「TPP秘密交渉は憲法21条『知る権利』を侵害! 1万人原告団で提訴する」 〜山本太郎氏×山田正彦氏 2014.9.21

記事公開日:2014.9.26取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

特集 TPP問題
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 農林水産大臣時代から、いち早くTPPの危険性を見抜き、反対し続けてきた山田正彦氏は、「アメリカの制度に合わせて、国を作り変えることが、TPPの本質だ。環境も食の安全もアメリカ基準に統一させられる」と警鐘を鳴らした。

 2014年9月21日、福岡市中央区の福岡市民会館で、元農水相でTPP(環太平洋経済連携協定)反対の論陣を張る山田正彦氏と、山本太郎参議院議員を招いて、「9.21 山本太郎×山田正彦『本当の事しゃべっちゃいます』」が開かれた。会場から活発な意見が相次ぐ中、秘密交渉が進むTPP問題を中心に議論が繰り広げられた。

 山田氏は、自身が呼びかけ人となって、TPP交渉の差し止めと違憲確認の集団訴訟を行うと表明。

 「TPPは、憲法21条『知る権利』を侵害するので憲法違反。1万人原告団で、TPP差し止め訴訟をする。11月に設立総会を行う予定だ。特に、消費者や若者に原告団の中心になってもらいたい」と呼びかけた。

 山本氏がTPP交渉の現状を問うと、山田氏は「今は行き詰まっている。アメリカ国民の7割はTPP反対だ。しかし、アメリカは大統領選挙を控えているので、今年の年末までに基本合意をしたくて焦っている。これを、なんとか止めたい」と力を込めた。

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■全編動画(19:03~ 2時間12分)

  • 山田正彦氏(元農林水産大臣、弁護士)/山本太郎氏(参議院議員)

「高すぎる日本の法人税」だったはずが…

 はじめに、8月下旬から全国を回って街頭演説を続けている参議院議員の山本太郎氏が登場した。街角で足を止めてもらうためには、多くの人に当てはまることから話をすると言い、「まず、税金のこと。次に雇用の話。自分の言いたい原発や被曝のことは最後。そうすると2時間近く話し続けることになる。そういう全国キャラバンを始めて、やっと福岡まで来た」と話し、このように続けた。

 「これからは税金をどんどん取られます。消費税はすぐ10%になるし、携帯電話にも課税される。税の負担は増えても、受けられるサービスは減る。政府は、社会保障のために消費税を3%増やす、と言っていたはず。でも、大企業の大減税のために使うんです。聞いてないですよね?」

 日本の法人税は35%の実効税率で、世界でも高いので減税するという説明だったので、35%の税率で払っている企業名を出すよう、山本氏が財務省に求めたところ、「ひとつも存在しない」との回答だったという。

 「それなのに、さらに大企業の減税をしてあげるために、(消費税増税で)われわれが尻拭いをさせられる。こういう話を、街角でしています」と語り、ゲストの元農林水産大臣、山田正彦氏をステージに呼び込んだ。

TPPは憲法違反、差し止め訴訟へ動き出す

 山田氏は、9月19日の東京新聞夕刊『TPP命と暮らし脅かす』というトップ記事を見せて、「1万人原告団で、TPP差し止め訴訟をする」と表明。自身が呼びかけ人となって、TPP交渉の差し止めと違憲確認の集団訴訟を行うという。山田氏は、「TPPは憲法違反で、国のかたちを変えるものだが、違憲訴訟となると、たいていの弁護士は尻込みする。しかし、今回13人の弁護士と勉強して訴訟の目処がついた」と意欲を示した。

 TPPの影響について、山田氏は「アメリカの制度に合わせることが、TPPの本質だ。環境も食の安全も、アメリカの基準に統一させられる。遺伝子組み換え表示はできなくなる。農業だけの問題ではない。医療戦略特区で混合治療を始めるが、医療保険の会社が儲かるように、治療も健康保険適用外に差し替え始めるだろう」と述べ、「農水大臣の頃から、TPPには猛烈に反対していた」と語った。

 山本氏がTPP交渉の現状を問うと、山田氏は「今は行き詰まっている。アメリカ国民の7割は反対だ。オーストラリアでも医療費が3倍になると反対している。マレーシア、チリ、ベトナムも反対。しかし、アメリカは大統領選挙を控えているので、今年の年末までに基本合意をしたいのだ。そのために焦っている」と答えた。

