【IWJウィークリー47号 GW特大号】オバマ大統領来日/尖閣問題/鹿児島2区補選/4月12日からの2週間分のIWJの取材を一挙お届け!(ePub版・PDF版を発行しました) 2014.4.29

記事公開日:2014.4.29 テキスト独自
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 岩上安身とIWJ記者が走り回って取材し、独自にまとめた渾身レポートをお届けする「IWJウィークリー」!今号は、GW特大号として、4月12日からの2週間分のIWJの取材を一挙お届けします!

47号簡易もくじ

  1. STFダイジェスト
  2. 詳細もくじ
  3. 岩上安身のニュースのトリセツ!
  4. ニュースSTF(4/12~4/25)
  5. 【特別寄稿・築地移転問題】「大根2本」のゆくえ!? ―豊洲新市場、物流計画の「崩壊」― (中澤誠 東京中央市場労働組合書記長)
  6. ご献本ありがとうございます!のコーナー
  7. IWJからのお知らせ
  8. デスク後記

1.IWJウィークリー第47号STFダイジェスト 4月12日(土)~4月25日(金)

★忙しい方も、ここだけ読めば一週間のIWJの動きがわかる!★

台湾に生きる政治学者・呉叡人氏インタビュー

 台湾に現地入りした岩上安身と原佑介記者は、4月11日から、立法院占拠の背景など、台湾の政治に詳しい有識者に連続インタビューを行いました。

 4月11日の現地時間11時には、台北市内において、政治学者の呉叡人氏に岩上安身がインタビューを行いました。呉氏は台湾中央研究院で台湾史研究所副研究員であるほか、日本で教鞭を取った経験もお持ちです。

 呉氏は、台湾は一国家として現にある一方、「国連による『国家免許制度』のシステムによって、台湾は国として承認されなくなった」と話します。そして、「このシステムには『台湾は中国の一部』と主張する中国がいる」と述べました。さらに、中国に睨みをきかせようとする米国が、台湾を自分たちの「駒」とみなしてきた歴史について語ります。

 大陸から逃れてきた台湾人について呉氏は、「自分たちが中国大陸側の人にいじめられながら、同時に自分たちも原住民(※台湾では先住民族を『原住民』と表現しています)をいじめた、という認識を持っている」と話し、「被害者は加害者としての重層構造も持つのだと台湾人は認識している。台湾のそういうところを理解してほしい」と訴えます。

 今回の立法院占拠運動が学生どうしの対立へと発展することなく、平和的に収束したことについては、60年代~70年代にかけての日本の学生運動のように「教条主義的」な運動に陥らない今日の学生運動の柔軟さを指摘し、「今は、『ポスト・イデオロギー』の時代」と述べました。

 呉氏は、「民主主義とは、一発で定着するものではない。永遠に闘争しなければならないものだ」と語り、敗戦により米国から民主主義を与えられた歴史を持つ日本に対しては、「それを本当に自分たちのものにするには、自らの手で闘うしかない」との言葉を投げかけました。

海を舞台に人を描く民族運動家シャマン・ラポガン氏インタビュー

 同日4月11日には、台北市内にて、作家のシャマン・ラポガン氏に、岩上安身がインタビューを行ないました。シャマン氏は、台湾の先住民族のひとつであるタオ族で、漁民作家として活躍中です。

 反核運動に携わっているシャマン氏は、「問題は、第三世界の中で起こる。つまり、大国の勢力争いで問題が起こり、被害はマイノリティが蒙る」と指摘しました。シャマン氏は、自分のことは「反核運動者」ではなく「生態環境保護者」だと言い、「生態環境を守る方が価値がある」と主張します。そして、グローバリゼーションについては、「白人の価値観」と批判しました。

 このインタビューの通訳を行ってくれた私立慈濟佛教大學東方語文學系助理教授の李文茹氏は、「シャマン氏は(自分の)国と言う言葉は、ひと言も発しない。国という概念がないことは、これから大きな抵抗の力になるのではないか」と語りました。

国家戦略特区構想がもたらすダメージ

 3月28日、国家戦略特区諮問会議が開かれ、東京や大阪など6つの地域が国家戦略特区と指定されることが決定しました。国家戦略特区構想によって、私たちの暮らしはどう変わるのでしょうか。

