グローバル資本の論理に対して如何に抵抗するか 「TPPと国家戦略特区は憲法違反」~ 岩上安身によるインタビュー 第463回 ゲスト TPP交渉差止・違憲訴訟の会・山田正彦氏 2014.10.6

記事公開日:2014.10.8取材地: テキスト動画独自
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(平山茂樹・富田充・佐々木隼也)

特集 TPP問題
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 元農林水産相の山田正彦氏と岩月浩二弁護士が呼びかけ人となり、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が違憲であることの確認と交渉の差し止めを求める「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」準備会が2014年9月24日、発足した。

 同会は現在、違憲訴訟の提起に向け、呼びかけ人を募るなど準備の段階だが、10月6日に都内で岩上安身のインタビューを受けた山田氏は、違憲訴訟の目的や、TPP交渉の今後の見通しなどについて落ち着いた口調で語り、万全の体制で作業を進めていく考えを伝えた。

 約2時間半のインタビューで、山田氏の語気に力強さが増したのは中盤に入り、西川公也農水相が話題に上った折のこと。山田氏が大阪のテレビ番組に西川氏と一緒に出演した時、楽屋で西川氏に対して「このままTPP交渉を進めていったら、日本の、家族経営の農家は全部潰れてしまう」と迫ったところ、西川氏は「今の農家は潰していい。これからの農業は家族ではなく、株式会社がやればいい」と明確な口調で返してきたという。

 これを聞いた岩上安身は、「日本の農家のみなさんは、今の山田先生の発言を、どんどん周囲に言いふらしてほしい」と怒りをあらわにし、「自民党は日本の農家を守る気など、端から持ち合わせていない」と言明した。

 山田氏からは、自民党は日本の農家を意図的に潰そうとしており、そこには「核のゴミ」の廃棄場所の確保という、隠れた狙いがあるのではないか――との言及もあった。山田氏によると、これまでにも廃業した農家が農地を産廃業者に売却するケースがあるという。岩上安身は、安倍政権が推し進めている農業民営化により、企業が農地を購入しやすくなることで、核のゴミ捨て場が日本のあちこちに誕生するのではないか、と懸念を示した。

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■イントロ

■全編動画

  • 日時 2014年10月6日(月) 15:00~
  • 場所 山田正彦事務所(東京都千代田区)

宇沢弘文氏の絶筆「私もTPP違憲訴訟の呼びかけ人に」

岩上安身(以下、岩上)「先日、TPP違憲訴訟の準備会が記者会見を開かれました。私も、呼びかけ人に加えさせていただいています」。

山田正彦氏(以下、継承略)「TPPについて、最初に問題にされたジャーナリストが、岩上さんでしたね。 最近、亡くなられた宇沢弘文さんのはがきがあります。亡くなられたのが18日で、このはがきの消印は12日になっています。体調のことがあり、参加はできないけれども、呼びかけ人に加えていただけたら、とのことでした。 TPPについて、最初から、農業の問題に限られず、国家主権の問題だと言っていたのは、宇沢弘文先生と岩上さんでしたね。民主党がああいう形で負けて以来、多くの弁護士の方と勉強会を重ね、8月には合宿までやって、今回、違憲訴訟を起こすことになりました」

TPPには大半の米国民も反対 それでも推進する”売国政治家”安倍総理

岩上「TPPは、どのような点で違憲なのでしょうか」。

山田「TPPは、日本の国会議員がその内容を知らされていないのです。国会は、国権の最高機関ですよね。しかし、政府はこれを結んでしまおうとしています。USTRのカトラー氏から聞いたのは、TPPでは米韓FTA以上のものを求める、というものでした。 韓国はまず特区で、株式会社の病院を作り、農協も解体されました。国家戦略特区で一番大きいのは、雇用特区でしょうね。それから教育特区で一番怖いのは、大企業に教育をビジネスの機会として与えることです。お金がなければ、教育が受けられなくなってしまうかもしれません」

岩上「教育の改悪が行われた場合、小中高大、数千万のお金がかかるようになります。普通の世帯は学校に入れられません。そうなると、教育ローンがのさばることになります。国家戦略特区は、自民や維新だけでなく、都知事選では細川さんも推進でした」

山田「雇用特区は、40、50代の働き盛りを過ぎたら、解雇してしまって外国人労働者を入れてしまおう、というものです。憲法で保障されているものの例外を作ろう、ということですね。 2013年2月、安倍総理がオバマ大統領と会談した際、日米並行協議で米国の要求を飲む、という約束してしまいました。それが、国家戦略特区です」

岩上「安倍総理は、日本を米国に丸々売り渡そうとしています。まさに売国政治家ですよね」

山田「米国の国民の78%がTPP、自由貿易に反対しています。民主党もほとんどの議員が反対です。米国は、NAFTAで、メキシコからより安い労働者を入れた、という経験があります。日本の雇用特区は、これと同じことをしようというものです」

西川公也農水相が山田氏に放った一言「農業は企業がやればいい」

山田「オバマ大統領が来日したとき、フロマンと甘利大臣が徹夜で協議しました。そうすると、農産物の関税で合意したと読売新聞の報道が出ました。しかし、ジェーン・ケルシー教授によると、農産物では既に日米で話ができている、今やっているのは砂糖だ、ということでした。 最近、フロマンが記者会見をして、10月中に関税の詳細を明らかにする、と述べました。ということは、ほぼ決まっているのではないか。あの時の読売の報道は、ガセネタじゃなかったんじゃないでしょうか」

