「フロンガスは、CO2とは違って、少しの削減努力で、かなりの効果が上がる」──。群馬大学教授で環境学・生活科学が専門の西薗大実(にしぞのひろみ)氏は、フロンガスをたった4キログラム削減するだけで、レジ袋だと36万5000枚に相当する、と訴えた。
2015年12月、パリでの開催が予定されているCOP21では、2020年以降の国際的な温室効果ガス削減の枠組み合意が目指されている。各国には、2015年3月末までに、削減目標案の提出が求められている。
地球温暖化防止のために活動するNGO/NPOである気候ネットワークは、日本での温室効果ガス削減目標を検討するためには、原発のリスクや気候変動のリスクなど、さまざまな課題を考慮する必要があるとして、今後の方向性と政策について議論を深めるべく、2015年2月から4月にかけて連続セミナー「温室効果ガス削減の可能性をさぐる ~新たな目標設定と政策の実施にむけて~ 」を開催している。
その第2回目が2015年3月5日、「HFC等Fガス削減の課題」とのタイトルで、東京都内で行われ、群馬大学教授の西薗大実氏と気候ネットワークの桃井貴子氏の2人がスピーチした。
温室効果ガスと言えば、すぐに二酸化炭素(CO2)が思い浮かぶが、環境への悪影響という点では、Fガス(フロンガス)の方が、はるかに上だという。2人のスピーカーからは、2015年4月に全面施行される、Fガス廃絶を狙う「フロン排出抑制法」についての言及があり、その評価できる点と、力不足の部分に関する丁寧な議論が展開された。
- スピーカー 西薗大実氏(群馬大学教授)、桃井貴子氏(気候ネットワーク)
フロンガス削減──少しの努力で大きな効果
司会を務めた気候ネットワークの女性スタッフは、「日本が今後、温室効果ガス排出削減の目標値を決めていく上では、CO2のみならす、Fガスの存在にも目を向けねばならない。日本全体の温室効果ガス排出量で、Fガスが占める割合は大きくはないが、影響力という点では決して低くない」とし、これからスピーチする西園氏が、わかりやすく解説してくれるはず、と紹介した。
マイクを握った西園氏は、まず、Fガスの概要を次のように話した。
「種類が多いFガスのうち、CFC(クロロ・フルオル・カーボン)とHCFC(ハイドロ・同)は、クロロが含まれており、オゾン層を破壊するものだ。1987年に採択されたモントリオール議定書の対象物質だが、1997年採択の京都議定書では、二重規制を避ける意味合いから対象外とされた。一方で『4ガス』と総称される、HFC(ハイドロ・フルオロ・カーボン)、PFC(パー・同)、SF6(6フッ化硫黄)、NF3(3フッ化窒素)があり、これらは(排出された量を記録する)インベントリの対象物質だ」
西薗氏はFガスの特徴を、「どれも非常に温室効果が大きい」とし、その理由を、「炭素が中心にあり、そこにフッ素がくっつくと、赤外線を吸収してしまう。その水準は、CO2の1000~2000倍は普通、種類によっては1万倍にまで跳ね上がる」と説明した。
さらに西薗氏は、「種類が多い上に、新規開発が今なお進行中のFガスの使用先のすべてを、細部まで把握することはまず困難」と指摘しつつも、レジ袋の原料になるナフサは、1キログラムにつきCO2が2.3キログラム発生することに照らして、「Fガス4キログラムを削減すれば、レジ袋36万5000枚に相当する」と強調。「FガスはCO2とは違い、少しの削減努力で、かなりの効果が上がる。これからの時代は、消費者もフロンを気にかけてほしい」と訴えた。
食品ケースの冷媒は、方式転換が可能
各温室効果ガスの排出量を比較すると、CO2の次に多いのがFガス(4ガス)だ。2013年度の総排出量は13億9500万トン(CO2換算、以下同)で、CO2が13億1000万トンで4ガスが3800万トン(3位はメタンで2400万トン)。その4ガスの内訳は、HFCがほとんどと指摘する西薗氏は、「そのHFCの主たる用途は冷媒である。中でも食品の低温流通で多く使われている」とし、排出量削減のターゲットは、自ずと絞り込まれると述べた。