【岩上安身の「ニュースのトリセツ」】「ヒトラーは解放者だ」キエフ新政権任命の知事、ナチス賛美の演説 ~分裂と虐殺と内戦の大地、ウクライナ民族主義者の正体

記事公開日:2014.7.20 テキスト
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(文:ゆさこうこ・岩上安身、文責:岩上安身)

特集 IWJが追う ウクライナ危機
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 ウクライナで起きていることは、日本から遠く離れた、あまり我々に影響をおよぼさないはるかな異国の出来事、としか感じられない人は少なくないだろう。

 だが、これからはそうはいかない。海外で、外国による戦争に日本が巻き込まれてゆく集団的自衛権行使容認に向け、安倍政権は大きく一歩踏み出した。

 「海外で」とは、日本の周辺とは限らない。地球の裏側まで、日本の利害や国益や安全保障と何の関係もないエリアをも含む。

 また、「外国による戦争」とは、同盟国である米国が主体の戦争とは限らない。米国以外の国々が行う戦争であっても巻き込まれてゆく権利をこれから行使する、ということだ。

 すなわち、NATOが主体となり、ウクライナを戦場としてロシアと戦うとき、日本はそこに自動参戦する可能性が出てきた、ということなのだ。

なぜウクライナ連邦住民は、独立へ急速に傾いたのか

 5月11日、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州で、自治権の拡大の是非を問う住民投票が行われた。問われたのは、「あなたは、ドネツク人民共和国の国家的独立に関する法令を支持しますか」という、ただひとつの問いだった。

 事前に行われた各種の世論調査によると、東部の住民たちの約7割は、ウクライナ現状維持を望み、ウクライナにとどまることを求めているとされていた。東部のロシア語話者の人々も、その多くはウクライナからの独立、ロシアへの編入は求めていないと思われていたのである。クリミアにおける住民投票とは違う結果が出るというのが大方の予想だった。

 ところが蓋を開けてみたら様相がまったく異なった。投票所には多くの人々が押し寄せ、ドネツク州では75%、ルガンスク州では81%の投票率となった。開票の結果、ドネツク州では89%、ルガンスク州では96%が独立に賛成票を投じたと発表された。番狂わせの結果が出たと言っていい。投票率の高さも、独立を求める声の大きさも、である(※1)。

(※1)以上の数字はロイター、時事通信、毎日新聞の報道をもとにしたもの(記事のサイトはすでに削除)。

▲ドネツクでの投票の模様を伝える動画。男性は「まず、われわれ自身の国家を作るんだ。それからロシア連邦に加わる」と語った。ガーディアン「Ukraine: voters take to the referendum polls in Donetsk – video」

 こうした結果に対し、西側からは、「違法である」という批判がすぐさま上がった。また、不正を目撃したという声も多く聞かれた(※2)。

(※2)ホワイトハウスのカーニー大統領報道官は12日、住民投票に関して「ウクライナ法の下では違法だ」と述べた。(ホワイトハウス広報室より

 EUは12日、ブリュッセルでの外相理事会を開き、ロシアに対する追加制裁を決定した。ウクライナ東部での住民投票に関して英ヘイグ外相は、「住民投票は国際社会ではまったく信頼されていない。いかなる基準を適用しても違法だ」と報道関係者に話した。
ロイター通信 2014年05月13日

 毎日新聞によれば、仏オランド大統領は11日、「住民投票とさえ呼びたくない。まったく無意味。25日の大統領選だけが選挙だ」と述べた。

 不正に関しては、「賛成」の印が記入されていた投票用紙1万枚が押収されたほか、一人で複数回投票したケースが目撃されている。(サンケイBiz【ウクライナ情勢】東部「住民投票」 相次ぐ不正投票疑惑 2014.5.13 00:07)

 不正は部分的にはあったと思われる。しかしごくごく一般的な住民、家族連れの人々が投票所に長い列をつくったことも事実だ。彼らが全員、銃で脅されて嫌々並んだと考えるのは無理がある。

 その結果、事前の西側諸国の予想を大きく裏切る、大番狂わせの結果が出たこともまた事実なのだ。問うべきは、いったい何が起きたのか? という問いだ。どうして事前の予想はかくまで見事に覆されたのか?

