「『自主避難者への住宅提供、2年後に終了へ』福島県が方針」
自主避難者が最も目にしたくない見出しが2015年5月17日、朝日新聞の誌面を飾った。
2011年3月の福島第一原発事故による放射能汚染の影響で、政府からの避難指示を受けずに避難した自主避難者について、福島県などの自治体は「災害救助法」に基づき、県内外の民間アパートを借り上げ、無償で提供している。
福島県は、その住宅供与を2017年3月をもって終了するため調整に入ったことが、朝日新聞によって報じられた。報道の2日前の5月15日、「避難生活を守る会」の鴨下祐也さんらは福島県庁を訪ね、住宅支援の長期延長を求め、4万5千筆近い署名を提出したばかり。
対応にあたった職員は署名提出を受けて、「同じ福島県民なので分かっていますよ」と回答したというが、それから2日後に、福島県が住宅供与打ち切りを検討していると報じられたことについて、鴨下さんはショックを受けたと話す。
「裏切られたという気持ちでした。(住宅提供の打ち切りは)まだ決定ではないので、ひっくり返ることを期待しています」
- 内容 避難先住宅の無償供与の打ち切り~何が問題か、何が必要か/避難者当事者の声
- 発言 加藤裕子氏(福島から京都に避難)、鴨下祐也氏(福島から東京に避難)、河崎健一郎氏(弁護士、福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク)、満田夏花氏(原発事故子ども・被災者支援法市民会議世話人、FoE Japan理事)、関東への避難者数人が発言
庭の土は8000ベクレル超え「避難を続けている意味はある」
鴨下さんは、福島県いわき市から東京に避難中だ。いわき市は、政府からの避難指示を一度も受けていない地域だ。しかし、それでも自宅の庭からは1キロあたり8000ベクレルを超える土が出たという。
「庭の土は、指定廃棄物基準の8000ベクレルを軽く上回ります。家の中を掃除すると、今でもセシウムがついてきます。東京ではつきません。避難を続けている意味はあるのです。
避難を続けている人は、福島に自宅のある人がほとんどです。その自宅を放り出して逃げざるを得ない状況は、ただごとではありません。避難生活にはいろいろと困難なことがありますが、それでも避難を続けているのは、生半可な気持ちではありません。
住宅支援が打ち切りになったら、路頭に迷う状況になりかねない。万単位の人が、打ち切りの決定で混乱に陥ると思います」
住宅の無償供与打ち切りで、避難生活を諦めざるを得ないケースが相次ぐことを鴨下さんらは懸念する。福島原発事故前、公衆の被曝限度は年間1ミリシーベルトだったことは揺るぎない事実だ。しかし、政府は、今、その20倍にあたる「年間20ミリシーベルト」以下であれば、「健康に大きな影響はない」とし、20ミリ基準で住民の帰還促進政策を推し進めている。
支援打ち切りの責任者は内堀福島県知事
「なぜ、『福島県』が主語になっているのか」
事故直後から原発被災者の支援に関わり、「子ども・被災者支援法」の成立に関わってきたSAFLANの河崎健一郎弁護士が、朝日新聞の誌面を紹介し、打ち切りを検討しているのが国ではなく「福島県」であることを強調した。
「区域外避難(自主避難)に対する、政府の公式な支援は、この国には一切、存在してきていないのが現状です。私たちは、公衆の被曝限度である1ミリシーベルトを超える地域から避難している人であれば支援すべきだと、何度も政府に要請してきた。
そして、3年前、まさに『子ども・被災者支援法』ができた。しかし、法律で謳われた住宅や医療支援が現実化することはなかった。そこで、唯一、自主避難者にとって経済的なメリットとなったのが、災害救助法に基づき民間賃貸住宅を借り上げた形での、『みなし仮設住宅』です。それが、今、打ち切られようとしています」
災害救助法は、地震や台風、津波などといった自然災害を想定した法律で、幅広に条文が定められていることから、今回、原発事故による自主避難者にも住宅支援が適用されたという。災害救助法に基づく支援の一義的な責任者は、県知事である。福島県の内堀雅雄知事は、どのような根拠で打ち切りの措置を取ろうとしているのか。河崎弁護士は県知事の判断を「拙速すぎる」と批判した。
「これだけ大きなことを突然打ち切るということは、あまりにも早い。県が昨年(2014年)実施し、この4月に公開した避難者の意向調査では、借り上げの延長を希望する人も増えているのに、(打ち切りを)正当化する根拠はどこにあるのか」
▲SAFLANの河崎健一郎弁護士
東電は黒字なのに・・・ なぜ、国は東電に求償しないのか?
続けて、河崎弁護士は、住宅の無償供与で国が立て替えた金額を、政府がいまだに東京電力に請求していないという事実に言及。災害救助法では、災害の原因者がいる場合、原因者に立て替えた分の費用の求償が可能。つまり、自主避難者に無償で提供した住宅費用を、国は東電に請求することができるのだ。
しかし、今年2015年1月、「みなし仮設住宅」の家賃を、国がいまだ東電に請求していないことが発覚。これを報じた毎日新聞の記事について、河崎氏は「重要なスクープだった」と説明した。
「国が自主避難者に提供した住宅の無償供与でかかった数千億円を、東電に求償すべきなのにしていない。国民の税金を使って、国が立て替えたお金を東電に求償するのは当然のこと。なぜ、渋っているのか」
今回の福島第一原発事故の自主避難者に対する差別的な決定は、いまだに続いている原発事故による
地域市民の「人間の安全保障」の権利を蹂躙するものです。東電の責任を隠蔽し、原発事故が現在も進行
していることを認めないための姑息な策のために、原発再稼動の推進のために犠牲になっている被災地の自主
避難者の皆様に日本全土の市民が連帯の意を表明する必要を痛感します。 (武者小路公秀)
福島原発事故「自主避難者」3万人以上が路頭に迷う恐れ 住宅無償供与が2017年3月で打ち切り!? 〜撤回を求め、避難当事者らが緊急集会 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/246317 … @iwakamiyasumi
支援打ち切りの責任者は内堀福島県知事。東電は黒字なのに、何故だ?
https://twitter.com/55kurosuke/status/603166978228944897