世界の潮流が再生可能エネルギーへの転換に向かう中、日本は違う方向を見ていると専門家らが指摘――化石燃料と変わらない自然エネルギーの可能性を示唆 2015.3.19

記事公開日:2015.4.4取材地: テキスト動画
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(取材・記事:IWJ・松井信篤、記事構成IWJ・安斎さや香)

 気候ネットワーク主催で行なわれている連続セミナーの第4回目が2015年3月19日(木)、主婦会館にて開かれた。今回のテーマは、「再生可能エネルギーと電力システムの課題」と題し、講師に自然エネルギー財団の大林ミカ氏と、富士通総研の高橋洋氏を迎えて行なわれた。

記事目次

■ハイライト

自然エネルギーのコストがすでに化石燃料と「同価」か「安価」

 自然エネルギー政策における最近の状況と課題について、大林氏が講演を行なった。2014年9月、九州電力は自然エネルギーの電力に接続するのを回答保留するという、実質的な接続保留に踏み切っている。一方、世界の状況を見ると、2014年に世界の風力発電導入量は合計約3億7千万kwとなり、風力発電の拡大速度は2010年以降に大きく加速しているという。

 2014年だけでも、新たに5千万kw以上が導入され、その約半分にあたる2355万kwを新たに導入した国が中国だ。現在、中国は世界の風力発電の3分の1を占めている。日本が2014年に新たに導入した量は、約9万kwに留まる。

 世界の太陽光発電の2014年合計予測は、約1億8千万kw。新たに導入された導入量予測では、約4300万kwとなっている。こちらも、風力発電と同様、新たに導入した予測値のトップは、約1300万kwの中国だ。

 日本は、固定価格買取制度の影響で、2位の約940万kwを導入している。太陽光発電についても、ここ数年で加速度的に増え続けているという。自然エネルギーの導入が全体的に増加している大きな理由として、大林氏は、コストが大幅に下がっていることを指摘。

 現段階でも、すでに自然エネルギーのほとんどが化石燃料による発電と同じか、より安いコストで発電しており、さらなる価格低下が予測されるという。特に、太陽光発電のコストは、過去5年間で75%も低下したと説明した。

新興国のエネルギー源

 大林氏は、「自然エネルギーというのはコストの高い先進国のエネルギー源ではなく、新興国のエネルギー源でもある」と言う。

 インドでは、すでに石炭による発電よりも太陽光発電のコストが小さくなっていると報告し、ブラジルでは、風力発電が安すぎるために、入札対象から外されていたが、2014年10月、一番コスト安の電源として契約を獲得した例を挙げた。

国民負担増など、自然エネルギーへの転換に否定的な意見も

 日本では、2015年1月26日より、固定価格買取制度の運用見直しが施行されている。これにより、東電・関電・中電以外の7電力会社を指定電気事業者として、自然エネルギー電力の無制限無補償出力抑制が実施できるようになった。

 出力抑制については、2015年4月に立ち上がる広域的運用推進機関が監視を行ない、指定電気事業者は出力抑制について見通しと説明を求められる仕組みだ。つまり、電力会社は、電力の買取りをいつまで拒否するのか、また、その理由を説明する必要が生じることになる。

 現在、2030年のエネルギーミックスに関する議論が、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で行なわれている。

 自然エネルギーについては、新エネルギー小委員会で目標値の議論を行なっているが、自然エネルギーを系統に繋ぐことで送電線の費用が上がり、国民負担が増大していくなどの否定的な意見が多く出ているという。目標値は低く見積もられており、2030年には、産業界で3600万kw以上を掲げているも、政府は1200万kwが限度という立場を貫いている。

自然エネルギーの導入可能量の算定における問題

 自然エネルギーの導入可能量の算定については、原子力の出力調整をしない前提、つまり、原発がベースロード電源として、ずっと発電し続けることを前提に算定されている。

 しかし、現在はベース供給分となる原発は一基も動いていないため、その動いていない原発の接続可能量の部分において、自然エネルギーが占める割合が増えるはずだと大林氏は言う。問題は、導入量算定を見直す期間がいつなのかであり、チェックが必要だと指摘した。

 さらに、算定条件の問題として、地域間連系線の活用率が低く、現状では連携線容量の5~16%の活用に留まっていると大林氏は説明。しかし、これについて議論している系統ワーキンググループでは、連系線の活用がほとんど検討されていないという。

先進国の標準とは異なる日本の自然エネルギー導入目標

(…会員ページにつづく)

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