住民の自決を認めないキエフと西側諸国、慎重な構えのロシア

 首都キエフの暫定政権は、東部の住民の「民意のあらわれ」に対し、即座に否定的な反応を示した。ウクライナのトゥルチノフ大統領代行は、この住民投票について、「ウクライナの状況を完全に不安化させ、大統領選挙を混乱させ、ウクライナ政府を転覆させるものだ」と非難した。

 欧米諸国もキエフ政権に足並みをそろえて同調した。OSCE(欧州安全保障協力機構)のディディエ・ビュルカルテ議長は、「ウクライナ憲法に違反したものであり、違法だ」と発言したが、これは西側の反応の一典型例である。

 こうしたキエフ新政権、および同政権を支持する西側からの批判をふりきって、12日、「ドネツク人民共和国」は、自らを、独立した主権国家であると主張し、ロシア政府に対して編入を求めた。

 「5月11日の住民投票の結果にもとづいて、我々ドネツクの住民は、ドネツク人民共和国が今後、主権国家であることを宣言する。ドネツク人民共和国の人々の意志に従い、そして、歴史的正義を回復させるために、我々はロシアに、我々の人民共和国のロシア連邦への編入を検討するよう求める」。

 この要請を、ロシアは即座に受け入れたわけではない。

 ロシアのラブロフ外相は、「キエフとドネツクとルガンスクとが対話を行いながら、住民投票の結果を実現するべきだ」と述べ、4月17日のジュネーブ合意の履行の必要性を強調した。ジュネーブ合意とは、OSCE(欧州安全保障協力機構)主導のもとでウクライナの安定を目指すとしたものだ。

ロシア軍はウクライナ国境から撤退していないと主張するNATOの証拠の疑問

 この住民投票に至るまで、どのような経緯をたどってきたか、少しふり返ってみよう。

 ロシアはウクライナ東部の領土を武力で割譲しようと狙っていると、疑われてきた。しかし、ドネツクとルガンスクで住民投票が行われる4日前の7日、ロシアのプーチン大統領は、投票の延期を要請しており、その発言の意図がどこにあるか、困惑と憶測を呼んでいた。

 他方、ドネツクとルガンスクの親ロシア派勢力は、プーチン大統領の提案を受け入れなかった。ドネツクの親ロシア派勢力のリーダーであるデニス・プシリン氏は、「内戦はすでに始まっている。住民投票によってこれを終わらせ、政治プロセスを進めることが可能になる」と述べ、住民投票を予定通り行うと発表した。

 プーチン大統領が住民投票の延期を提案したのは、OSCE(欧州安全保障協力機構)の議長国であるスイスのブルカルテル大統領との会談後の記者会見においてだったが、この会見でプーチン大統領はもうひとつ重要なことを明らかにしている。「ウクライナとの国境に配備していたロシア軍を撤退させた」と発言したのである。

 だが、この発言は、米国からは疑問視された。プーチン大統領の発言について記者会見で質問された米ホワイトハウスのアーネスト報道官は、7日、撤退が行われた証拠はない」と、にべもなく答えた。

 「国境付近からのロシア軍の意義深く明白な撤退は、当然、歓迎するだろう。我々がずっと求めてきたのはそのことだ。だが、今のところ、そうした撤退が行われたという証拠はない」とアーネスト報道官は述べ、さらに続けて住民投票は違法であると非難した。

 「5月11日の住民投票に関するプーチン大統領のコメントについては、我々は繰り返しこの住民投票が違法であると言ってきた。昨日、ケリー国務長官はこの住民投票について『偽物』だと言った。だから、我々は、この住民投票が単に延期されるのではなく、中止されるべきだと思っている」。

 同様にNATOのラスムセン事務総長も、自身のTwitterに、「ロシアがウクライナ国境から軍を撤退させたといういかなる兆候も見ていない」と書いた。

 ところが、ロシア軍のウクライナ国境からの撤退に関するプーチン大統領の発言は、このようなものだった。

 「ウクライナ国境近くのロシア軍が心配の種だと言われ続けてきた。私たちは、ロシア軍を撤退させた。軍は今、ウクライナ国境にはいない。演習場で通常の演習を行っている。今の諜報技術を使えば簡単に確認できる。宇宙から見れば全部見える」。

 プーチン大統領の言をすべて真に受けることはできないが、「宇宙から見れば全部見える」というのはもっともだろう。実際、NATOは4月には、ロシア軍がウクライナ国境地帯に終結したことを世界に示すために、衛星写真を公開して見せた。今回も衛星写真を公開すれば一目瞭然のはずである。