 山田氏は続けて、「今、各国の新聞は、オバマ大統領が10月に日米の農産物と自動車の関税交渉の詳細を明らかにする、と報じている」と述べ、それはTPPの内容が決まったという意味なので、今年中に締結するつもりではないかと懸念を示し、「なんとか止めたい」と力を込めた。

 また、「このことは各国のメディアが報道しているのに、日本のマスコミは一切報道しない。日本政府が『あれはガセネタだ』と言っているそうだ。特定秘密保護法が施行され、朝日新聞が叩かれ、いよいよメディアは何も書けなくなる」と懸念を口にした。

衆議院解散は50%の確率で「ある」

 このあとは会場にマイクを回し、参加者から質問を受けながら進行していった。参加者の男性は山本氏に「考えを同じくする議員、有識者やメディアも巻き込んで、大きな政策提言集団のようなグループを立ち上げてほしい」と要望した。

 山本氏は「自分は『過激』と見られているので、一緒にやろうという人は勇気が必要かも」と笑わせつつ、「しかし、毒物をバラ撒いて安全だと言っている奴らが、もっとも過激ではないか。一番のテロリストたちが愛国者のふりをして、日本を切り売りしている。『保守』と言われる人たちが、日本を経済的植民地へと導いている」と訴えると、会場から拍手や声援が上がった。

 また、小沢一郎氏(生活の党代表)について感想を求められると、山本氏は「小沢さんは、権力側から危険視されて陥れられたが、それに負けず、野党を再編して闘おうとしている。その姿勢を尊敬する」と答えた。

 衆議院解散の確立は50%ある、という山本氏は、「安倍政権の支持率が落ちてきている。長期政権を狙うなら(支持率がまだあるうちに)早く解散するだろう。そして、切り札として北朝鮮拉致被害者の返還を用意していたのに、北朝鮮に意図を読まれて振り回されている」とした。

 山本氏は「小沢さんは、小選挙区で自民対野党の対決構造を作るというが、TPP、増税、集団的自衛権にも賛成する第2、第3自民党のような野党ばかりで一致するところがない。どうしたらいいのか」と山田氏にアドバイスを求めた。

 山田氏は「みんな同じ思いだ。まだまだ時間はかかると思うが、山本太郎くんや三宅洋平くんなどの若い世代に期待している」と述べ、自身が主宰する「炉端政治塾」にも全国から参加者が集まっていることに期待を寄せた。

市民ができる政治活動「隣の人に話すこと」

 放射能の影響についての質問が出たところで、山本氏は震災当時の様子を、政権与党にいた山田氏に尋ねた。山田氏は「その時、議員会館にいたが、原子炉の設計者が『6時間後は危ない』と真っ青になっていた。私の原発に対する認識がまったく変わった。官邸もすごい危機感で、東京以北がダメになると、皆が思っていた」と振り返った。

 山本氏は「原発事故が収束もしていないのに、東京オリンピックが決まって仰天した。いまだに仮設住宅に9万人も暮らしているのに。そんなお金があるなら、収束作業に注ぎ込んでくれと言いたい。実は政治家たちは、みんなわかっている。わかった上で『今だけ、金だけ、自分だけ』なのだ」と断じた。

 そして、参加者から「具体的に何から始めたらいいのか」と問われると、山田氏は「それぞれができることを、行動するしかない」、山本氏も「基本は、仲間を増やすこと」と答えた。仲間づくりには署名活動やデモ、インターネットを駆使することも効果があると、2人はそれぞれの体験を語った。

 「市民レベルでできる政治活動は?」との問いには、山本氏は「隣の人に話すこと」と即答。また、全国キャラバンで語っているような、多様な問題をまとめたウェブサイトを求める声には、「残念ながら、そこまでの人手がない。今回の街宣チラシ『永田町恐怖新聞』を作るだけでも目一杯」と明かし、「情報の一元化などを、有志の方で進めていただければありがたい」とした。それに対して、ほかの参加者からお勧めサイトの紹介などがあった。

 また、山本氏の街頭演説を書き起こしたという女性は、「自分は放射能を避けて宮城県から九州に移住したが、地元に残った友人たちに伝えたくて、書き起こしをネットに載せた。それを読んだ自分の母親も理解してくれるようになった」と発言した。

