湿度はかえって有害。バルト海(北欧)では寒いと悪くて、同じ穀物でも地域によって違う。13世紀後半、アメリカでは大寒波だったが、アリゾナでの人口減少は、社会的な原因に気象が追い討ちをかけたからだと言います」

岩上「やはり、人口に膾炙しやすいが、一元論はダメで、ひとつの要因で語るのは危険ということですね。地球全体や長期にわたり、ありとあらゆる状態をひとつで語ってはいけない」

伊藤「ただ、一元論は、ある局面ではいいんですよ。切れ味がいい。だけど関係ないところを切ってしまうことがある。こういう場合には、刃物としては鈍い方がいいんです」

飢饉は自然災害より社会的な要因で起こる

伊藤「社会的要因に移ります。アマルティア・セン著『貧困と飢饉』によれば、1974年にバングラディッシュ飢饉があったが、食料供給量は他の年より良かった。なぜ、飢饉になったかというと、春先の洪水で種まきができず、労働者の収入がなくなってしまい、食物を買えなかったため。不平等が根本的な原因だった。他の場所では、食物不作が投機対象となり、貧困層に飢餓を招いたとも述べています」

岩上「現在も、(農産物をめぐる)規制がどんどん外され、投機も振れ幅が大きくなって、十分、(食糧不足を招く)社会的要因になり得ます」

伊藤「飢饉というのが、穀物が穫れないからではない、ということが重要です。かつて、日本もそうだった。気象学の近藤純正東北大学名誉教授の、凶作の原因の研究では、1300~1600年代は干ばつと洪水が元で凶作になった。しかし、1900年代になると消滅する。それは、江戸幕府の幕藩体制で、河川改修、灌漑、森林保護を実施し、300年間にわたる努力の結果、洪水や干ばつを克服したからです。1900年からの主な要因は冷害になります」

岩上「関東平野も利根川の治水でよくなりました。徳川幕府は偉いもんだ」

伊藤「1979年~2010年までの水稲作況指数(農水省)を見ると、1980年、1993年、2003年は冷害による不作なのがわかります。青森などは、稲の開花時期に山背が吹くと日照時間が減り、気温が下がる。それが長く続くと稲の生育に影響します。

 江戸時代は米相場が乱れ、社会混乱が起きた。また、幕府の政策も悪く、飢饉も生じた。アマルティア・センは、民主主義が発達していると飢饉は起きない、と述べています。つまり、野党とマスコミがしっかりしていて、政府にもの申していれば、飢饉は起きない。

 1993年、日本でコメ騒動が起きた。コメもブランド志向になり、冷害に弱い品種(コシヒカリ、ササニシキ)が増えて、不作の原因になったというんです。災害は忘れた頃にやってくるということ。その反省で、多品種栽培が主流になる。ところが近年、再びブランド志向に戻っています」

岩上「農政の問題ですね。市場原理主義で、政府の補助金も減らそうとしていて、高くて美味しい品種を作れ、農業の6次元化で付加価値を付けろ、と言っている。生産者価格1俵1万5000~6000円ですが、ベトナムでは1俵1000円、カリフォルニアでは2000円でコシヒカリが作れてしまう」

伊藤「1980年の凶作は山背の影響です。なぜなら、6月末~8月、オホーツク海の高気圧が優勢になり、冷たい空気が南下し、全国的に低温になりました。コメだけではなく、野菜、豆類、かんしょ、果実など全般に被害が及び、繊維、食品、レジャー企業の冷夏倒産が起こりました。

 翌1994年は、異常高温と干ばつに見舞われましたが、作況指数は7年ぶりの豊作になりました。

 ただし、山背は、東日本では冷害が起こり、西の日本海側ではフェーン現象で暖かくなります。それを地元では宝風と呼ぶそうです。だから、レジリエンス(Resilience)、柔軟性、弾力性という意味ですが、東が不作で、西が豊作なら、それを補完し合う政策を考えるべきです。

 面白いのが、山背の対応策の浸水灌漑というもの。稲の幼穂を水の中に入れて山背から守る、という農法です。もちろん品種改良もあります」

火山や太陽風の影響もある気候変動には、レジリエンスな姿勢を

伊藤「1993年の冷害と、1991年6月のフィリピンのピナツボ火山の噴火との関連性ですが、1991年は、不作はひどくありませんでした。近藤教授の気温と作況指数の相関関係では、マイナス1度くらいなら、稲の生育はそれほど変わらないことがわかっています」

岩上「今年は、御嶽山、桜島、箱根など噴火の当たり年です。農作物にも影響を与えそうですね」

伊藤「噴煙が10キロ上空の成層圏まで上がると、北半球には影響が出る可能性はあります。近藤教授は、大噴火との関係を調べています」

岩上「火山の大噴火があると、その後、3年間のうち1回は東北地方で冷夏になる可能性が、90%以上あると」

伊藤「1840年からのデータを精査すると、冷夏の約半分は火山の影響になっています」

岩上「ここで皆さんは、CO2、地球温暖化の話はどうしたんだ、と思われるかもしれません。CO2にまつわるテーマの中に、こんなにもたくさんの要因があるんですね」

伊藤「地表の温度計より正確な、1979年からの衛星観測の気温のデータを見ると、平均より暖かい原因はエルニーニョです。低い時はラ・ニーニャですが、火山の影響も加わっています。噴火で、SO2(亜硫酸ガス)が莫大に成層圏まで吹き上げられて、水分と反応して霧状になって太陽光を反射するからです。

 ところが、ピナツボ火山の噴火で、地球全体の地域別温度を見ると、中東、フィリピンは冷温ですが、カナダや北米、イギリスは高温になっている。先回話した、北極振動に噴煙が影響していることになります。それは、高温と冷温を交互に発生させるようです。かつ太陽風も加わります。さらに複雑なのは、東北地方の冬は温暖でしたが、夏は冷夏というように、季節によっても影響が違うのです。だから、一律には決められないのです」

岩上「さまざまなファクターが重なって、複雑ですね。グローバルにわかってくると、ローカルにも目を向けないといけないんですね。助け合いを考慮すると、インターローカルに見なくては」

伊藤「それが、社会の回復性を増やすレジリエンスな思考、脆弱性を減らすと持続性が増す、という思考です。政府は、2003年を最後に冷夏がなくなったと言う。米作に関しては、温暖化は朗報です。ちなみに日本は、1900~1910年は寒く、1902年は気象庁統計史上、最大の冷夏。1913年が第2位の記録的低温でした。

 アメリカのデータでも同様です。100年前は寒かった。しかし、1998年のスーパーエルニーニョでは、高温だが、その後は決して上がっていません」

(動画後編に続く)

小氷期になるのか? 再び温暖化に向かうのか?

岩上「テーマ4『寒冷化により、エネルギー問題にどう影響が出るのか。どういうエネルギー政策が有望になるのか。原発を押す声は根拠を失うのか』に移ります。ザルコヴァ博士によると、太陽活動のサイクルから考察すると、太陽はもっと衰えるということですよね」

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  1. 清沢満之 より:

    再生可能エネルギー海流発電もお忘れなく。
    https://www.youtube.com/watch?v=WfS8H3oidXU

    20151128 広瀬隆講演会「電力自由化で原発と電力会社を葬る!!」
    https://www.youtube.com/watch?v=i7p7KM9-FwM

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