2020年10月29日、東京千代田区内幸町の東京電力臨時会見場で、福島第一原子力発電所「中長期ロードマップの進捗状況」に関する記者会見が行われた。
当初10月27にも関係閣僚会議で国が処理済汚染水(ALPS処理水)の海洋放出について方針を出すとみられていたが、関係閣僚会議は開催が見送られた。
会見では、この汚染水の海洋放出について質問が集中した。
東京電力は、処理済汚染水の貯留ペースを1日当たり150立方メートルと見込んで、2020年夏には貯留タンクが満杯になるとしている。この点について、「直近の実績は一日約140立方メートルだ。このように、見込みと実績に乖離がある場合、満杯時期の見直しは行わないのか?」との質問に、東電の小野昭・福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントは「我々が責任をもって評価できる値は、今の時点で一日150立方メートルだ」と述べ、計画を変更する意向はないことを明らかにした。
また、この記者が重ねて「10月23日時点の貯留量はおよそ123万4千トンで、このままの行くと今年は計画の126万トンに達しない。例えば来年1月1日時点の実績をもとに、見直しをするというのはどうか?」と問いかけたのに対して、小野氏は「今の数字で安易に2年後の数字を引くというのは難しい」と述べ、計画変更の意思がないことを重ねて表明した。
東京電力は、3月24日に処理済汚染水の処分方法と風評被害対策についての考えをまとめた「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書を受けた当社の検討素案について」を発表した。
- 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 報告書を受けた当社の検討素案について(東京電力ホールディングス株式会社、2020年3月24日)
東電はその中で、「今後の風評被害対策(方針)」として「(東電が行う)風評払拭の取り組みを重ねても、なお風評被害が発生する場合には適切に賠償をする」としていた。
これについて「新たな賠償をすると考えてよいか?」との質問に対し、小野氏は「政府の方針が出されていないので、我々としては決めたわけではない」と答えた。
重ねてこの記者が「賠償しないこともあり得るのか?」「検討素案から後退しているのではないか?」「(素案の文言から)汚染水の処分にともなう風評被害に対しては東電が賠償すると受け止めているが、それで良いか?」と追及すると、小野氏は「政府と相談して考えていかなければならない」と答えた。
東電の素案が全くの空証文であることを自ら示すこととなった。