 4月13日に、この国家戦略特区構想の危険性を読み解く「危ない! 国家戦略特区~雇用・医療・暮らしはどう変わるのか」と題するシンポジウムが行われました。

 このシンポジウムの中で、前大田区議の奈須りえ氏は、大阪市で始まろうとしているこの水道事業民営化について、「水道というライフラインを民間事業者に売ろうとしている」と警鐘を鳴らしました。また、国家戦略特区に指定された兵庫県・養父市について、最低賃金以下の高齢者雇用制度を利用しようとしているのではないかと指摘しました。

 立教大学の郭洋春教授は、国家戦略特区とTPPは関連していると述べ、「米国も国家戦略特区を支持している。TPPをする際に、非常に特殊な地域で、さらに多くの利益を得ることができる」と指摘しました。また、2年前に発効された米韓FTA下の韓国の事例を説明しながら、関税の引き下げが必ずしも価格に反映されるとは限らないと指摘しました。

袴田巌氏、ピースサインで公の場に

 3月27日に再審決定を受けて釈放された袴田巌氏が、4月14日にはじめて公の場に姿を見せました。落ち着いた表情で登場した袴田氏は、「この野蛮な問題を一掃して世界は完全平和。どうぞよろしくお願いします」と語りました。

 4月4日に岩上安身の単独インタビューに応じた袴田事件弁護団事務局長の西嶋勝彦弁護士は、「袴田氏の無実と権力の不正を認め、司法に正義を取り戻した静岡地裁の3人の裁判官に敬意を表したい」と述べるとともに、冤罪根絶への取り組みが必要であると訴えました。さらに、「死刑の廃止を真剣に考える時期にきているのではないか」と、死刑制度に対する疑問を呈しました。

安倍政権の掲げる「積極的平和主義」とは

 安倍政権は、外交・防衛政策の基本理念として「積極的平和主義」を掲げています。この「積極的平和主義」の正体とはいかなるものなのでしょうか。

 安倍総理の「お友達」であり、NHK経営委員を務める長谷川三千子・埼玉大学名誉教授が、4月15日、日本外国特派員協会で会見を行い、「積極的平和主義」について講演を行いました。

 長谷川氏は、非暴力の「受身的平和主義」は「ひとたび戦争が起これば役に立たない」とし、戦場では「積極的平和主義」「平和への積極的な貢献」が必要になると主張しました。長谷川氏は、「積極的平和主義は、戦争に近づくという危険が常に伴う」ことを認め、平和維持のために物理的な軍隊が必要であると語り、つまるところ、戦争や軍隊による武力行使に訴える方法が「積極的平和主義」のであることを明らかにしました。

 そして、長谷川氏は、日本国憲法の前文の「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」という一節を「平和維持のために行動を起こすと宣言している」という、驚くべき独自の解釈を披露し、従って現行憲法は、実は「積極的平和主義」を表明しているのだと曲芸的な論理を展開してみせました。言うまでもなく、長谷川説は詭弁に過ぎません。こんな曲解が許されるなら、憲法に限らず法文は好き勝手に読みかえが可能になり、法治国家は成り立たなくなります。

 最初から最後まで英語で話した長谷川氏の、この珍妙な詭弁は、日本国内ではほとんど報じられず、中身を知らされず、他方で海外に向けては呆れられながら伝わってゆくという、赤面ものの展開となっています。

 IWJでは、この恥ずかしい内容を可能な限り、翻訳してお伝えしています。

鹿児島2区補選、過去最低の投票率で自民党・新人の金子氏が勝利

 安倍政権の暴走にストップをかけられるでしょうか――。

 鹿児島2区の衆院補欠選挙が27日に投開票され、自民党の新人・金子万寿夫氏が初当選しました。66,360票を獲得して当選を果たした金子氏ですが、投票率は同区で過去最低の45・99%の結果となりました。

 選挙結果を受けて、安倍総理や自民党・石破幹事長は「評価された」とのコメントをしていますが、最低の投票率での当選という結果に、国民からの「信任」が得られてはいないとする声も上がっています。

 IWJは投開票前から鹿児島で取材を敢行。山本太郎参院議員の立ち上げた「新党ひとりひとり」から出馬した有川美子(ありかわよしこ)候補と、民主党、日本維新の会、結いの党、生活の党の野党4党から推薦を受けて、無所属で出馬した前衆議院議員の打越明司(うちこしあかし)候補に単独インタビューを行いました。また、同選挙を追うブロガーの座間宮ガレイ氏にもインタビューを行っています。

 インタビュー詳細は、以下のURLをぜひ、ご覧ください!