岩上「孫崎さんに圧力をかけた大西英男議員という人がいますが、彼は私のインタビューの中で、『段階的に関税を撤廃する。自民党の全議員がそう思っている』と言いました。JAの人達は、こういう嘘に騙されてきました」

山田「シンガポール閣僚会議で、JAの萬歳会長と会いまして、『条件闘争に入っちゃだめじゃないか!』とやりあいました。自民党の議員に、もう一回、踏み絵を踏ませる必要があるんじゃないか、と。全中が本当に動けば、自民党も暴言が吐けないのではないでしょうか。 大阪のテレビ局で西川公也現農水相が、私に対して『今の農家は潰していいんだ。農業は企業がやればいいんだ』と言いました」

岩上「先日、ドイツに取材に行ったのですが、TTIPが強く懸念されています。ドイツは労働者の保護が徹底していて、しっかり休む。それでも、経済成長をしています。そんなドイツで、Googleが白タクをやっているんです。違法だと分かっていてもやるのです 韓国でも米韓FTAは軍事とセットでした。ドイツでも、TTIPはウクライナ情勢とセットになっています。日本も、尖閣とセットになっています。米国に守ってもらわなきゃ、という理屈で、経済ブロックに組み込まれていくわけです」

過疎地域が意図的に作り出され、そこが核のゴミ捨て場にされてしまう

<ここから特別公開中>

岩上「TPP交渉の行方はどうでしょう」。

山田「オーストラリアの貿易相も日本の年内基本合意は無理だろう、と言っています。甘利さんはどこまで突っ張るんでしょう…。突っ張らないでしょうね。

日本はどこまで譲歩しているのか。農産物では既に譲歩して、韓国のように食料は米国に頼ると、日本は踏み切るんじゃないでしょうか」。

岩上「いかにも頑張っているかのようなお芝居が、政府とマスコミによって続いているだけでしょう。

弁護士会は、ローンの問題に対して戦ってこられましたね。多重債務化の問題が深刻です」。

山田「みんなサラ金で、腎臓を売れとか、大変な時代がありました。利息制限法でようやく落ち着いてきたのに、自民党は元の利息に戻せ、と言い始めました」

岩上「カジノ特区ができようとしています。パチンコだけでも問題なのに。今のサラ金は、銀行の傘下です」。

山田「中小企業は、本当に苦しい。そういうところに、高金利で貸し込もうとしているわけですね。大企業支配で、一般の人は借金漬けになってしまいます」

岩上「農協について。安倍総理が『現行の中央会制度は存続しないことになる』と発言しました」。

山田「米韓FTAの時、韓国の農協は非常に激しく抵抗しましたが、抵抗勢力だということで解体させられてしまいました。日本でも、同じことが起きます」

兼業農家をすべて潰し、大企業が遺伝子組換え作物を栽培するようになるでしょう。大変なのは、日本の農地の7割を占める中山間地域です。日本の先祖が弥生時代から守ってきた稲作の文化を壊してしまうことになります」

岩上「西川公也さんというのはどういう方なのですか」。

山田「本当にひどい人ですね。私が『TPPけしからんじゃないか』と言ったら、『失敬だ!』と。

彼は落選している間、農協からずいぶんと援助されていたんですね。農協はもうちょっと考えてほしいなあ…。萬歳さんは『農協はつぶさせない』と言っていますけど。韓国と同じように、潰されてしまいますよ。中央会解体だけでなく、農協そのものが解体されてしまいますよ。

過疎地域を意図的に作り出して、そこを使用済み核燃料のゴミ捨て場にしよう、ということなんでしょうね」

岩上「人と農地がなくなって、核のゴミだけが日本列島に残っていく、ということですね」

山田「TPPによって、農業よりも漁業が大変になる。沿岸の漁業権が入札にかけられ、大資本が買う。そうなると乱獲が起こって、魚がいなくなってしまいます。ケルシー教授は、NZの漁業もこれでやられた、と仰りました」

岩上「この問題は、築地の市場移転と関係があると思います。流通が大規模化し、日本の小さい市場が消えていってしまいます」。

山田「宮城県が既に、『水産特区』で漁業権を民間企業に開放しました。米国支配、米国のグローバル企業支配、これがTPPです。最後に、TPP交渉差止め訴訟の話をします。TPP交渉における秘密保持契約に関する文書やISD条項に関する文書などを開示するよう求めています」

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「グローバル資本の論理に対して如何に抵抗するか 「TPPと国家戦略特区は憲法違反」~ 岩上安身によるインタビュー 第463回 ゲスト TPP交渉差止・違憲訴訟の会・山田正彦氏」への3件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    TPP交渉差止・違憲訴訟の会・山田正彦氏インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/174900 … @iwakamiyasumi TPPというのは分かりやすくいえば「国を売る」売国政策です。テレビや新聞が全く伝えないTPPの危険性を知ることが出来る貴重な対談。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/520522038608269313

  2. @shimichan2012さん(ツイッターのご意見) より:

    マスコミが報道しないTPPの内容を一人でも多くの人に知ってほしい。経済植民地化・小作農化・漁業権奪取・・・「TPPと国家戦略特区は憲法違反」~TPP交渉差止・違憲訴訟の会・山田正彦氏インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/174900 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/shimichan2012/status/520711973319610368

  3. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    グローバル資本の論理に対して如何に抵抗するか 「TPPと国家戦略特区は憲法違反」~TPP交渉差止・違憲訴訟の会・山田正彦氏インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/174900 … @iwakamiyasumi
    TPPで核のゴミ捨て場?非常に大事な話です、最後まで見てほしい。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/521857063354249216

@shimichan2012さん(ツイッターのご意見) にコメントする コメントをキャンセル

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