2020年10月31日(土)午後2時から、東京都渋谷区の渋谷区立勤労福祉会館にて、「原発とめよう!東京ネットワーク」の主催により、「反原子力の日行動」が開催された。
まず、FoE Japan事務局長・理事の満田夏花(かんな)氏と原子力資料情報室・共同代表の西尾漠(ばく)氏による講義があり、その後、渋谷勤労福祉会館から宮下公園までデモ行進が行われた。
満田夏花氏の講義では、10月中にも政府が海洋放出をするのではないかと懸念されていた福島第一原発の「処理済み汚染水」について、パワポを使い、詳細な説明が行われた。
汚染水の海洋放出のニュースが流れる前日の10月15日、経産大臣と環境大臣、そして復興大臣に対し、全漁連が海洋放出断固反対の要請書を提出した。そして、その翌日、10月16日に政府は「汚染水を海洋放出することを決定した」と発表した。
満田氏は「反対の要請書を受け取った翌日の発表だったので非常にショックを受けた」とし、次のように語った。
「『海洋放出』についてのパブコメ総数は4011件で、その一割が公開されたが、その7割が反対だった。
政府は農林水産関係団体との調整を行ったが、結局、決定は来月以降に延期された。私自身は、政府側が情報をリークして、わざと報道させて、様子を見て、あまりに反発の声が強かったので決定できなかったのではないかと思っているが、よくわからない」
満田氏は、処理汚染水について、以下のように語った。
「政府は汚染水を減らす努力はしているものの、現在、処理水は約120万㎥に達しており、その中には約860兆ベクレルのトリチウムが含有されている。どのくらいの規模かと言うと、2010年実績の福島第一原発では一年に2.2兆ベクレルの処理汚染水が海洋放出されている。決して小さい規模ではないことがわかる。
トリチウムの他にも、セシウム137・134、ストロンチウム90などの放射性物質が残留しており、7割以上の水でそれぞれが基準値を超えている。(中略)
こうした中、国民からの意見については、経産省が選んだ『関係者』からのみの聴取は行われているが、議論の場はなく、一般市民からの聴取は書面のみで行われている。また、現在、汚染水の放射性物質の総量は示されていない。また、代替案も検討されていない。
10月23日、FoE Japanは、汚染水の海洋放出に反対する声明を出し、『放射性物質は集中管理すべき』であり、意思決定の前には、『放射性物質の総量を示し、海洋放出で見込まれるリスクや代替案について、開かれた議論の場で十分検討する』ことを要求した」
続いて、西尾漠氏より、10月9日、北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村でそれぞれ実施することが正式に決定された「高レベル放射性廃棄物の地層処分地の選定」第一段階である「文献調査」について、その現状の報告が行われた。
西尾氏は「残念ながら、この調査を事前に止めることはできない」とし、次のように見通しを語った。
「もちろん、調査に入ったあとで、町や村が『やっぱり取り下げます』というのができないわけではない。寿都町では、町民の方々が『住民投票』の直接請求をしており、11月には議会で諮られることになるが、残念ながら議会の構成を考えると、通るとも思われない。
『文献調査』では、あらためて調査することはほとんどなく、現地で調査をするわけでもない。現地には、現地の事務所を作って、『地元工作』をおおぴっらにできるのが『文献調査』であると考える。
『文献調査』期間中は最大で20億円の交付金が出る。これは、プロセスが『文献調査』の先へ進まない場合も支給されるようだが、これは国税の無駄遣いと言われても否定できないだろう。
また、調査対象となっている2町村ともに、行政区域の地下に処分場として十分な敷地を確保できる見通しがほとんどない。一体、どういった基準で、この2町村を『文献調査』にふさわしいと判断したのかについて、政府・経産省はきちんと説明を行うべきである」
西尾氏の講義終了後、二人の講師と参加者の間での質疑応答となり、活発な意見の交換が行われたが、その模様は本編動画をご視聴いただきたい。
質疑応答後、参加者による街頭デモとなったが、当日がハロウィーンの日でもあったため、飛び入り参加などによるデモの巨大化を警戒した警察から、もともとのデモコースの一部を削って短縮化しろとの指示があったようで、「渋谷勤労福祉会館スタート、宮下公園解散」という非常に短いコンパクトなデモとなった。