2020年7月16日、東京千代田区の参議院議員会館で、福島原発行動隊主催による 院内集会 「ALPS処理水問題“漁業の現場”から訴える」が開催された。
講演した柳内孝之・福島県漁業協同組合連合会理事は「平成23年(2011年)から平成25年(2013年)頃は国の放射能基準値を超える検体は数百種類(水揚げが)上がっていたが、直近の令和2年(2020年)3月では、放射性セシウムは99%が不検出となっており、出荷制限のかかっている魚種はない」「我々は3月に漁業組合長会談を行い、今後は全て出荷しようという事になった」と述べた。
魚の買い請人の立場について、柳内氏は「理想は、風評被害がなくなり先行きが見通せる状況になれば、設備投資も従業員の増員も考えられるが、これからALPS処理水が海洋放出されれば風評被害がおこり、設備投資をして売り上げが回復しなければ負債が残りかねない、最悪つぶれる可能性があると考える人が多い」と述べた。
処理水について柳内氏は「東電の公表によると、現在およそ1,100トンの処理水があり、全体の7割が他の核種も含んで基準値を超えている。東電は安全に処理すると言っているが、本当に処理できるのか疑問視している人が多い」と話した。
また、経済産業省のALPS小委員会終了後にまとめられた報告書について「報告書によれば、毎年22兆ベクレルのトリチウム水を33年かけて放出するという事だが、本来は海を浄化すべきところを、事故前より汚染が悪化すると見られることになる」と述べ、「風評被害は避けられない」と強調した。
さらに「報告書は、風評被害が起きた場合の保障には触れていない。海洋放出ありきで、福島の復興が後退する」「処理水が本当に安全なら、他の場所でも処分は可能なのではないか」と述べた。
東電もALPS小委員会も、地元漁民にまったく信頼されていない状況が、浮き彫りとなった。