「CO2の10%削減を達成したミュンヘンは、世界の目安に」 〜ドイツの市民活動に学ぶ モニカ・レナー議員、マルティン・ヘンゼル氏講演 2013.10.31

記事公開日:2013.10.31取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「2008年、ミュンヘン市議会は、5年間で二酸化炭素排出量を10%削減、2030年には半分にする削減目標を立てた」とモニカ・レナー市議会議員は、ミュンヘン市の環境問題への取り組みを具体的に説明した。また、環境NGO「BUND」のマルティン・ヘンゼル氏は「BUNDは、全国で46万人、国際的にも約200万人いる『地球の友』(FoE)と連携。予算は年間1100万ユーロ(約14億8500万円)で、そのうち4分の3は寄付や会費である」と語った。

 2013年10月31日、札幌市・大通のさっぽろテレビ塔ホールにおいて、札幌の姉妹都市ミュンヘンから、市議会議員のモニカ・レナー氏と環境NGOのメンバーのマルティン・ヘンゼル氏を招き、講演会「ドイツの市民活動に学ぶ」が行われた。レナー氏は環境保護に熱心なミュンヘン市の議会の様子を語り、ヘンゼル氏はドイツのエネルギー政策に大きく寄与するBUNDの概要や活動について伝えた。

■全編動画

  • モニカ・レナー (Monika Renner) 氏(ミュンヘン市市議会議員、ドイツ社会民主党)
    「ドイツにおける市民活動と政策決定について」
  • マルティン・ヘンゼル (Martin Hänsel) 氏(環境NGO「BUND」ミュンヘン支部副代表)
    「ドイツ最大の会員数を誇るBUNDの活動とその成果について」
  • 日時 2013年10月31日(木)
  • 場所 大通のさっぽろテレビ塔ホール(北海道札幌市)
  • 主催 札幌市/札幌国際プラザ

1990年代から2030年にかけて、CO2の50%削減を目指すミュンヘン

 まず、主催者の札幌国際プラザ事務局長、蔀(しとみ)研治氏が「東日本大震災と原発事故の記憶が薄れていく中、この9月末の段階で、札幌市だけでも福島から975人、東北全体からは1497人の方が、いまだに避難生活をしている。そんな中、被災者支援の輪は札幌の姉妹都市であるミュンヘンでも広がっている」と話し、ゲスト2人を紹介した。

 モニカ・レナー氏は「1970年代から札幌市とミュンヘンは姉妹都市。共に環境問題への取り組みが行なわれている」と述べ、ミュンヘン気候対策プログラムの説明を始めた。「1990年代にエコロジー指導指針が作られた。2008年、ミュンヘン市議会は、今後5年間で1990年代より二酸化炭素排出量を10%削減、2030年には半分にするという削減目標を立てた。エコロジー指導指針、環境保全保護、広報活動などの行動プログラムが定められ、企業や市民活動グループも協力している」。

 次に気候保全行動プログラムについて、「計画提案、調査、実行で構成され、定期的な見直しと報告、協議を行い、質の向上に努めている。これらの二酸化炭素削減プロジェクトは、住宅改造・新築建築、景観指導、一般交通手段、産業エネルギーと供給分野、インフラ施設建築、意識教育など、各分野に分かれている」と説明した。

世界の目安にもなっているミュンヘン市の試み

 レナー氏は「2010年、市議会は、ミュンヘン気候保全行動プラグラムの2年間で50項目の対策を立てた。予算は2560万ユーロ(34億5600万円)で、大気削減促進プログラムのために1400万ユーロ。住宅建築での省エネ対策に1200万ユーロを計上した。ほかに公共事業で、自転車コースや省エネタイプの街灯や信号の設置などを検討している」。

 また、「2013年度の予算は631万ユーロで、気候保全マネージャーへの助成も決まった。気候保全マネージャーとは、気候防止対策を行政に組み入れ、政策の継続をサポートするほか、広報活動、ネットワークの構築、対策の作成、評価などを行なう」。

 「来年までに、二酸化炭素の年間60万トン削減を目指す。現在、10%削減を達成しているミュンヘンの試みは、世界の目安にもなっている。自然エネルギーへの転換にも努めているミュンヘン市は、さらにCO2削減が達成できそうだ」と語った。

自然愛好者団体から会員46万人の環境保護活動へ

 休憩ののち、環境NGO「BUND」(Bund für Umwelt und Naturschutz Deutschland ドイツ環境自然保護連盟)ミュンヘン支部副代表のマルティン・ヘンゼル氏の講演に移った。まず、設立100周年を迎えたBUNDの概要について話した。

 「自分が属するミュンヘン支部は、1913年に設立され、1975年にBUNDとして再結成した。現在、全国で46万人、バイエルン州では20万人のメンバーがいて、国際的にも世界に約200万人いる『地球の友』(FoE)と連携している。予算は年間1100万ユーロ(約14億8500万円)で、そのうち4分の3は寄付や会費が占めている」。

 続いて活動内容と歴史について、「設立当初は、高級官僚や名士たちの自然を愛好する人たちの集まりだった。それが1970年代、環境自然保護連盟と姿を変え、会の方針を改め、大気汚染、自然保護、交通エネルギー政策など、社会的なテーマを掲げるようになった」と説明した。

反原発運動がBUND発足のきっかけ

 ヘンゼル氏は「1970年代になって森林で枯れ木が増えるなどの自然破壊が目立ち、不安が増した。水力発電が森林を破壊することから、BUNDの前身は、当初は原発に肯定的だった。しかし、原子力発電所建設に反対するデモが始まり、メンバーたちの意識も変わった。それがBUND発足のきっかけになり、ドイツ全体に広がっていった」と述べた。

 続いて、バイエルン州の小さな村(バッカースドルフ)への再処理施設建設の反対運動について話した。「1986年に反対運動が激化、2人の死者も出た。市民戦争のようになったが、1989年、建設計画を中止にした。それ以前、1980年にはドナウ川水力発電所建設計画がもち上がり、100万人の反対運動が起きている。2000年には議会も脱原発に向かった。2008年にドイツ国会が原発廃止期間の延長を決めた時には、大きな反対運動があった」など、ドイツ国内の状況を語った。

 さらに、「福島第一原発事故の際、ミュンヘンでも反原発デモが起こり、それが元になってドイツ国会は脱原発を宣言した。現在の電気代が高いのは、自然エネルギーにシフトしたせいではない。市民は自然エネルギーの料金を負担しているのに、企業が工場などで使う電気料金を安くしているからだ。こういう事実を、市民に伝えていかねばならない」と述べた。「また、EUから代替エネルギーに対して300億ユーロの助成金が出る。2011年は石炭、天然ガスなどに1000億ユーロの援助があった」と報告した。

 最後に、ヘンゼル氏は「BUNDは行政から独立し、本部、支部そして下部組織も、それぞれの街ごとにできた。BUNDは、平和的な手段で貢献することに努めている。実現不可能でも声を上げ、問題を世に知らしめることが重要だ」と話して、講演を終えた。

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