環境省は法的根拠もなく、福島第一原発事故の「除染土再利用実証実験」を強行しようとしている!~1.24「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」発足集会―登壇:満田夏花氏(国際環境NGO FoE Japan事務局長)ほか 2023.1.24

記事公開日:2023.3.5取材地: テキスト動画
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(取材、文・IWJ編集部)

 2023年1月24日(火)午後7時から、四谷地域センターにて、「新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会」の発足集会が開かれた。

 2011年3月11日に起きた東京電力福島第一原発事故で、放射性物質が環境中に放出された。放射性物質を含んだ除染土は回収され、福島県内にある「中間貯蔵施設」を仮置場(2045年度まで)として、現在、保管されている。

 環境省は、それら除染土を、東京都の新宿御苑、埼玉県所沢市の環境調査研修所、茨城県つくば市の国立環境研究所へ、「除染土再利用実証実験」のためとして、運び込む計画である。

 除染土を「再利用」する根拠は、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」、通称:放射性物質汚染対処特措法(以下、特措法)である。

 同法の基本方針で、「5.除去土壌の収集、運搬、保管及び処分に関する基本的事項」に、「また、仮置き場の確保等の観点から、除去土壌について、技術の進展を踏まえつつ、保管又は処分の際に可能な限り、減容化を図るとともに、減容化の結果分離されたもの等汚染の程度が低い除去土壌について、安全性を確保しつつ、再生利用等を検討する必要がある」との記述がある。

 しかし、これは閣議決定による基本方針であり、「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」国会で定められた法律ではない。

 特措法は、「除去土壌の処理の基準等」における第41条で、「除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行うものは、環境省令で定める基準に従い、当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行わなければならない」と定めている。これら条文に「再利用」という文言はない。

 仮に「再利用」するならば、その為に定められた「クリアランス制度」がある。資源エネルギー庁は、「クリアランス制度」について、以下のように説明している。

 「『クリアランスレベル』とは、放射能レベルがきわめて低く、人の健康に対する影響を無視できるレベル(年間0.01ミリシーベルト)であるものを指します。そのレベルは、自然界の放射線から受ける放射線量(日本平均で年間約2.1ミリシーベルト)の100分の1以下に相当します」、「クリアランスレベル以下の廃棄物のうち、原子力規制委員会による確認を受けたものについては、”放射性廃棄物として扱う必要のないもの”、つまり産業廃棄物として、再利用または処分できる制度が設けられています。それが、『クリアランス制度』です。この制度は、2005年の『原子炉等規制法改正』によってさだめられました」。

 しかし、環境省は、「再利用する」ための原子炉等規制法で定められたクリアランス基準の「100ベクレル」を確認しておきながら、その80倍に値を引き上げた「8000ベクレル」を、「処理する」ための基準として、持ち出しているのである。

 これは「再利用」のための基準ではなく、「処理」のための基準である。環境省は、以下のように説明している。

 「1.原子炉等規制法に基づくクリアランス基準※(100Bq/kg)について 
廃棄物を安全に再利用できる基準です。運転を終了した原子力発電所の解体等により発生するコンクリート、金属を想定し、原子力発電所や一般社会での再利用を推進するために定めた基準です。廃棄物を再生利用した製品が、日常生活を営む場所などの一般社会で、様々な方法(例えばコンクリートを建築資材、金属をベンチなどに再生利用)で使われても安全な基準として、放射性セシウムについて100Bq/kg以下と定められています」

 環境省は、「再利用」の法的根拠がなく、原子力規制委員会が確認し、「再利用」できる基準を定めたクリアランスレベルも守らず、「除染土再利用実証実験」を強行しようとしている。

 1月24日の集会に登壇した、国際環境NGO、FoE Japan事務局長の満田夏花(みつたかんな)氏は、次のように指摘した。

 「原発事故前は、環境中に放射性物質が拡散することは想定されていませんでした。原子炉等規制法とかが律していたんです。つまり、環境中の放射性物質については、いまだにきちんとした、それを律するための法律がない状況が続いているんです。

 それが、今のような状況を引き起こしているという風に考えられ、本来であれば(大気汚染防止法や水質汚濁防止法、土壌汚染対策法等のような)放射性物質汚染防止法とか、そういうものが必要だということだと思います」

 集会呼びかけ人の平井玄氏は、「新宿という街は、いろんな人が集まる街なので、いわば関東圏の交差点のような所ですね。ですから、運動の作り方もいろいろ工夫して、皆さんとやっていきたいと思います。演劇人も音楽家も、物書きの方もいろんな方、映画人もたくさんいますから、その人たちと協力してやっていけたらなと思います」と、述べた。

 そのほか、「さよなら原発in所沢連絡会」の村上三郎氏、ZOOM形式による参加で、「NPO法人福島県有機農業ネットワーク」の菅野正寿氏、集会にアピール文を届けた「原発いらない福島女たちの会」の黒田節子氏、「原子力資料情報室」共同代表の伴英幸氏、竹林舎(NPO法人市民放射能監視センター)、「さようなら原発1000万人アクション事務局」の方々から、汚染土再利用への反対と、集会への連帯のメッセージが訴えられた。

 詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2023年1月24日(火)19:00~
  • 場所 四谷地域センター 12階 多目的ホール(東京都新宿区)
  • 詳細 発足集会告知 (pdf)
  • 主催 新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会

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