 するとNATOは、プーチン大統領からの批判にこたえるためであろう、5月12日に衛星写真を公開し、4万のロシア軍がまだウクライナ国境付近にいると主張した。ユーロニュースにNATOが公開した写真が掲載された。
euronews.com 13/05/2014

 だが、この「証拠」写真は、よく見ると、いささか拍子抜けするようなものだった。

 ひとつは、3月23日と5月12日のロシアのロストフを比較したものであり、「装甲車」と書かれている。だが、ロシアのロストフは、モスクワの北東にある都市だ。ウクライナの国境付近とはとても呼べない。

 もうひとつは、3月26日と5月9日のロシアのベルゴロドを比較したものである。確かにベルゴロドはウクライナ国境から40キロの距離に位置する。NATOが公開した写真には「まだヘリコプターがある」と書かれている。確かに写真には、ヘリコプターが写っている。しかし、ヘリコプターが残っていることが、「4万のロシア軍」が配備されていることを示すのだろうか。どうにも釈然としない。

マリウポリで起きていた「戦闘」の真実

 米国のケリー国務長官らは、住民投票がウクライナの法律に則して「違法」かどうかを問う前に、これが「戦闘」による流血のただ中で行われていたという「異常」さについて、まず、言及すべきだろう。

 住民投票が行われる数日前から、ドネツクの都市マリウポリでは「戦闘」が始まっていた。5月9日の衝突では、7人が死亡、39人が負傷したと伝えられている。

 ウクライナのアルセン・アバコフ内相が発表したマリウポリでの死亡者数はもっと多く、死亡者を20人としている。もっとも、アバコフ内相は、その死亡者たちを「テロリスト」呼ばわりしている。また、4人を逮捕したとも発表した。

 だが、それは本当に「テロリスト」との「戦闘」の名に値するものだったのだろうか。ウクライナ軍が「やむなく」発砲したのは、重武装し暴徒化した親露派の危険な過激派相手だったのだろうか?

 以下の動画では、ウクライナ軍兵士が、親ロシア派の住民に対して威嚇発砲をする様子が捉えられている。驚くべきことに、ウクライナ軍兵士は、銃を上に向けて打つのではなく、水平に構えて射撃している。むろん、実弾である。これは、とても「威嚇」などと呼べるものではない。

 対する住民たちは丸腰である。しかも先頭に立っている男性はたった一人で歩み寄り、言葉で抗議しているだけである。

 発砲する軍と、発砲される住民との「非対称性」が、くっきりと浮かび上がる。(動画URL:削除)

 人々が普通に歩いているマリウポリを、戦車が荒々しく通過していく様子も映像に残っている。戦車にはウクライナ国旗が掲げられている。(youtube動画

 他にも、下記の動画でロシアTVは、クラマトルスク市内の病院で、ウクライナ軍の攻撃により負傷した住民が治療を受ける模様を報じている。クラマトルスクも「戦闘」が行われたと報じられた地域だ。

 ロシアTVによると、ウクライナ軍の装甲車は、民間人の車を射撃し、乗っていた全員が即死したのだという。映像には、死亡した女性の生々しい血の跡が映しだされている。(youtube動画

 車は背後から撃たれていた。装甲車に突撃していたわけではなく、遠ざかろうとしていたわけである。そうした一般人の車を軍の装甲車が銃撃し、その銃弾は、車の後部からトランク、座席、そこに座っていた人々まで貫通した。

 後部座席に乗っていた女性は、何のために自国の国軍の兵士に殺されなければならなかったのだろうか。

 「戦闘」と先に私は書いたが、そう報じられている、というだけの話で、現場の生々しい映像などを見れば、それがとても「戦闘」などとは呼べない、一方的で無差別な「攻撃」であることがわかる。

 キエフ政府が市民に対して戦車や装甲車を使って弾圧を加えたのは明らかでありキエフ政権寄りの、OSCE (欧州安全保障協力機構)までもが、ウクライナ軍が親ロシア派の活動家や市民に向かって武力を行使したとして非難している。

 マリウポリの住民のひとりは怒りを込めてこう語っている。

 「ここで起こっていることは破壊行為であり、ジェノサイドだ。普通の市民が殺された。武器を持たず反撃することもできない市民に対して、どうして軍事作戦を行うなどということができるのか」。