プロバイダーやインターネットまでも規制するTPP

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 再びTPPの話題に戻り、山田氏は知的財産権について、「まだ、まとまっていない。TPP条約29項目中、20項目がまとまっていないのだ。アメリカはTPPで知的財産権を使って、プロバイダーやインターネットまでも規制しようとしているが、マレーシアなどは反対している」と話す。

 また、ISD条項については、「ドイツが原発廃止を決めたことで、スウェーデンの原発会社から3800億円を要求され、韓国も訴えられた。日本でも、今後、脱原発の政策はできなくなる」とした。

 さらに、山田氏は「アメリカでは、TPP発効の権限は連邦議会が持っている。日本や他の締結国にはTPPを発効させておいて、アメリカだけ止めておくこともできるのだ。これも、まったく報道されない。TPPは国のあり方を変えてしまうのに、秘密交渉なので中身がわからない」と語った。

 山本氏が「秘密交渉なら、アメリカより早くTPP交渉に参加していた先発国が、自分たちに有利に内容を決められるのではないか」と尋ねると、山田氏は「(そういう主張は)アメリカは無視する。相手にしない」と苦笑し、11月交渉締結の見通しに改めて危機感を表明。次のように続けた。

 「交渉内容の変更は、逐次、NGOが追っているが、国民に知る権利はない。国会で批准しても、国会議員などの関係者は、4年間その中身を明かすことはできない。もし、誰かが内容をバラしたら、秘密保護法で報道した方も逮捕される」。

TPP阻止100万人訴訟を目指せ

 山田氏は「大飯原発再稼働差し止め訴訟では、憲法13条の人格権を侵害するとして違憲判決が出た。TPPでも、憲法21条『知る権利』を侵害するので憲法違反だと、われわれは主張して提訴する」と話す。

 そして、準備中のTPP違憲訴訟1万人原告団について、「現在、6名の国会議員から賛同を得て、11月に設立総会を行う。特に、消費者や若者に原告団の中心になってもらいたい。なんとか、これを全国に広げて大きな運動にしたい」と力説。会場の参加者にも協力を求めた。

 山本氏は「数が集まればマスコミが取り上げる。10万人、100万人訴訟にしましょう」と応じた。そして、「(国会議員になっても)街頭演説をしていると、市民運動家とヤジられる。しかし、街頭演説は政治家の王道、一番古いスタイルだ。自分が選挙に勝てた理由も、1000人を超えるボランティアが動いてくれたおかげ」と述べ、人に直接呼びかけることの重要性を説いた。

たかが山本太郎だけれど

 山本氏は「自分が議員になった意義は、『新規参入お断り』みたいな政治の世界でも、みんなの力を集めれば、既存の政党に頼らずに国政で1議席もぎ取れると証明したこと。たかが山本太郎、素晴らしいアイデアや能力があるわけではない。僕をどう使うかは、皆さん次第」と語る。

 そして、「同じように、たかが自民党の議員、民主党の議員なんです。政治や議員に期待するのは、もう終わり。それに頼ってきたから、こんな世界になった。政治が機能停止になっているから、こんな自分をみんなが応援してくれた」と続けた。山田氏は「太郎くんのように、自ら考えて行動する国会議員はいなくなった。こういう本音を言える人がいることが、大事なことだ」と応じた。

 再び質問に移り、TPPの有機農法への影響について問われると、山田氏は「まず、食品表示の問題。アメリカ産の食品が不利になるからと、国産表示を禁止しようとしている。有機栽培も同様だ。食の安全は、かなり厳しくなるだろう」と答え、「米韓FTAでは、韓国の学校給食に、アメリカの食品企業が参入することが目的だった」とも話して、重ねて懸念を表明した。

 また、今年12月に施行される特定秘密保護法について、山本氏は「すぐに手荒なことはせずに、数年かけて取り締りを強めてくるのではないか」とし、山田氏は「TPPは、まさに秘密保護法の対象だ。『TPP秘密交渉の正体』という本を出した私は、逮捕第1号になるかもしれない」と笑った。

 対談終了後、会場にいた歌手の石川セリ氏が短くスピーチをした。また、来春の統一地方選挙の立候補予定者が2人名乗り出た。山本氏が「今、ここで皆さん、つながってください」と呼びかけると、この日の日付をタイトルに使った「山本太郎921福岡」というFacebookのグループの立ち上げが即座に決まるなど、会場は最後まで熱気に包まれた。

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