「安全基準を変えて、支援を打ち切る国は勝手すぎる」原発事故被災者の声の叫び――150人の市民らが集会と請願デモで12万筆の署名を国会に提出 2015.5.27

記事公開日:2015.5.28取材地: テキスト動画
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(IWJ・ぎぎまき)

特集 百人百話|特集 3.11

 安全保障法制の関連法案が審議されている裏で、原発被害者の救済を求める請願デモが2015年5月27日に行なわれ、被災者や支援者約150人が12万筆を超える署名を国会に提出。「原発事故被害者の救済を求める全国運動」主催で行なわれた。

 国に求めたのは、「住宅支援打ち切りの撤回」「子どもたちの健康や検診の保障」「保養の制度化」「被害者への完全賠償」の4点だ。デモに先立ち行なわれた集会では、福島から京都、神奈川、北海道などに避難している母親らが避難の実情を訴え、避難区域の解除や住宅支援の打ち切りなど、帰還政策を強行に進める政府に怒りをぶつけ、撤回を求めた。

 衆・参両院の議員面会所外では、生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎議員をはじめ、共産、民主、社民党の議員らが整列し、市民らから12万3455筆の署名を受け取った。

▲参議院の面会所の外で、署名の箱を受け取る議員たち

 国会議員になる前は、市民の一人として請願行動などに加わっていた山本太郎議員。署名を受け取った感想を聞くと、山本議員は言葉をつまらせながら、次のように話した。

 「何かグッと来てしまって。自分が議員になる前に、福島や東日本、北海道で出会ってきた人たちの顔がちらほらあった。事故から4年も経っているのに一人も救えてないなということに対して、自分自身への憤り、政治の不甲斐なさや体たらくに対して怒りが湧いてきました。

 この状態を変えるには、自公を引きずりおろして、選挙でやるしかないんですよね。しっかりやらなきゃいけない、という思いを新たにしました」

■ハイライト

  • 内容
    • 原発事故被害者はいま~住宅・保養・健康…いまこそ立法を!
    • 原発事故被害者からの報告
    • 手をつなごう!立ち上がろう~原発事故被害者団体連絡会 設立の報告
  • 発言者 武藤類子氏(福島原発告訴団団長)、吉田千亜氏(ママレボ)、宇野朗子氏(福島市から京都府に避難)、矢野恵理子氏(福島ぽかぽかプロジェクト)、満田夏花氏(FoE Japan)、坂本建氏(富岡町から神奈川へ避難)、磯貝潤子氏(郡山市から新潟市へ避難)、宍戸隆子氏(伊達市から北海道へ避難)、佐藤和良氏(いわき市議会議員)

「都内の人は関係ないですか?」「福島の子どもたちだけがこんな思いをすればいいですか?」

 「福島では、まだマスクをして学校に通う子どもがいるのをご存知ですか。土地が奇麗になったわけではないのです。周りの考え方だけが変わってしまったのです。

 子どもたちの健康を守りたいだけなのに、『復興』という言葉だけで子どもの健康が害されようとしています。甲状腺がんの子どもの数が増えていました。都内の方は関係ないですか? 人ごとですか? 福島の子どもたちだけがこんな思いをすればいいですか。

 現実をよく見てください。楽しいことだけじゃない。辛いことがまだまだ福島にはあります」

 郡山市から新潟県に避難している磯貝潤子さんは、デモ行進でマイクを取り、涙ながらにこう訴えた。母子避難している磯貝さんの周りには、経済的事情から、不本意ながらも福島に戻らざるを得ない家庭が増えているという。そんな中、2017年3月に自主避難者に対する住宅支援を打ち切ることをほのめかしている福島県。母親たちに追い打ちをかける。

 「暮らしていた土地を放射能で汚され、勝手に安全の基準を変えられて、元に戻すでもなく『安全です』と言う。住むことも、避けることも自由なはずなのに、唯一の住宅補償を勝手に終了するつもりの国と県。本当に勝手です。勝手すぎます」

 磯貝さんは、「ずっと補償が欲しいわけじゃない」と続け、自主避難者が生活を立て直すまで、加害者である東京電力と国は補償すべきだと訴えた。

▲「都内の方には人ごとですか?」街頭で涙ながらに訴える磯貝潤子さん

2020年の東京オリンピックまでに、原発事故も被害者も消される!?

 国は2017年3月までに避難指示区域の全面的な解除を目指している。解除されてから1年間は賠償が継続するが、裏を返せば、賠償は2018年3月で終了ということになる。また、福島県は、自主避難者向けの住居無償供与を2017年3月で打ち切ると示唆しており、国の帰還政策がここへきて、一気に加速している。

 請願デモに先立ち行なわれた集会でスピーチした多くは、母子避難中の母親たちだ。事故直後からその母親たちに寄り添い支援を行なってきた、いわき市議会の佐藤かずよし議員も登壇。国の帰還政策の目論みについて、持論を展開した。

 「4年後には、原発事故はなかったことにされようとしている。2020年のオリンピックまでには、被害者はいないという現実に晒そうとしている政府や官僚。これからの局面を粘り強く、全国で声をあげ闘いたい」

「年間20ミリシーベルトを世界基準にしてはダメだ」

 国は、避難区域を指定した当時、「解除の際には住民の理解を得ること」を約束している。しかし、国はこれまで、幾度となくこの約束を反故にしてきた。中には、強制解除を不服とし、訴訟問題へ発展した例もある。国際環境NGO・FoE Japanの満田夏花氏は、これまで解除になった地域の事例を挙げながら、国による一方的な測定と一方的な解除に対し、憤った。

 「伊達市の小国地区に関しては、解除の際、住民説明会すら開かれませんでした。『ニュースで知った』という声もあった。国は一方的に測定し、一方的に解除してきたのです。

 2011年に避難指示が解除された田村市都路地区は、解除されてから何年も経っているのに、いまだに仮設暮らしの方がたくさんいます。特に若い夫婦は戻っていません」

 満田氏は、帰還や補償の基準になっている、「年間20ミリシーベルト」問題に言及。「20ミリシーベルトは安全だと言った専門家は一人もいない」という2011年の原子力安全委員会の答弁を紹介し、社会的合意もないままの基準の強要は許されないと説明した。

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「「安全基準を変えて、支援を打ち切る国は勝手すぎる」原発事故被災者の声の叫び――150人の市民らが集会と請願デモで12万筆の署名を国会に提出」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「安全基準を変えて、支援を打ち切る国は勝手すぎる」原発事故被災者の声の叫び――150人の市民らが集会と請願デモで12万筆の署名を国会に提出 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/246988 … @iwakamiyasumi
    ひどい、酷すぎる。血も涙もないのか、これで国か、それでも人間か。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/603879760977068032

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