「このままでは、東電はまったく無傷のまま、国民が原発事故の収束費用を負担する可能性がある。だから、東電を法的整理するべきだ」──。
2013年11月9日、奈良県生駒市の生駒市図書会館市民ホールで、立命館大学教授の大島堅一氏を講師に招いて「経済から原発を考える講演会」が行われた。大佛次郎論壇賞受賞作『原発のコスト』などの著作で知られる大島氏が、原発の背後に隠されてきた社会的費用と、事故によるモラルハザードとともに、国民にのしかかりつつあるコスト負担について講演した。
(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)
「このままでは、東電はまったく無傷のまま、国民が原発事故の収束費用を負担する可能性がある。だから、東電を法的整理するべきだ」──。
2013年11月9日、奈良県生駒市の生駒市図書会館市民ホールで、立命館大学教授の大島堅一氏を講師に招いて「経済から原発を考える講演会」が行われた。大佛次郎論壇賞受賞作『原発のコスト』などの著作で知られる大島氏が、原発の背後に隠されてきた社会的費用と、事故によるモラルハザードとともに、国民にのしかかりつつあるコスト負担について講演した。
記事目次
■ハイライト
大島堅一氏は、「原発のコストとは何か。原発は『安い』『高い』と言うが、重要なことは『いくらか』と『誰が払うか』である」とし、「都合の悪いところを全部隠して、都合の良いところだけ出せば安くなる。原発のコストを考えるには、単に電気を作る時だけのコストではなく、社会的費用についても考えなければいけない。また、それは電力会社にとってのコストなのか、国民にとってのコストなのか、ということ。これは、ものすごく大きな問題である」と説明した。
日本の原発が増えた背景について、「40年間にわたって1500億円という、小さな町の財政力からすると到底考えられない交付金が出る。さらに、一度受け入れると、そこで働く人たちが増えてくるので、その後も受け入れやすくなる」と述べ、いわゆる、原発のセールストークとして、「まず、原発は安全だと言う。次に、エネルギー安全保障に関わっている、と言う。要するにエネルギーの供給に役立つのだ、と。3つ目は、温室効果ガスを出さないから環境にやさしい、と。最後は、コストが安いという話」を挙げた。
その上で、大島氏は「実際に、福島で原発事故が起きてしまった。絶対安全だと言ってきたが、それは間違いだった。また、原子力の安全性を歪めるような規制緩和をやってきた。その結果、津波で損傷を受けて、福島第一原発の1号機と 3号機が爆発し、4号機は知らないうちに爆発した」と、安全神話の崩壊を指摘した。
そして、「環境に優しいどころか、福島を中心に広範囲に放射能汚染が広がった。すぐに人が死ぬレベルではなかったが、土壌は汚染され、農作物にも影響が出た。これは、かつてない規模であり、今後どうなるかも誰にもわからない。労働者や周辺住民は、原発事故の際に直接的な被曝をしており、健康被害の懸念も大きい」と、原発が環境にやさしいという説も否定した。
大島氏はエネルギーの安全保障について、「原発事故以前の2010年で、発電における原子力の割合は3割だが、日本のエネルギー全体から見ると、原子力の割合は1割程度になる。だから、仮に原発が全部なくても、9割のエネルギーは残る。『原発がなくなると石器時代に戻る』という話は間違いで、実は、原子力は日本のエネルギー全体から見ると1割程度にしか過ぎない。この部分を再生可能エネルギーで置き換えるのは、それほど困難ではない」と述べた。
続けて、「石炭、原油、天然ガスは海外に依存しているので、原子力を使わないと日本のエネルギーは脆弱、という話がある。しかし、よく考えると原発はウランで動いている。ウランは日本にはないので、結局は海外に頼らなければならない」と、エネルギー安全保障における原子力発電の優位性を否定した。
原発推進派が持ち出す核燃料サイクルについては、「使用済み燃料からプルトニウムを取り出して、プルトニウムを燃料にして循環させる。ゴミを再利用して国内で使うから国産エネルギーと同じで、だから、原発は準国産だという理屈。しかし、たとえば(輸入した)鉄をリサイクルして、それを国産だと言えるのか。リサイクル資源ではあるが、国産ではなく輸入資源である。単に輸入資源を燃やしているだけ」と一蹴した。
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