2024年1月31日、午前11時より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、国際環境NGO FoE Japan(https://foejapan.org/)の主催により、能登半島地震を踏まえた要請提出集会「原発動かさないで」が開催された。
集会には、石川県、新潟県、宮城県、福井県、佐賀県、鹿児島県など、原発周辺に暮らす市民の方々が会場・オンラインにて参加し、原子力規制庁、および内閣府原子力防災から出席した担当官へ「これ以上原発を動かすべきではない」旨の要請書を手渡し、その後、事前に提出した質問をもとに意見交換が行われた。
要請書の提出に先立ち、FoE Japan事務局長の満田夏花氏より、要請書の趣旨についての説明があった。
満田氏「ご存じのとおり、1月1日の能登半島地震は今もなお、多くの人たちが被災されており、大変な状況になっています。それと同時に、この地震が、やはり、原発の安全性、とりわけ、原子力防災に大きな疑問を投げかけていると、私たちは考えております。
この要請書にも書いてあるとおり、例えば、屋内退避ということが現実に可能か、あるいは、UPZ(Urgent Protective Action Planning Zone: 概ね半径30km県内)の皆さんは、一体、屋内退避をして、かなり線量が上がってきたあとに避難指示が出て、それから避難ということになり、途中で、安定ヨウ素剤を拠点で配布するみたいなことになっていると思います。
しかし、それが本当に現実的なのかということを考えると、屋内退避もできない、そして、道路も寸断されている、そして、自治体の職員もですね、災害、地震・津波で手一杯というような状況だということは目に見えていると思います。
私たちとしては、この『原子力防災計画』、そして、その土台となっている『原子力災害対策指針』は、住民を守る最後の砦(とりで)であるというふうに考えています。そして、これが、現実的に可能ではないことを踏まえれば、もうこれ以上、原発は動かすべきではないというふうに考えています。
そういった趣旨の要請書を本日、提出させていただきます。この要請書は、全国各地、北は北海道、南は沖縄までの163団体が連名をしており、また、個人の賛同者として、1373人の方が賛同しています」。
要請書の手交にあたり、石川県の「北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会」の中垣たか子氏、そして、島根県の「中国地方反原発反火電等住民運動市民運動連絡会議代表幹事」の芦原康江氏から次のような発言があった。
中垣氏「実際に、金沢でも、体験したことのないような激しい揺れを体験しました。そして、最初は、金沢市直下の活断層が動いたのかと思わされるほどの激しい揺れに驚かされたのですが、その後、震源が能登だということがわかり、原発がどうなってるのかということが大変心配でした。
その後も、北陸電力の情報開示のあり方とかいろいろ問題があって、なかなか、自治体がきちんとわかっていないということもあり、いまだに非常に不安を抱えて暮らしているという感じです」。
芦原氏「私自身も原発から約11kmの場所で暮らしております。住んでる家も老朽化した木造家屋です。今回の能登半島地震での被災状況を見て、もし島根で同じような地震と事故が起これば、私も倒壊した家屋の下敷きになっているかもしれない、ということを直感的に、強く感じました。
もう、避難計画は実行性がないということが、今回の地震で改めて確認されたと思いますので、もうこれ以上、本当に、原発の再稼働はやめていただきたいと思います」。
オンライン参加の石川県珠洲市在住の北野進氏(志賀原発を廃炉に!訴訟原告団長)からも、省庁側に対して発言があった。
北野氏「今回の地震では、珠洲市内はほぼ壊滅状態になりました。市内各地、とても現実のものとは思えないほどの悲惨な光景が広がっています。災害対応で連日奮闘する市長や副市長も被災者です。職員の大半も被災者です。
市役所に寝泊まりしながら、住民のために懸命に業務に取り組む職員もいます。それでも、まったく人手が足りない中、被災者の救出に始まり、被災者の生活支援や孤立集落への対応、インフラの復旧など、多くの業務で、全国各地から、自治体職員や消防関係者、災害ボランティアの皆さん、各業界の皆さん、自衛隊の皆さんには、連日連夜の懸命の作業を続けていただいています。
もしここに、原発事故が重なっていたら、どうなったでしょうか? 珠洲市にはかつて原発の計画がありました。住民の反対で計画は阻止しましたが、もしここに、珠洲原発の事故が重なり、放射能が拡散していたら、今全国から救援に駆けつけていただいている皆さんは、誰も来ることができないわけです。
道路はズタズタ、海や空からの避難もできません。奥能登全域が孤立状態の中、住民は放射能汚染に曝され続けます。ある意味、福島原発事故以上に悲惨な事態になったと、私は思います(後略)」。
質問書にもとづいた省庁側との意見交換では、原子力規制庁から、「自然災害と原子力災害については、命を守るために自然災害が優先される。その上での原子力防災である」旨の見解が表明され、この「被曝前提。被曝をしろ」とも聞こえる見解に会場の参加者がざわめく一幕もあった。
要請書、ならびに省庁側への質問書の内容については以下のURLで確認ください。
・要請書:https://foejapan.org/wpcms/wp-content/uploads/240131_petition.pdf
・質問書:https://foejapan.org/wpcms/wp-content/uploads/240131_questionnaire.pdf
また、参加者側との意見交換などの詳細については、全編動画をご確認ください。