生々しい証言と映像が語るオデッサの事件

 前回、【岩上安身の「ニュースのトリセツ」】オデッサの「惨劇」、緊迫続くウクライナ東部 米国はウクライナを「戦場」にするのか(IWJウィークリー48号より) で伝えたとおり、親ロシア派住民が立てこもっていた労働組合の建物に火が放たれ、少なくとも46人が死亡した。火を放ったのは親キエフ政府の右派セクターとみられている。

 「虐殺」と呼ぶ以外に表現のしようがない大事件である。

 この事件については、ウクライナ暫定政府による調査が行われている。その調査の最終報告はまだ発表されていないが、暫定的な発表では、火災が起きた原因は親ロシア派住民が火炎瓶を落とした過失である可能性が高いとされた。

 だが、その発表の信憑性は低い。火炎瓶が建物の外側から投げられた様子を撮影したいくつかのビデオの映像が、ウェブ上に出回っているからだ。建物の中にいた親ロシア派が火炎瓶を「落とした」のではなく、何者かによって外側から投げ込まれたのだ。

 この事件の生き残りたちの生々しい証言ビデオも、すでにウェブにアップされている。この証言では、暴漢が建物に押し入り、ほとんど武器を持たない親ロシア派の市民を銃や殴打で殺したことが明らかにされている。

 また、立てこもっていた女性が暴漢たちに廊下に引きずり出されたときに見たものは、多数の遺体だったと言う。暴漢たちは、遺体を地下室に投げ込んだ。この証言に従うと、火災発生より前に多くの人が殺されていたことになる。

 報道では、46人の死者のほとんどが一酸化炭素中毒によるものとされているが、それは事実ではない可能性がある。前回も取り上げたが、可能であるならば、以下のブログに掲載されている、焼け焦げた遺体の写真の数々を直視してほしい。多くの人が焼き殺されたのは歴然たる事実だ。いったい何がオデッサで起きたのか、すべて明らかにされなくてはならない。

 このブログにつけられたタイトル、「水晶の夜」にも注意を払いたい。

 ナチス政権下のドイツで1938年11月9日から10日にかけて、各地で大規模な反ユダヤ主義暴動が起きた。ユダヤ人の住宅や商店、企業、シナゴーグなどが襲われ、破壊され、火をつけられ、ユダヤ人たちが殺された。割れたガラスが路上に散乱し、水晶のようにきらめいていたことから、この血なまぐさい暴力の嵐は、「水晶の夜」(クリスタル・ナハト)と名づけられた。

 この虐殺と破壊の事件を契機に、ナチス・ドイツはたがが外れたように、ユダヤ人を根絶やしにしようとするおぞましいホロコーストへと突き進んでいった。

▲「水晶の夜、1938年11月 マグデブルク、破壊されたユダヤ人の商店」(ドイツ連邦公文書館より。Bundesarchiv, Bild 146-1970-083-42 / CC-BY-SA)。

「水晶の夜」を決行したナチスよりも大胆な右派セクターらの犯行

 先のブログでは、ウクライナ民族主義者による「オデッサの惨劇」が、ナチスによる恐るべき犯罪である「水晶の夜」に重ねあわされ、比肩されているわけである。その並置は、いくら何でもオーバーで誇張が過ぎるだろうと一蹴する人もいるかもしれない。だが、そうやって片づけてしまう前に、「オデッサの惨劇」のディテールをもう少しみてみよう。

 他のビデオでは、炎を上げる労働組合会館に向かって銃を撃つ男が映っている。この男が携帯電話で話す場面も撮られており、男は自らを「ソトニックのミコラ」と称している。「ソトニック」とは軍隊における階級呼称のひとつであるが、キエフのマイダンのリーダーたちもそう呼ばれていた。

 放火された建物の窓から逃げた人々も襲撃された。ロシア・トゥデイは、「過激派の手中に落ちることを怖れて、人々は労働組合会館を離れなかった」とも伝えている。しかし、逃げ出そうとしても、逃げられなかったのが真相のようだ。

 建物の屋根に隠れて生き残った人物の証言によると、「下に降りることができなかった。他の階にいた人たちが引きずり出されて、彼らを暴漢たちが狼の群れのように攻撃した」という。こうした一連の暴行によって死亡した人もいる。公然のリンチ殺人である。

 労働組合会館での火災より少し前に、他の場所でも火災が発生している。親ロシア派勢力の拠点があったクリコヴォ・ポーレ広場に火がつけられたのだ。その直後、労働組合会館では、入り口付近と5階で同時に火災が発生した。同じタイミングで複数の場所で火事が起こったということだ。

 放火は元から計画されていたのだろうか? それとも狙いすまして同じタイミングで放火した、ということなのか?

