ウクライナ紛争が継続する中、「イスラエル・ハマス戦争」が勃発! 台湾有事、日本への影響は? 岩上安身によるインタビュー第1139回ゲスト 安全保障と国際関係論の専門家・桃山学院大学法学部・松村昌廣教授 第3弾 2023.11.7

記事公開日:2023.12.29取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
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 2023年11月7日、岩上安身は、安全保障と国際関係論の専門家である桃山学院大学法学部教授の松村昌廣氏に、3回目となるZoomによるインタビューを行った。

 これまで、第1回と第2回のインタビューでは、松村教授に主としてウクライナ紛争についてお話をうかがってきた。

 「ハマス殲滅」を掲げたイスラエルによる侵攻により、ガザではすでに2万1000人以上のパレスチナ人民間人の犠牲者(その7割が女性と子供)が出ている。

 今回の第3回のインタビューでは、現在のガザの状況について、ウクライナ紛争と比較しながら、松村教授にお話をうかがった。

 インタビュー冒頭、松村教授は、次のように語った。

 「今の状況っていうのは、まず非常に単純な現象が起こってるというふうに思っています。要するにそれ(『ハマス・イスラエル戦争』)は、ある種、ウクライナの情勢と非常に表面的には似てるんです。

 早い話が、弱い者(ハマス)と強い者(イスラエル)がいると。で、弱い者が強い者に対して挑発して仕掛けて、その後、そのままだったら負けるんですよ。でも、それは、あとはプロパガンダ戦で何とかしようと。ひょっとしたらひっくり返そうと。

 歴史的にはそういう例もたくさんあるのですが。そういう目で見ると、まずわかりやすいと思うんですね」。

 松村教授は、弱いハマスが強いイスラエルに挑発を仕掛けてはだめだが、今回、ハマスは、「他国や国際世論を巻き込んで、何とかしようと」しており、「今のところ、割とそれは、完全ではないけど、うまくいってる」と述べた。松村教授は、その理由を「血を流してるから」だと指摘し、「それが(現在起きていることの)全体像で、それ以上でもそれ以外でもない」との見解を示した。

 また、松村教授は、現在の中東情勢について「米国によるイラク占領政策の失敗」によって、米国は中東地域での覇権を失い、それによって米国と一体になって中東での覇権を狙っていたイスラエルも、安全保障上の危機に陥っていると、以下のように語った。

 「ご存じのように、実際にイラク戦争になったあと、最初のやつ(1990年の湾岸戦争のこと)ですね、要するにブッシュパパは最後まで、バグダッドまで攻め入らなかったんです。攻め入ったら、あとの始末が大変である。要するにバランスが崩れて中東が混乱して、その中でアメリカはかえって不利益を被ると。戦略的な不利益を被るということだったんですね。

 で、その背景には何があったか。これはイギリスも同じようなことをやって、彼らの経験による英知をちゃんと伝えてると思いますけども、アメリカのそれまでの政策っていうのは、いわゆるダブル・コンテインメント(※注)、二重の封じ込めと言われていた。

 要するにイラクとイランとを、ハブとマングースみたいに咬みあわさせてね、これで互いに消耗させて、それで中東全体の秩序を守ろうとした。で、これをこのまま続ければいいと」。

(※注)ダブル・コンテインメント(double containment)とは、デュアル・コンテインメントとも呼ばれる。
 イランとイラクの力を、両方とも封じ込めることを目的にした、1990年代の米国の公式の外交戦略のことを指す。米国は、イランとイラクに対して、経済制裁を課すと同時に、この2ヶ国を対立させ、互いに消耗させた。
 米国の政策立案者たちは、イランも、イラクも、米国の意向に従って自らを作り変えなければならない、さもなければ、そうなるまで米国は制裁を続けるだけだという、奴隷国家になれと命令するにも等しいことを突きつけた。
 このあまりにも悪辣で残酷なダブル・コンテインメント政策の結果、米国はイスラム教の2大「聖地」があるサウジアラビアに、大量の軍隊を駐留させることにも成功した。
 サウジアラビアは、イスラム教徒にとって、メッカとメジナという「聖地」を抱える国であり、中東地域の多くのイスラム教徒を怒らせた。

 サウジアラビアの南隣のイエメン出身のオサマ・ビンラディンが、米国の政策に対する憎悪の理由のひとつとして、また9.11同時多発テロの動機のひとつとして、この米軍の駐留をあげていることは、よく知られている。

 「(中東の統治を)続けるためには、バグダッドに攻め込んでサダム・フセイン政権を潰してはいけないと。これはこれで置いとかなあかんという、これはブッシュパパの手下、彼を支えたブレーンの主流派(の考えた政策で)、これに(ユダヤ系米国人でネオコンの代表的リーダーの1人)ポール・ウォルフォウィッツ、ウォルフィは入ってないわけですけど、そういうことなんですね。だからそれはうまくいったんです。

 ところが、次のブッシュジュニアの方は、(イラクに対する戦争を)やっちゃったんですよ。ご存じのような経緯で、要するに緒戦、勝ったけど、結局、もうあと手が付けられなくなって、ケツまくって帰ったんですよ。

 その結果どうなったのかいうと、要するにサダム・フセイン政権を倒して、少しの間、非常に圧倒的な、いわゆるアメリカ一極構造が、中東で最もはっきり見れるような状況になったんですが。

 その結果どうなったのかっていうと、結局イスラエルはアメリカの力を使って、要するに自分が全部中東の覇権を握れるような形をつくろうとしたのだけど、結局それはひっくり返ったというか、かえってじり貧になってしまうんですよ。

 要するに、アメリカに頼れない。アメリカあってのイスラエルなのに、アメリカを暴走させて、その陰に隠れて虎の威を借りる狐のように動こうと思ってたのに、虎(アメリカ)がこけてしまったら、自分ら(イスラエル)の安全保障はどうしようもないわけですよね。

 こういう状況の中で、しかも周りのアラブの国には囲まれてるわけで。

 核兵器も持ってるし、近代戦っていうか、正規の軍隊、軍と軍との戦いには、イスラエルは勝てるんですけども、そうでない、要するに、歩兵中心の、ゲリラ中心の戦いになると、イスラエルは勝てないんですよ。負けるんですよ。

 だから、要するにもう、イラクの占領政策が失敗した時点で、長期的にはイスラエルの国家存亡の危機にあった」。

 この「歩兵中心の、ゲリラ中心の戦いになると、イスラエルは勝てない」という点について、松村教授は、イスラエル周辺の、シリアのヒズボラなど、「イランの声のかかった、シリアも含めて、そういう連中(武装勢力)が一斉に来たら、イスラエル(国防軍)としてはかなり苦しいことになる」と指摘した。

 詳しくは、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

※ハイライト動画は作成中です。

  • 日時 2023年11月7日(火)10:00~12:00
  • 場所 Zoom+IWJ事務所(東京都港区)

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