 投開票日当日、IWJは有川候補の選挙事務所に密着。金子氏の当確が出た後に記者会見した新党ひとりひとりの代表・山本太郎参議院議員は、「(NHKの)出口調査で、原発再稼働に反対した市民は60%を超えていた。得票数の9割が金子氏、打越氏に流れ、矛盾した結果になっている」と指摘しました。

 一方で、「原発再稼働やTPP、集団的自衛権、弱者切り捨てという本当の争点に関して、たくさんの人々の共感を得られなかったことが、票の広がりを持てなかった部分かと思う」と総括しました。

 「消費税、TPP、すべての問題に関して、労働者を商品として扱って、規制緩和をしてこの国の雇用を守れないような政策を推し進めているような安倍政権を、信任するのは無理」だと山本氏は協調し、今後も安倍政権に徹底抗戦する構えを改めて示しました。

 山本氏が新党を立ち上げた理由や、原発・TPP・消費税増税・集団的自衛権の問題などについては、23日の岩上安身によるインタビューで詳しく語られています。こちらもぜひ、あわせてご覧ください!

日米首脳会談で見えたアメリカの本音とは? 軍事ジャーナリスト・田岡俊次氏インタビュー

 日米首脳会談の話題を中心に、4月25日、外交・安全保障を専門とする軍事ジャーナリストの田岡俊次氏に、岩上安身がインタビューを行いました。

 日米首脳会談終了後、大手新聞各社はこぞって「尖閣に安保適用」と、今回の成果を報じました。しかし、アメリカが尖閣諸島について日米安保が適用されると明言したのは初めてのことではありません。つまり、オバマ大統領の発言は、これまでのアメリカの態度を変更するものではないのです。

 この点について田岡氏は「米国は二枚舌を使っている」と指摘。尖閣諸島に日米安保が適応されると話す一方で、中国との不対立の関係を望むクギを刺すアメリカの姿勢について「日本と中国、両方にいい顔をするという米国の戦略がすけて見える」と分析しました。

 オバマ大統領が日本を離れる直前に発表された日米共同声明には「米国は、集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っていることを歓迎し、支持する」との文言が盛り込まれました。これに関して田岡氏は「集団的自衛権で何を達成しようとしているのか、まったく分からない」とした上で、「安全保障で重要なのは、軍事力を増強するのではなく、敵を減らすこと。米中が接近し、米国は中国と和解しろと言っているのだから、和解すればいいだけの話だ」と、アメリカの後ろ盾によって中国を牽制するのではなく、単純に日中関係を修復する方向が望ましいとの考えを示しました。

 インタビュー中、田岡氏は繰り返し「(中国は)日米双方の仮想敵ではあり得ない」ことを強調。その根拠として、中国大陸との統一を目指す台湾の馬英九政権に対して、アメリカが好意的であることを挙げ、中国を仮想敵と設定したうえでの日米同盟の強化を主張する安倍政権を批判しました。

漂流するTPP交渉 ~米国への譲歩を迫られ続ける日本

 23日に来日したオバマ大統領は、寿司には半分しか手を付けず、安倍総理に対しひたすらTPP交渉における日本の譲歩を迫りました。25日に発表された日米共同声明には「包括的なTPPを達成するために必要な大胆な措置を取る」などと明記され、読売新聞などは「実質合意」などと報じました。

 しかし、交渉担当者である甘利明大臣はこれを否定。合意には至っておらず、交渉は今後も続くことを明らかにしました。

 漂流し始めたTPP。21日に来日した米国NGOパブリック・シチズンのロリ・ワラック氏とニュージーランド・オークランド大学教授ジェーン・ケルシー氏は、「そもそもオバマ大統領と今の米国政府にTPP交渉の権限はない」と指摘しました。

 「オバマ大統領が安倍総理に何かの約束をしたとしても、それは法的な意味を持つものではありません。約束が法的な意味を持つためには、別途、議会による承認が必要です」。

 ワラック氏が指摘するこの事実は、あまり報じられることはありません。そして、だからこそ米国政府は、議会を納得させるためにもTPPで日本が大幅譲歩することを強く求めているのです。

 「TPP交渉での米国の対日圧力は、安倍総理が米国の要求をすべてのむまで弱まらない」。

 ケルシー教授はこう警鐘を鳴らします。日本政府は、これまでにない米国政府の圧力にさらされています。我々国民が出来ることは、安易な譲歩を行わないよう、政府に対し交渉内容の情報開示を求め、その動向を監視することではないでしょうか。

(…サポート会員ページにつづく)

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