 いずれにしても、複数ヶ所で火が放たれたこと、そして、たまたま火炎瓶を「落とした」というレベルでは決して起きないであろう、大規模な火災になったことは間違いない。

 消防隊が到着したのは火災発生から40分後だという。火災は大勢の人が目撃しており、即座に消防署に通報されなかったはずはない。なぜこれほど遅い到着になったのだろうか。

 消防隊が到着してからも、消火に手間取った。消火ホースが何者かによって切断されたためだ。その間も、労働組合会館に向けた発砲が続けられていた。建物に残れば焼死する。外へ飛び出せば、撃たれて死ぬか、殴り殺される。追いつめられた人々にとって、地獄のような夜だったに違いない。

 こうした情報を総合的に考えると、右派セクターが親ロシア派の人々を銃などで殺害し、建物に放火し、まだ生き残っている人を狙撃し、建物から逃げようとする人々を殴り殺し、さらに鎮火を遅らせ、火災による死者を増加させたということになる。あらゆる手段を尽くして、大量虐殺を行ったのだ。衆人監視の中、カメラとビデオとネットによって、目撃の証拠が世界中に拡散されることを怖れる様子もなく。彼らは「水晶の夜」を決行したナチスよりも大胆ですらある。

 さらに、「一酸化炭素ではなく館内に放出した塩素か何かの他の有毒ガスによって中毒死した」という見方もある。ウクライナ副首相代行のヴィクトル・エリョーマ氏は、「何かの物質が燃えてガスを出し、そのガスが瞬く間に人体に作用し、彼らは意識を失って即死したのでしょう」と述べている。これは何をほのめかしているのだろうか。

 「オデッサの惨劇」による死者数は、ウクライナ政府が公式に発表した数は46人だが、犠牲者はもっと多いという説もある、116人であるとか、217人に及ぶという説も報じられている。

 鎮火したあとの焼けあとの建物で、黒こげになった遺体の数を数えるのは憂鬱な作業には違いないが、それでもこれほど大幅に数え間違えるとは考えにくい。ウクライナの官憲が、数を数えられないほど無能だと考えるより、この虐殺がそもそも「水晶の夜」と同様の官製暴動であるため、ボディーカウントも事件の解明もおざなりにされているのだと考えてみると辻褄があう。

「ファシズムの目に余る顕示」

 こうした状況を正確に把握しているのは、ウクライナ暫定政府ではなく、むしろロシア政府かもしれない。ロシアのラブロフ外相は、5月6日に行われた欧州評議会でこう述べた。

 「5月2日、オデッサの街の労働組合会館で、女性を含む無防備の人々が生きながらにして焼かれた。窓から飛び降りて逃げた人々は銃撃された。彼らは死体に向かってあざ笑った。彼らは多くの犠牲者が出たことに喜んだ。彼らは、ロシア人に対して勝ったことを隠さなかった。我々は、ファシズムの目に余る顕示を目の当たりにしている」

 ロシア外務省はオデッサの事件について、次の声明を出した。

 「入手した情報によると38人が死亡し50人が負傷した、5月2日にオデッサで起こった悲劇的な出来事について、我々は、キエフ政府の犯罪的とも言える責任の欠如の証明となったと捉えている。

 キエフ政府は、右派セクターを含む過激派ナショナリストを黙認している。過激派ナショナリストは、ウクライナ・コミュニティのなかで連邦制と真の憲法改正を支援する人々に対して、厚かましくも物理的な恐怖のキャンペーンを行っている。我々は、これを断固として非難する」

  • ロシア外務省のウェブサイトより 2014/5/2「オデッサでの悲劇的事件についてのロシア外務省の声明」(当該ページ削除)

右派セクターはウクライナの警察の代行か

 労働組合会館の放火事件の直後に、警察は放火を行った右派セクターの面々を逮捕するのではなく、逆に、現場にいた親ロシア派の住民を逮捕した。これもまた「水晶の夜」を想い起こさせるエピソードだ。「水晶の夜」のあと、ナチス・ドイツ政権が逮捕したのは、被害者であるユダヤ人たちの方だった。まったく同じことをウクライナの警察は行っている。

(…会員ページにつづく)

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  1. @HSarabandeさん(ツイッターのご意見より) より:

    この辺の事は、決して報道されることがない

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    集団的自衛権成立を急ぐ理由の一つかもしれない・・・

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