「『電力不足キャンペーン』は明らかに破綻したが、燃料費上昇に伴う『原発は安いキャンペーン』がまだ行われている」――。
9月10日、「原発ゼロノミクス『改めて考える原発のコスト』」と題する講演会で、慶応大学経済学部教授の金子勝氏はこのように述べ、日本でこれまで連呼され続けてきた、「原発の電気は火力よりも安い」という、政府や電力業界による喧伝に対し、異を唱えた。
(IWJテキストスタッフ・久保元)
「『電力不足キャンペーン』は明らかに破綻したが、燃料費上昇に伴う『原発は安いキャンペーン』がまだ行われている」――。
9月10日、「原発ゼロノミクス『改めて考える原発のコスト』」と題する講演会で、慶応大学経済学部教授の金子勝氏はこのように述べ、日本でこれまで連呼され続けてきた、「原発の電気は火力よりも安い」という、政府や電力業界による喧伝に対し、異を唱えた。
記事目次
■ハイライト
発電方式ごとの発電単価の計算をめぐっては、立命館大学国際関係学部教授の大島堅一氏が、電力会社の有価証券報告書を分析する手法により、原発の発電単価は、政府が言ってきたような1キロワット時(kWh)あたり 5~6円というレベルではなく、実際には10~12円に達し、火力をも上回っているとみられることをすでに公表している。
IWJではすでに2011年4月11日には、岩上安身による大島堅一教授のインタビューを実施、中継している。このインタビューは3.11から1ヶ月後の時点で、「原発は経済的で発電単価が安い」とする推進派の主張が、根拠のないものであることを明らかにする決定打となった。
金子氏は、大島氏による計算について、その意義や価値を認めた上で、さらに踏み込んだ分析を加え、発電所ごとの発電単価を算出する試みを実施したことを講演で述べた。
まず、政府による発電単価計算の手法について、「廃炉になるまでの40年間、全ての原発が動いているという前提での計算。廃炉に伴って順次原発が減っていくことを想定していない」と批判した。その上で、福島第一原発事故を契機に決まった追加安全対策のコストを、廃炉までの残存期間で償却する場合を想定するケースや、損害賠償費用を発電単価に上乗せした場合などを想定した、独自の試算結果を解説した。
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