「原発ゼロ社会」を目指すための市民によるシンクタンクが昨年4月、設立された。原子力市民委員会だ。同会は先月12日、200ページを越える「脱原子力政策大綱」を発表。原発ゼロ社会を実現するための、政策集を取りまとめた。
原子力市民委員会は、1)福島原発事故、2)核廃棄物、3)原発ゼロ行程、4)原子力規制の4つの部会から成り立つが、5月8日、第3部会の部会長である、大島堅一立命館大学教授と、部会コーディネータを務める、松原弘直環境エネルギー政策研究所主席研究員が衆議院第二議員会館に招かれ、大綱の中でとりまとめた「原発ゼロ社会への行程」の概要を発表した。
「原発政策を推進してきた国と、それを許してきた国民」原発ゼロ社会への提言〜原子力市民委員会が「脱原子力政策大綱」を発表 2014.5.8
(取材・記事:IWJぎぎまき、記事構成:IWJ平山茂樹)
記事目次
- 脱原発社会をどう実現するか
- 原子力関連組織の解体
- 原発立地自治体への支援措置
- 「原発ゼロにして、地球が温暖化しては意味がない」「原発ゼロにして、地球が温暖化しては意味がない」
- 原発推進派とも意見交換会
■ハイライト
- eシフト、原子力市民委員会の取組み紹介:「脱原子力政策大綱」とは
- 「原発ゼロ社会への行程の基本的アウトライン」 大島堅一氏(立命館大学経済学部教授)
- 「現状の体制の課題」 松原弘直氏(環境エネルギー政策研究所)
- 日時 2014年5月8日(木)
- 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
- 詳細 原発ゼロ社会への行程行財政の仕組みをつくりかえる
脱原発社会をどう実現するか
「原発をどんなに維持しようとしても、日本は廃炉の時代を迎える」
現在の原子炉等規制法では、原則40年で原子炉の廃炉を規定している。原子力規制委員会に認められれば、一回に限り延長が可能だとされているが、延長が認可されるかどうかは、蓋を開けてみなければ分からない。「廃炉と同じペースで、原発を新設することは無理」。どんなに原発を維持しようとしても、日本が廃炉の時代を迎えるのは明らかだと大島氏は話す。
全国の原発の中で最も新しい、北海道電力の泊原発3号機が廃炉を迎えるのは、2040年代後半。それまでに、原発を維持するのがいいのか、脱原発社会に移行するのがいいのか。大島氏は、「原発を維持するには、リスクもお金もかかる」と指摘。
福島原発事故後、再稼働の前提となる新規制基準の要求を満たすため、電力事業者は、1兆円を超えると言われる「安全対策投資額」を行なっている。投資した分を回収するために、ますます原発依存から抜けられなくなるのは当然で、大島氏は速やかに廃炉へ舵を切ることが懸命だと話した。
大島氏に対しては、福島第一原発事故発災直後の2011年4月11日に岩上安身がインタビュー。大島氏は、これまで「コストは安い」と喧伝されてきた原発について、核廃棄物の処理や揚水発電にかかる費用なども入れると、コストは莫大なものになると指摘していた。
原子力関連組織の解体
しかし、既存の行財政システムのあり方を変えない限り、脱原発社会は実現できない。
「原子力を推進してきた省庁しかない、行財政組織のあり方を変えない限り変わらない」
大島氏は、東京電力と国の責任が十分に問われない、現在の体制を厳しく批判しながら、原発ゼロ社会を実現する、根本的、かつ総合的な組織改変を提案。これまで、原子力政策を決定してきた、経産省の総合資源エネルギー調査会の廃止や、原子力研究を進めてきた文科省の原子力開発機構の解体を具体例としてあげながら、脱原子力庁を設立し、福島原発事故賠償復興機関を運営するなど、新しい組織のあり方を打ち出した。
原発立地自治体への支援措置
(…会員ページにつづく)